偽商人は大根役者
テレワーク延長のせいで、パソコン争奪戦が悪化の一途です。
今までと同じ文章量ではいつ更新できるかわかりませんので、短い分だけ更新回数のアップを目指します。
基本原稿用紙四枚から五枚でがんばります。
よろしくお願いいたします。
「ヤハマン様、お怪我を・・・」
怯える『霧の淡雪』のもとに手を縛られたヤハマンが連れてこられた。
「こいつはおめぇらが攫われるのを見て追いかけて来たんだとよ。んでもって俺たちに見つかって商品になったってこった。飛んで火にいる何とやらだな」
「なんで、なんでこんな危険なことをっ ! 」
ヤハマンは左頬を赤黒く染め、手首は赤く縄の痕がついている。
「・・・あなたたちを助けたくて。でもっ、安心してください。私の部下に連絡してから来たんです。すぐに助けがっ、ウッ ! 」
「うるさい、黙れ ! どうせ明日には仲良く売ってやるから安心しろ ! 」
頭を殴られたヤハマンは、引きずられながら部屋から連れ出された。
「大人しくしてますから、ヤハマン様に酷いことをしないでっ ! 」
「ヤハマン様ぁぁっ ! 」
カチリと扉に鍵がかけられる。
『霧の淡雪』の二人はしゃくりあげながらそこに耳を当てた。
「どうやらあの人たちはもう少し奥の方の部屋を使っているみたいね」
「ええ、エリカ。扉を開く音がしなかったから、かなり離れているのではないかしら」
「じゃあ逃げる時間は十分にとれるわね、アンナ」
ところどころで外に聞こえるように「ヤハマン様ぁ」とか「あたしたちのせいで・・・」とか入れながら、少女たちは外の様子を探っている。
「それにしても見事な小芝居だわ」
「自分を味方だと思わせて、後で恩を売る予定なんでしょうね」
「あのお、お二人とも何を言ってるんですか。あの人はお二人を助けに来てくれたんでしょう ? 」
先に攫われてきた女性は先ほどまでの泣き叫んでいた様子をコロッと変えた二人に怪訝そうに尋ねる。
まるで旅芝居の役者のようだ。
「ああ、あの人がこの誘拐騒ぎの黒幕ですわ。私たち商品の様子を確かめに来たんでしょう」
「そんな、その為にわざわざ殴られたって言うんですか。そんな訳ないでしょう」
「殴られてなんてないですよ ? 」
栗色の髪の少女がキョトンとした顔をする。
「殴られてないって、あんなに顔を紫色にして・・・」
「ああ、あれは絵具ですわね、間違いなく」
金色の髪の少女が扉から離れて床に座り直す。
「さっき打たれてすぐにあんな色にはなりませんわ。それに腫れていたでしょう。それもあり得ないのです」
「腫れてくるのはもう少したってから。赤紫になるのは今夜か明日ですよ。口の中に綿でも詰めてるんだわ」
転んだりぶつかったりと怪我の多い子供たち。
伊達に育ててきたわけじゃない。
あれで騙すことが出来ると思われたとは、随分と舐められたものだ。
「一度バレエ団を舞台にしたサスペンスドラマに出たことがあるのよ。その時メイクさんが本当にびっくりするくらいに傷を作ってて。時間経過で傷の色を変えていたのを見て感心したわ。包帯から少しだけでている青あざとかね」
「いいなあ、そんな経験が出来て。今度生まれ変わったら、特殊メイクとかの仕事がしたいわ」
「あら、また生まれ変わるつもり ? だったら私はまたバレリーナになりたいわ。いろんな経験が出来たもの。以前よりも表現の幅が広がってると思うのよね」
もう一度の新しい人生。
そのためにも奴隷商人をさっさと取っ捕まえて、婚約者も決めて、結婚して子供を産んでとっとと死なないと。
「道は長いわね、エリカ」
「本当よ、アンナ。でもあたしたちの転生計画のため必要なイベントよ」
目指せ、新たな大地。
そんな壮大な計画を、皇太子たちはまだ知らない。
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