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第四話 フェス-FeS- 覚醒

親友の死…マサキは怒りと悲しみの中、力に目覚める…

「そんな…嘘…だろ…」



悠太と凛が死んだ。



呼吸をしていない。



白羽那由多…彼女も倒れたまま動かない。




『悲しむ必要はないぞ…お前もすぐに死ぬのだから』



頭の中がホワイトアウトしていくのがわかった。



「うぅ…うわぁああああああああああああああああああッッ!!!!」


『!!』



マサキは天を仰ぎ雄叫びをあげた。


怒りに我を忘れるマサキ。

その目には殺意の灯が灯っていた。


同時に飛び出していた。



「殺す…!!お前だけは…許せないッ!!」


『ふん…死ぬのはお前だ』



影はお馴染みの針攻撃を放つ。


針は正面から来るマサキの胸を貫いた。


『!…感触がない…?』



マサキが薄らいでいく。

そう、影が貫いたのは残像だった。



ドガッ!!



『!!』



異変に気づいた時には、影に衝撃が走っていた。

空中より落下しながらの蹴りが見事に影の頭部と思われる場所にヒットしたのだ。


影は3、4mほど吹き飛ばされた。


『…馬鹿な…今の動き……まさか!?』


ガシッ



マサキは倒れる影の腕を掴んでいた。



「消えろよ…!!」


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』



影の…そう。マサキが掴んでいた部分が"消滅"した。


影は凄まじい悲鳴を上げる。

霧のような…血飛沫を上げながら。



「殺す……」


『……その目……やはり……お前は地球人だな…冷酷な目だ…』



「何が…何が冷酷だッ!今お前がしたことは何だって言うんだッ!!

 二人が何をした!なんで殺したッ!」


『…今のお前を殺すことは出来ない…か。いいだろう…殺せ』



この瞬間、急に冷静な自分が帰ってきた。



「はぁ…はぁ……」


『どうした…?殺さないのか?…我はお前の仲間を殺したのだぞ?

 憎いはずだ。そうだろう?殺したいほどに憎いはずだ。やるがいい。誰も咎めない。

 ましてや我はお前達からすれば異形なる存在…なにもためらうことはない』



「だまれ…だまれよ……」


『怖いのか?お前達は殺しているではないか。虫や…動物を…なんの罪悪感もなく』



「一緒に…するな…くそ……なんで」


マサキは涙がこぼれてきた。

友人の死…仇を討てない自分自身…



『…くく…ためらうな。…今のお前なら…こう強く願えば…それで我を殺せる…

 "死ね"と…俺を見つめながら心の底からそう願え…それで終わる』


「くそ…ッ!なんなんだよ…お前は!」



悠太






那由多





ごめん…



「それでいいわ」


「え…?」



那由多が立ち上がっている。



「無事…なのか…?」

「マサキ…ごめんね」



ごめんねって…。


「!」



彼女が俺を抱きしめる。


「え…え……ちょ」


その瞬間、暖かい光に包まれた。



「これは…傷が…!?」


右肩も…腹も…傷がふさがっていく。




「これでいいわ…二人も無事よ」


「!」



俺はすぐに二人に駆け寄った。

二人は気を失っているようだが、首の痣も消え、普通に呼吸をしている。



「白羽…那由多…君はいったい…」


『くくくく!!我は見事にダシに使われたというわけか…』



「マサキ…あなたには悪いことをしたと思ってる……一生恨んでもらってかまわない」


「な、何をいってるんだ…どういうことなのか説明してくれよ」


『その女は…お前の力の覚醒のために、わざとそこの二人を助けなかったのだ』



え?



「その通りだ。私がその気になれば、二人を即座に救いだし、このレヴ・ストラゥクを倒すことも出来た…。

 君を傷つけることも…彼らを苦しめることもなかった」


「そんな…!なんでだよ!……力があるのに黙って見てたってわけかよ…

 俺達、"友達"じゃないのか…」



マサキはその場にひざをつき、両手を地面につけた。



「…全ては君を守るため…。私を憎んでもらってもかまわない…」

「俺を守るためって…一体何なんだよ…。一から説明してくれ!」


「いいだろう…もともと全てを話すつもりだったんだ。だが少し待って欲しい」


そういうと彼女は影に近寄った。


『!…なにをする…』


「癒す」



再び彼女は暖かい光を放つ。

すると先ほどマサキが消し去った影の手が繋がったではないか。



『なんの真似だ…』


「お前はこの地に住んでいるといったな。

 私がこの地に来るとき過去の記録を見た。神隠しによる行方不明や謎の怪死がないかをな。

 そして管理者によって拘束された記録もだ…。結果はシロ…この地にそういった事件はなかった。

 つまりお前は今回が初犯なわけだ…レヴ・ストラゥクの者よ」


『…初犯だから…見逃すというのか?これは地球人とは思えぬ甘い発言だな』


「私は管理者ではない…。お前を裁く権限もない。それに、お前の暴挙の理由は私達のせいでもある…」


「なんかよくわからないけど…だからといってコイツが二人を殺そうとしたんだぞ!?

 お咎めなしなんて言わせない…!」




『そいつの言うとおりだな…。我は生きるために当然のことをした…。

 だが、その理屈はこいつらには関係のないことだ。納得などできるはずもない』


「ここでお前を逃したら…同じことをするのか?」



『ああ…我は生きるため、襲い続けるさ。そんな奴を放っておくお前もある種の同罪だな…くく』


「そんな事はさせないさ…。お前は私達と共に戦う仲間になるんだ」



な、仲間…!?



『…何を言っているのか理解できないな』


「メストと戦おう…私と一緒に。そちらのほうが、まだ可能性があると思わないか?」



『…』


「私はこの星にいる力を可能な限り集めるつもりだ。

 彼のような純粋種の地球人や、お前のような異星人の力を集める…そしてこの星を…地球を守る」


「…こいつや、君…そしてその不思議な力を見たから……恐らく君の言ってる話は全部本当なんだと思う…。

 まだ、ピンと来ない部分もあるし、正直話の規模がでかすぎて、俺には漫画か小説のような話に思う」



「…そうだと思う。それが普通の反応だ」



「今までの話の流れで…俺が理解できたのは…

 この地球に、悪い異星人?メスト星人?が攻めてくる…。

 んで、そいつらはそこの影が恐れるほどにめちゃくちゃ強くて、んでもってそいつは死にたくなくて

 悠太と凛を襲った。エネルギーを得るために。

 んで、君はよくわからないけど、どっかの星から来た"チキュージン"なわけで、メスト星人から

 この地球を守ってくれる救世主ってこと?

 そんでもって、この星にはその影みたいな宇宙人がいっぱい住んでて、そいつらの力を借りて戦おうってわけだ」



『…』


「はぁ…。悪かった。ちゃんと説明する」


「ち、違ってたか」



「メストは星の名前ではない…組織の名前だ。

 遥か昔、この地球から外宇宙に逃げ出した地球人…その一部の過激派がメストと名乗り、

 この星を取り返しに向かってきている」


「…地球から逃げ出した…?」



「信じられない話だとは思うが5000年以上昔…地球人は一度絶滅の危機にあった。

 彼らの祖先"ゼクト・フェフ・シャグナ"という異星人によってな」



「え…悠太や凛が…異星人?」



「あぁ。見た目こそかわらないし、今までの交わりの繰り返しで多少地球人の血が混じってはいると思うが

 純粋なる地球人ではない。地球人であるかどうか…これは純粋なる地球人同士にしかわからないことだけどね」


『それと我のような異星人だな…。"ゼクト・フェフ・シャグナ"の血を持つ者は我に干渉することはできぬ。

 だから、お前が我に干渉したとき…すぐに地球人であると理解した。

 我のように不干渉領域を持つ異星人は多い。お前達の世界で妖怪といった類の存在…あれは異星人だ。

 いまやこの星には"ゼクト・フェフ・シャグナ"の血を持つものがほとんどだ。

 それゆえ、奴らに干渉することができないため…一部の、お前のような純粋種の地球人が目撃する例があるのだ』



「私は地球育ちではないが、純粋種の地球人だ。だからこそわかる。

 君は純粋な地球人だ。君の両親も、その親達も…先祖代々…な」


「…いまひとつピンと来ないな。だって俺も悠太も…見た目に違いなんてない…人間だよ。

 それに悠太たちの祖先が…地球人を絶滅の危機においやったって…」



信じられるわけがない…。



「その辺りの話を今した所で信じれないだろうし混乱するだろうな…悪かった。

 とにかく奴らメストは確実にこちらに向かっている…。2ヶ月前、東京消失…あれはメストによるメッセージ。

 この星に住む管理者たちへ…この星に住む異星人たちへ…」



「!…あれがそうなのか…」


「東京…あの隔離地帯は管理者の本拠地でもあった。…抵抗力を削ぐ上でも効果的だったはず」




「その、さっきから出てくる管理者ってのはなんなんだ?」


「この星の真実を代々受け継いでいる純粋種からなる地球人の一派…。

 その昔、"ゼクト・フェフ・シャグナ"に地球人が滅ぼされたとき、彼らに命乞いをして助かった地球人たちよ」



「…俺の先祖も…管理者ってことか…」


「そうとも限らないわ。偶然助かった人たちもいると思うし。

 彼らはこの星の"安定"を求めた。…この星に害するであろう異星人は滅する…」



「…メストは…つまり地球人なんだろ?…そんで…この星を取り返しに来る…。

 やり方は暴力的かもしれないけど、元々はゼク…なんちゃらがこの星に攻めてきて乗っ取ったんだろ?」



信じられないけど…。



「そうだ。だが…奴らは暴力的なんてものじゃない。全てを滅ぼすつもりでいるんだ。

 人と名のつく、知性あるもの全てをだ…。虐殺以外の何者でもない…」




「それにしても…どうやったのかわかんないけど東京を一瞬で消せる力があるんだろ?

 だったらそれを地球全土にわたってやれば、わざわざ攻めてこなくても終わりじゃないの?」


「その辺りについてはわかっていないけど…メッセージでは直接この星に来ると言っていた…」



「いつ頃…やってくるの…?」


「正確な日数はわからないが、奴らは1年後には全ての戦力を送り込むといっていた…。

 先陣部隊が送られてくると考えると…ひと月後にはやって来るかもしれないな」



「そ、そんな!この星の軍隊とかでどうにかなるレベルなの?」

「どうにもならないと思う…。相手は私達と同じ地球人だもの…。"フェス使い"ばかりでしょうね」



「フェス…使い?」


「あなたもさっき使ったでしょう?彼の腕を吹き飛ばした、あれよ」



あの…力…!



「偶然…じゃなかった…のか?」


「想いを力に変える…思念力からなる特殊な能力よ。

 フェスは想いによって様々な効力を発揮する。

 あなたはさっき、彼に消えて欲しいと願った。その結果が腕の消失」


「…確かに…」


「私は治癒したいと強く願った。それがその結果よ」



「すごい…夢のような力だね…」


「そうでもないわ。何もかも自由になるわけじゃないし、使い方によっては自滅する。

 陰の感情から湧き出る破壊の力は、使い続ければ闇に飲まれ発狂して死に至るし…

 陽の感情から湧き出る癒しの力は、自身の命を削るもの…こちらも酷使すれば当然…死に至る」



「そんな…!俺もやばいの?てか君もか」


「大丈夫…そこまでの影響はないわ。今のところはね。

 とにかく万能じゃないことは覚えておいて」



「あ、ああ…」



「フェス使い同士の戦いは想いの強いほうが勝つ…。

 想いで負けると…死に繋がる」


「というか…今更だけど…

 俺、戦うことになってる…?」



「?…何を今更」




へ…。




第四話 完

いつも読んでくれてありがとうございます^^

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