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不注意で転生

はじめまして!

初心者なので直すポイント等が有ればコメントで教えてください!

投稿頻度は遅いかもですが、早くできるように頑張るので応援よろしくお願いします!


朝日が差し込むこの部屋には音が散乱していた。

キーボードのノック音、コピー機のコピー音。そして、僕を叱る上司の怒号。


「おい!佐々木!これはいったいどういうことだ!?」


上司が見せたのは、僕が作成した商談用の企画書だった。

何が気にくわないのか、全く理解できないでいた。

上司はそんな僕に気づいたのか、止んでいた怒号を響かせはじめた。


「お前は気付かんのか!?ここ!」


上司が指摘したのは、企画書の冒頭部分だった。


「ここの部分の文体が敬語じゃないだろう!?なんなんだ、お前はいつもいつも!」


上司はいつも僕をストレス解消のサンドバッグにしてくる。

こんな時は平謝りでやり過ごすのが、僕の中の掟だ。

上司の説教をなんとかやり過ごし、席に戻ろうと後ろを振り向くと隣の席の子崎(このさき)が慰めるような顔をして待っていた。


「お前はいつも面倒役を押し付けられるよな。高校の時だって______」



「いまは仕事中だろ。

それと、お前とは高校は同じじゃない、中学で一緒だったんだ。何回も言わせるなよ。

ただでさえ、上司を宥めるので忙しいんだから。」


子崎はテヘッと言いたそうな顔でみてきた。

テキトーに子崎をあしらい、僕はデスクに顔を突き合わせた。




積み重なった書類をどうにか処理して、帰宅路につこうとしたら子崎に飲みに誘われてしまった。

結局深夜まで飲み続けた。一体何件はしごしたのか覚えていない。

日付が変わって少しした頃に家に帰ることができた。


「明日......いや、もう今日か。また会社に行かなきゃな。」


そんなことを呟きながらリビングで大の字になっていた。

窓からの光で目が覚めた。二日酔いか、頭がズキズキと痛む。

こんな状態でも出勤しなきゃいけないのが、うちの会社だ。


「早く出社しなきゃ、いま何時だ?」


近くに放り投げられていたスマホで確認した。時間は午前9時56分。上司からの着信で画面が埋まっていた。

まだ眠りたい気持ちを押し殺して、急いで会社に向かった。

次の電車が来るまであと12分、右に左に、上に下に唸る下り道を全力で走り切った。駅に着いた丁度に電車が到着しようとしていた。

息切れが激しい中、電車に乗り込みスマホを取り出した。

着信履歴を見ると、上司からの電話が26回。

上司の怒り具合は子崎から来る着信の数で見当がつく。いつもは2〜3回しか来ないはずの子崎の着信が10回もある。

どうやら、相当怒っているらしい。

2つ駅を超えたあたりでまぶたがゆっくりと降りはじめた。

そのあとは眠ったから記憶にない。

また目が覚めると、僕は家の天井を見ていた。

急いで時計を確認すると、午前3時10分。

どうやら、さっきのは夢だったらしい。ほっと胸を撫で下ろし、夢の二の舞にはならないようにしっかりと出社の準備を整える。



全く、この会社は典型的なブラック企業過ぎる。

出勤は8時までで終業時間は18時というくせに、残業時間をちゃっかり加えてくる。

おかげでいま、先に仮病で帰った子崎の分をやらされているわけだ。

山のように積まれた書類、ファンの音がうるさい旧式のパソコン。

そのパソコンの画面に時折映るクマの凄い僕の顔。

時計を見ると1時を回っていた。終電もない。


「こりゃ、会社泊だな。」


会社泊は、文字通り会社に寝泊まりして仕事が終わるまで帰れない地獄のサービス残業だ。

この会社ではこれをすると、ノルマがアップするとまで言われている。

会社支給の寝袋に入り、入社前のことを思い出していた。

他にも会社はあったのにどうしてこの会社に入ったのか、心底悔む。

元々、僕はこの会社に入る予定じゃなかった。まだ学生の頃にある企業にヘッドハンティングされており、もちろんそこに入社するはずだった。

そしたら、その会社が倒産した。入社する3週間前のことだった。

路頭に迷った僕をいまの上司に発見されてしまった、という訳だ。

そんな昔ことを考えているうちに、眠ってしまった。



燃え盛る家屋、逃げ惑う人々、襲いかかる獣たち、そして僕を呼ぶ誰かの声。


「...さん、...さん。早く起きて...」


その言葉で飛び起きた。

目の前には子崎がいまにも飛びかからんとしている姿があった。


「よ、よぉ。急に起きんなよ。」


気まずくなったのか、子崎はそのまま自分のデスクに戻っていった。

寝袋から出て確認すると、子崎のほかにもチラホラと仕事に取り掛かっている姿が見えた。


「お前、俺に話しかけたか?」


まだ寝ぼけ気味なまま、パソコンを起動中の子崎にさっきまでのことを聞いた。


「いいや、イタズラしようと近づいたら急にお前が起きたんだろ。」


「そっか。て、やっぱ何かする気だったんだな。」


子崎は首をビクッとさせて僕を見つめ、顔色を確認した。僕の顔が怒ってないと見えたのか、ホッとしていた。

喫煙室に向かっていた僕はさっきのが夢を思い出していた。

あの夢はよく覚えている。それは前にも見たことのあるような夢だったから。

考え事をするときは、迂闊に歩くもんじゃないとこの時わかった。

何かに足が当たり階段を踏み外し、頭から階段を転げ落ちた。

あ、死ぬんだ。瞬間的にそう思った。

ふっと意識が戻ると、そこは会社の階段じゃなかった。

無機質な白い部屋の中だった。


「あれ、僕って会社にいたよな?もしかして死んだのか?

いや、でもそんな感じはしないし......」


独り言をブツブツと呟きながら、この現状を受け入れるのに必死だった。


「ほっほっほっ。そこの若いの、そんな焦らんでも時間はいくらでもあるぞい。」


後ろから声がした。振り向くと、地面につきそうなほど長い白い髭を撫でながら微笑むお爺さんが立っていた。


お爺さんからの説明によると、異世界の住人と意識が混在してしまい、さらにおじいさんの不注意で死んでしまった。そのお詫びをするためにここに呼んだらしい。あと、何故異世界の住人と意識が混在してしまったのかはわからないそうだ。


「お詫びって言われても僕は死んだんですよね?

詫びられてもどうしようもないんじゃ......」


お爺さんは5枚のカードを差し出した。


「これがわしからのお詫びじゃ。

引いたカードの番号のドアに入るといい。」


僕は右から2番目のカードを引いた。カードには「5」と書かれていて、お爺さんの言う通りに5番のドアを開けた______

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