再会
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「ノア――――――!」
逞しい胸板、鋭い金の瞳、無造作な髪から覗く獣耳、鬱陶しげに私を抱える優しい腕。
ノアだ。
何もかもがノアだった。
「ノア、ノア、ノア―――!」
「いや、煩い」
「ノア――!」
「ノア殿!」
「ちょ、おい!」
次々と纏わりつくブランやモスにもみくちゃにされ、ノアは戸惑いつつも、されるがままにされていた。
ノアは空いている方の手で鬱陶しそうに髪を掻き上げると、諦めたみたいに小さく溜息をついた。
ノアの頭にしがみつく私の背中をポンポンと叩く。それだけで涙が溢れてくる。
赤目とのバトルの後もこうやって背中を叩いてくれた事を思い出す。ああ、ノアだ。ぶっきらぼうで、厳しくて、誰よりも仲間のことを想ってくれている、私達のノアだ。
ノアは腰にしがみつくブランとモスの頭を優しく撫でると、すっと手を伸ばした。
伸ばした手の先には、リディスがいた。
両目に大粒の涙を湛えて、歯を食いしばり、震える手でスカートをぎゅうっと握りしめている。
リディスはノアの金色の目とぶつかって、顔を真っ赤にして唇を噛み締めた。
ノアの瞳が、そんなリディスを見てゆみなりに笑った。
「ほら」
「@っ△×☆~!!!」
ノアのここ空いてますよ、という感じで伸ばされた腕に、リディスが声にならない声を上げた。
「ほら、じゃないわよ!」
リディスは両手の拳をノアの胸板をドンドンと叩きつけた。
「いったい今まで何してたのよ! どこにいたのよ! 何がほらっよ、私達が……私が、どんな気持ちでっ……! 馬鹿! 馬鹿ノア―――!」
ノアの胸板を叩きながら、リディスは大声でノアを罵倒した。大粒の涙と真っ赤な顔で。
ノアはそんなリディスを、幼な児に向けるような慈愛のこもった目で見つめていた。尚も殴り続けるリディスの頭を、大きな手のひらで引き寄せると、その金髪にけぶる頭の上に優しくキスを落とした。
「悪かった」
「はぅ@~☆〇×~!!!」
顔を真っ赤に染めて尚も殴り続けるリディスを、今度は両手で抱きしめる。
……そんなピンク色の再会を私はどこで見ていたかって?
地面の上です。
ええ。リディスが殴りかかった時に、振り落とされました。
まあ私が出る幕じゃないって事くらい分かるよ。うん。
同じように地面に転がるブランと目を合わせて、一緒に泣き笑いした。
ノアはリディスが落ち着くまで、胸を貸していた。
リディスのしゃくり上げる響きが小さくなるのを待って、ノアはそっとリディスの肩を持って身体を離すと、ゆっくりと一歩踏み出した。
ノアの向かう先にはシャモア。
シャモアは固く目を詰むり、俯いて立ちすくんでいた。
「シャモア」
ノアが呼びかけると、シャモアの肩がビクッと震えた。
「……ノア……俺……」
シャモアは捨てられた仔犬のように、縋り付くような、怯えた顔をしていた。
ノアはシャモアの頭を強引に肩口に引き寄せた。曲げた腕でシャモアの頭を自分の肩口に押し付ける。
「無事で良かった」
「ノア……」
ノアに首をホールドされたまま、シャモアは声もなく泣いた。
その二人の姿に、私の涙腺も崩壊する。
だってシャモアがどんな気持ちを抱えて来たか、私は知っている。どれどけ自分を責め、どれだけの後悔を乗り越えようとしてきたか。
「ノアも……良かった……無事で……ありがと……生きていてくれて」
切れ切れのシャモアの言葉に、ノアはシャモアの頭を叩く事で応えていた。
ノアはシャモアを片腕でホールドしたまま、シュウに視線を合わせた。
「面倒かけたようだな」
シュウは目の端を赤くしながらも、肩をすくめて苦笑した。
「面倒見てもらったのは俺の方さ。こいつら驚くほど強くなったぞ。ノア、今やお前、最弱だからな」
「最弱だ……と?」
ノアの金の瞳がギラッと光った。
え? もう?
もう戦闘狂モードに入っちゃう感じ?!
「まだ早い! もう少し生の喜びを分かち合おうよ!」
「もう十分分かち合った。詳しく話せ」
「いや、はえーよ!」
似たような会話、前もした――――!
これ火曜日分です。次は水曜日にアップします!




