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第二話 日常にサヨナラ

とにかく自分が書きたいものを書いていこうと思います。

主人公同様、発展途中ですが、一緒に成長できたらと思います。

「んじゃー空いてる席テキトーに座ってちょうだい。皆仲良くしてあげるんだよ」



彼女は何も語らず、歩みを進め…こともあろうか俺の席に座ったではないか。



「あ、あのちょ!」


俺は思わず彼女に駆け寄った。


「う…その…あの、そこ…俺の席なんだよね…はは」



うわぁ…俺何緊張してんだよ。

赤面してるよな俺…絶対。


こいつ変な奴だと思われたよな…間違いなく…。



「…ごめん」



小さく一言つぶやいて彼女は席をたった。

そしてすっと俺の横を通って隣の席に移った。



「あの…その…ごめん」


「?…なんで君が謝るの?」



た、確かに…。

なんというか…雰囲気に負けてしまったというか…つい謝ってしまった。



バシッ!


いきなり頭上に痛みが走った。

この痛みには覚えあり…。



「なぁに、顔赤くして青春しとるんだお前は!そんなに青春したいなら…いっとく?」



担任、市原瑞希いちはらみずき…鬼の女教師…28歳独身…。

得意技は出席簿チョップ…。


これが本当に痛いから困ったものである。


ちなみに"いっとく?"の意味は、そのまま…彼女の親指がさす方向を見れば一目瞭然。



―――

――



「はぁッはぁッ…」



グラウンド10周…朝から走りっぱなしである。

なぁにが青春だよ…。


今時こんなものが青春なものか…俺、泣きそうだ。



クラスのいい笑いの種だぜ。




―――1限目終了/休憩時間




「あーーっ…もう疲れた…」



結局10周したあとは廊下に立たされる羽目に…。

まったくついていない週はじめだ…。



「あはは。今日も体を張ったネタご馳走様でした!」


悠太が笑いながら近づいてきた。


「うっせーやい。好きで笑いとってんじゃないっての」




視界に彼女の横顔が入った。

どうやら読書しているようだ。


横顔も…



「…」

「…はぁ。おーいマサキ、何顔赤くしてみてるのかなぁ〜?」



「ええ!?な、おま…!」


ふぅ…っといった感じで悠太が隣を向くと彼女の視線と同じになるようにしゃがんで見せた。


「や!…白羽…那由多ちゃんだったね。昨日ぶり」

「…あぁ…昨日の」


彼女は読んでいた本を閉じて、こちらをむいた。



「あの時は自己紹介まだだったよね。俺は浦川悠太!よろしくね」

「…よろしく」


「んで、こいつは」

「蒼葉マサキです…よ、よろしく」



思わず…手を出してしまった。

握手を求める右手…。


「…?」



彼女は特に手を差し伸べることもなく不思議そうな顔をしている。

そりゃそうだ。


俺はとっさに差し出した右手を頭にもっていった。



「は、はは…」


「那由多ちゃんは、都会のほうから来たの?」

「えぇ…都会といえば…都会かな?…今もそう呼べるかはわからないけど」


「え?…それって」


悠太がさらに聞こうとした瞬間、彼女は立ち上がってマサキを見下ろした。



「…蒼葉君……今日時間作れるかしら?」



いきなりの展開である。


彼女は立ち上がったまま教室を出て行ってしまった。



「ん〜…なんか、何処となくとっつきにくいね。彼女」

「そうか?」


"やれやれ"といった顔でマサキを見る悠太。



「ねーねー!」


声をかけてきたのは同じクラスの黒峰くろみね りんだ。

同じクラスではあるが、彼女は1つ年下の1年生だ。


うちの村は子供の数も年々減少傾向になり…。

今じゃ3年生が10人、2年生が6人、1年生が4人といった感じで、

それぞれの学年で切っても1学年1クラスになる感じである。


もうどうせならってことで、今じゃ全学年をまとめて授業をしている。

授業は基本的にはテキストに従い勉強する感じで、わからないところは直接先生に聞く形だ。



それも今年まで…来年の春からは街の学校に移るから、学年別に戻ると思う。


「どうした?凛」

「あの子、白羽…んーなんとかちゃん?」

「那由多だよ!な・ゆ・た!」


「なぁにムキになってるのよ!マサキにぃ!」


「べ、別にムキになってないし」

「こいつ、どうやらあの子が好きみたいなんだ。いわゆる一目惚れってやつ?」


「ふーん…そうなんだ」


ムスっとする凛。



「学校終わったあとも、"おデート"のお約束があるみたいだしな」

「な!おまッ…!」


「むぅ!会ったとたんデートだなんて…なんかマサキにぃって…いやらし…!」


そういうとプンプンと出て行ってしまった。



「はは!わりぃなマサキ」

「お前はどっちの味方だっつの」


「…なぁマサキ、お前凛のこと…」

「あぁん?」



「いや…なんでもない」


悠太?



「それにしても、あの那由多って子…もしかしたら"東京"からやってきたんじゃないかな」

「"東京"って…ついこないだ"謎の消失事件"の中心部の?」


今から2ヶ月ほど前かな。

東京という日本の中心都市が丸ごと"消えた"のだ。


まったくもって原因は不明…人はおろか、建物からなにから、大地を残して全て消えたって話だ。


元々"東京"は特別な場所で巨大な外壁で覆われた隔離都市だった。

だから俺たち田舎者にはそこがどんな所かもわからない。



ネットの情報じゃ、詳しいことは何も載ってなかったけど…

掲示板じゃ色々な説がささやかれていた。


何か未知のテクノロジーによる事故…異星人による襲撃…。

どれもこれも信じがたい内容ではあるが、悠太はこの手の話が大好きだから、いつも楽しそうに話している。



「ああ。なんとなく…だけどね」

「ふーん…まぁいいんじゃないか?何処からきたってさ」



「うわぁ…つまんない男だねぇ君はぁ!これだから都会モノは嫌だね」


悠太の言うとおり、実は俺も都会からやってきた移住者の一人。

3年前…中2の春だったかな。


夕羽螺町(ゆううらちょう)って割と大きい都市からここに引っ越してきた。



「なぁ悠太。すっかり忘れてたんだけどさ。昨日別れ際に言ってたよな?

 "凛を泣かせる事はすんなよ"って…あれどういう意味なんだよ」


「…俺、そんな事言ったっけ?はは…」



「?…言ったと思うけど…」

「あのさ…」



悠太が言おうとした時だった。


キーンコーン…カーンコーン…。



「なっちまったよ。んじゃあとで聞くよ」

「あ、ああ」



いつの間にか彼女も席に戻っていたようだ。

なんだろう、存在感があるんだかないんだか…。


おうおう、凛の奴も睨んでるよ…。



「うっしゃあ!気合入れて二限目いくぞぉ!」



毎時間このテンションでよく続くな…と、瑞希先生をある意味尊敬している。






―――

――



放課後―――



「はぁーっ!終わったぁ!」



結局1限目の休憩時間に悠太が言いかけた事には触れないまま、1日が終わってしまった。

まぁ…話したかったらむこうから切り出してくるよな。



「蒼葉君…いい?」



っと…そうだった。

那由多さんとの約束があったんだ。



「んと…一旦家に帰ってからにする?…それともこのまま行く?」


何処に行くのかしらないけど…行くって言ってしまった。



「そうね…これから向かいましょう」


「なになになぁにーー!デートなんて認めないんだからねっ!」


凛がズケズケと話に割り込んできた。

もめなきゃいいが…。



「…あなた、今日一日ずっと私を睨んでたみたいだけど…私何かした?」

「べ、別に睨んでなんかないわよっ!た、ただマサキにぃと…デ、デートとか小耳に挟んじゃって…

 その…なんていうの!」


「気になるの?」

「むむ!なによ!その挑戦的な態度はぁ!喧嘩売ってるの!?私、こう見えて空手やってるんですから!

 負けないんだからね!」


身長150cmの凛が空手の"型"をかまえて見せても、やっぱりどこか弱弱しい。



「くすっ…あなた面白いわね」



笑った…。

彼女が笑みを浮かべたの初めて見たかも…。



「何がおかしいのよっ!」

「安心して…そんなんじゃないから」


そ、そんなんじゃないから…。


それはそれでショックです那由多さん…。



「そ、そうなの!?悠にぃ…!!」


背後でコッソリ逃げようとしている悠太の肩が震え上がった。


「あ、あはは…」


「何処行くきぃやぁ…こらぁぁぁッ!!」



逃げる悠太、追う凛…。

とにもかくにも煩い連中はいなくなった。



「…んじゃ…どうしよっか…?」

「私について来てくれればいいわ」



そういうと彼女はカバンを持って教室を出ようと歩みだした。


「あ、ちょっと!」



マイペース…なのかな…。


俺は慌ててカバンに教科書類を詰め込み彼女を追った。





―――

――



何処にいくんだろう。

彼女は何も語らぬまま歩き続けている。


この道は間違いなく彼女の自宅に向かっているかと思われるが…。



「こっち…」



そういうと、山道をそれて木々が連なる方向へ歩み出した。



この時、俺はあの場所を思い出していた。


そう、昨日見た謎の洞穴だ。



結局勇気が出ずに足を踏み込むことはできなかったけど…次にまた同じ場所に…この子といけたなら。

その時は…。



「!…」



彼女は急に足を止めた。


「どうしたの?」


「……」


彼女は目を閉じて…何かに集中しているようだ。




「話をしている時間がなくなったわ…ついて来て」


すっ…と目を開いたかと思うと、彼女はそういって走り出した。



「え、ちょ!」



速い…!

彼女足が半端なく速い…!



俺も速いけど…その俺がついてくだけでいっぱいいっぱいだなんて…。


なんなんだ…

なんなんだよ那由多さん!



「はぁ…ッ…はぁッ…」



前方で彼女が立ち止まっている。



「はぁ…はぁ……速いね…白羽さん…はぁはぁ…」


「巻き込みたくなかったのにね…関係ない人は」

「え?」



彼女の視線の先には、もがきながら宙を浮く悠太の姿と、怯える凛の姿があった。




「悠太ぁぁぁぁああッ!!!」





第二話 完

最後まで読んでくれてありがとうございました。

応援してもらえると嬉しいです^^

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