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③サイクロプスの生態観察(後)

サイクロプスの洞窟を前にして再度の待ち。

まあ、待つのには慣れているから問題はない。

最優先すべきは安全だ。


「気配隠匿」のスキルを発動してカモフラージュ柄の外套を被る。これで簡単には見つからない。

そして、長期戦に備えて干し肉をガシガシ齧る。

食べられる時に食べておく、これは鉄則だ。

この干し肉、肉に塩をまぶし天日干ししただけの肉だが、日持ちして嵩張らず、何よりそこそこ食える味をしている。

流石に味は大分劣るが、前の世界でのビーフジャーキーみたいな感じの味だ。

本当はもっと美味い物が食いたいが……金もないし、前の世界での食事と比べてしまうと、この世界自体に美味いものは少ない。

気持ちを紛らわせるように水を一気に飲む。


一日後……

サイクロプスの数と行動をある程度把握することが出来た。

数については、雄雌の各1体と幼体が1体、おそらく親子であるようだ。

幼体が人間の子供のように成体にじゃれつき、成体もどこか優しげに体を撫で回したりしているのを何度か見た。

サイクロプスをはじめ、モンスターといえど親子関係は存在するし、情愛はあるのだろう。

このような姿を見ると、モンスターでも同じ命あるものとして本当にただ討伐されるべき存在なのかと考えてしまう。

まあ、人間が捕食されているという現状を思うと、そんなことも言ってられないのだが……。

難しい問題だ。


行動については、基本的には成体は別行動をするようだが、幼体は住処に残る以外では単独になることはないようだ。

住処を空けるのは、朝から夕方までの間で夜間は住処に戻る。

行動範囲は住処を中心にして半径数km程度なのだろう、頻繁に住処に戻ってくる。

それにしても、子育て期間だけなのかもしれないが、これだけ大型の捕食者が群れていて、特定の住処を持って行動範囲も広くない……、よく食糧が枯渇しないものだな。

わざわざ街道のそばに住み着いたことも考えると、生態的には少なくとも子育て期間においては人間が主な獲物になるのだろうか?

(幸か不幸か、そのような捕食シーンには出会わなかったが)

そうであれば、種族として対立関係にある。

やはり討伐するしか道はないのだろう。

道すがら路傍に座り込んで遊んでいた幼体が、置いていかれまいと成体に追いすがる姿を見ながら、少し悲しい気持ちになった。


その後……

俺は報告をエドに渡した。

暫くして、あのサイクロプス達は冒険者達に討たれたという話を聞いた。

一方、俺はというと……報酬として得た少しばかりの金は当面の生活費ですぐに消えてしまい、またその日暮らしだ。

携帯食糧の残りの干し肉を齧りながら、色々な想いが頭を巡る。

俺もモンスターも生きる為には食わなきゃならない。

けど、俺達は自分の意思と関係なく神様が定めた食い物しか食えない。

「生きていくってのは、難しいな……」

あの幼いサイクロプスを思い出して呟く。



ちなみに、あの時のエドの怪我は酔って宿屋の2階から落ちた怪我だった。

その日にどれだけ大量の酒を飲んだかを自慢げに語りながら、大声で笑うエドは最後にこう締めた。

「何事も自分の出来うる限りを尽くすのみさ」

飲酒にも全力のエドさんカッケー……とは思わないが、何だか少しだけ前向きになれる言葉だった。

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