記憶をなくしていた
カルニアとリザールは今、バステの家にいた。兵士たちと国王に状況を伝えた後、国王が
「カルニア、リザール、少し様子を見て来てくれないか」
「はっ!分かりました!」
カルニアは大きく言ったが、リザールは面倒臭そうにため息をついていた。例の少年は本当に金髪で青と白のローブを着ている、聖職者のような格好だ。比較ではないがリザールの髪の色はきれいな銀だ。魔術師のバステは魔法''回復''で少しずつ治療していた。バステは黒のローブに三角帽子で青緑色の髪の色だ。魔法使いといってもバステはそこそこ若い。
「カルニア、そこのフラスコを取ってくれ」
「はい、これは何ですか?」
カルニアが聞く。
「これは魔法''異常回復''を応用した気付け薬だ」
バステは王国指定魔術師の三本指に入るほどの実力者だ。気付け薬を鼻の下に塗られた少年は少しして目を覚ました。
「ここは…?」
「目が覚めたか。気分はどうだ?」
バステが気付き声をかける。
「あ、あなた方は…?」
カルニア達は事情を説明した。
「それは、ありがとうございます…」
「君、名前は?」
カルニアが聞くと…
「名前…?分からない…」
一同は驚いた。洞窟の奥にいたとはいえ記憶をなくしているとはだれも思わなかった。するとリザールが適当に
「じゃあ今からお前はナナシだ。記憶を取り戻すまでその名前で呼ぶぞ」
「あ、はい…」
ナナシと呼ばれた少年は困惑したようだったがすぐにさっきまでの雰囲気を取り戻した。
「しかし君、魔力の量が半端じゃないな…」
バステは感心していったが、カルニアには少しだけリザールは微塵も感じなかった。カルニアは11歳の時に母を亡くし当時すでに父親は行方不明だった。バステはそんなカルニアを引き取って育てた…というより弟子にして育てた。カルニア自身、学校で剣術を少し習っていたので多少の魔法を使える魔剣士という道を選んだ。