ユニークスキル『下拵え』
ノアを窘めるのは他の人に任せて。
そんな事より、私には大事な作業が待っているのだ!
そう、解体だ!
「みんなー、さっさとアイテムゲットして。時間がない!」
みんながアイテムを入手したのを確認して、私はさくっと包丁を取り出した。
今まではダガーでやっていたけど、調理人になったんだから、今度からは包丁でいけるよね。
サイズは大きいけれど、牛は牛だ。
「血抜き」
アリシュタの身体から、血液が球体になって浮き上がってきた。流石大型、大きな血の球だ。
【アリシュタの心血】を入手しますか? YES/NO
おお。アリシュタは血までアイテムなんだ。
「解体」
まずは頭を切り落とす。そして背骨に沿って包丁を滑らせていく。
「な、何をしているでござるか?!」
モスが裏返った声をあげた。
そう言えば、モスの前で解体したことなかったな。
「そっとしといてあげて。アオの趣味なの」
「……死体を切り刻むことがでござるか?」
いや、違うから!
リディスが苦笑気味に説明してくれているのを気にしながら、私は解体を進める。
血抜きも解体もレベルが上がって、とっても簡単にお肉が手に入るようになっていた。
小型のモンスターであれば、頭を切り落とすだけで解体が終了するくらいだ。
流石にアリシュタは、もう少し切り刻む必要がありそうだ。
サーロイン、ヒレ肉、テールにタンなどなど。おおお。ものすごく美味しそうな牛肉がたくさん手に入った。
「ノア、革いる?」
「勿論だ」
「おっけー」
ベロンと大きな牛革をゲットする。
「ごめんね、革の事を考えたらお腹から裂くべきだった」
「内臓見たくなかったんだろー」
「うん。しばらく見てないから躊躇っちゃった」
私は包丁を拭いて、解体を終えた。
久々の解体に達成感を覚えていると
ピコンッ
《スキル『解体』と『血抜き』がレベルMaxになりました。統合しますか? YES/NO》
というメッセージが流れた。
「わあ! なんかスキルが統合されるって!」
「新しいスキルが手に入るって事か?」
「統合っていうくらいだから、上位スキルでござろうな」
どうしよう。新しいスキルは欲しいけど、解体と血抜きが出来なくなるのは非常に困る。
「大丈夫じゃない? またレベル1からだろうけど、統合って事は前のスキルは残るでしょ」
「そうかなぁ」
「行け、問題ない」
シャモアめ。他人事だと思って。
うーん。
YES。
ピコンッ
《スキル『解体』と『血抜き』を統合して、ユニークスキル『下拵え』を獲得しました》
ユニークって事は、このスキルを持っているのは、後にも先にも私だけって事だ。
なんだかすごいスキルを手に入れちゃった。
スキルの説明欄を読む。
スキル『下拵え』 レベル1
血抜き、解体が出来る。
対象からとれる全ての素材が入手可能になる
全ての素材が入手可能なら、解体では諦めていたプチブーハムだって手に入る可能性があるってことだ。しかも『下拵え』なんて、いかにも調理師っぽい。
ふつふつと喜びが湧き上がってきて、私は両手を空に突き上げて叫んだ。
「世界一の料理人に、私はなる!」
「はいはい」
――――――――――
もうすぐ絶対時間が明けそうなので、広場の端に移動していると、
「それはそうと、俺今のでレベル上がったぞー」
と、ブランが両手を頭の後ろで組みながら、嬉しそうに報告してくれた。
「わ、おめでとう! そっか大型だから経験値も高いんだね」
考えてみたら、格上の相手と戦ったのも実に久しぶりだ。きっとたんまり経験値が入ったんだろう。
「で、ござるな。小生も上がったでござる」
「俺も」
マジで?!
慌てて私もステータス画面を確認する。
「わ! 私も上がってる」
レベルはついに19になっていた。
あと一つで進化だ!
「どうする? このまま連戦するか? 良い経験値稼ぎになる」
ノアがソワソワと提案してきた。
尤もらしいこと言っているけど、絶対に自分が戦いたいだけだ。
でもお肉が手に入るのは嬉しいし、早く進化もしたいけど、ブラン次第だな。
さっきのはトラウマになるくらい、大変だったと思うから。
「ブランに任せる」
ブランは少し顔を顰めた。
「アオは早く進化したいよな」
「私の事は気にしなくていいよ。ここまで来たら時間の問題だしね」
ブランは少し考えて、ノアをチラリと見た。
「牛肉って旨いのか?」
「美味しいよ。調味料がないからすぐにはレパートリーは増えないけど」
「よし、やろう」
ブランがグッと親指を立てた。
キランと光るゴーグル姿がカッコいいぞ!
かくして、私の進化まで連戦することが決まった。
今日はこの近くに拠点を作って、ポーションが足りなくなったらクラフトしつつやるらしい。
結構ハードだ。




