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⑤ゴブリンの生態(中)

サナの言うことはもっともだ。

ゴブリンが人間の女性を攫う理由は凌辱する為であり、その後には無残に殺害される。

理由は分からない。

ただ、ゴブリンは気の遠くなるような過去に人間にモンスターへ貶められた古い妖精のような存在だと聞く。

その時から彼らにとって人間は憎しみの対象であり、人間をいたぶることに愉悦を感じる理由なのかもしれない。

力は比較的低いが、武器を扱う知能や群れる性質もあり、人の生来の天敵として脅威のレベルは非常に高い。

当然だ、でなければモンスターとして恐れられたりしない。


対策は決まらないが、とにかくすぐに出発することにした。

いざという時に足手まといになる可能性を考慮して、現場へは俺とサナで向かう。

マスター達には知り合いに声を掛けて回ってもらい、増援をお願いした。

ただ正直なところ、これは一緒に行くと言って聞かないマスターを置いていく為の口実というのが主だ。



行程は順調だった。

トラブルにも見舞われずに、半刻の後には俺達は目的の場所に到着していた。

夕暮れを前にした街道は人影もなく、草や木の葉が風に吹かれて時折ざわめく以外、ひっそりと静まり返っている。

主要な街道であれば衛兵の巡視も頻繁に行われるが、この小さな街道にはその頻度は非常に少ない。

まあ、モンスターなんて稀にしか現れない地域だから本当はそれでも十分ではあるんだが……、それも日中に襲われたカーラはついてなかった……。


調査を開始し、すぐに痕跡は見つかった。

何か暴れたような土の荒れ、そして周囲を踏み荒らした多数の小さな足跡。

恐らく、この小さな足跡を辿ればゴブリンの巣穴に着くだろう。

俺達は慎重に周囲を警戒しながら、歩を進める。

緊張しているのか、サナは無言で俺の服の裾を掴みながら唇を固く結んで付いてくる。

無理もない、始めてのモンスターとの戦闘になるんだ……。

俺も本当は怖い、いくらゴブリンといえモンスターとなんて戦いたくない。

モンスターと呼称される者達は、どれも人を簡単に殺す力をもっている。

例え最弱とされるゴブリンでもだ。


やがて街道から少し脇に逸れた先の林に小さな洞窟が見えた。

入口脇にはゴブリンが一匹、地面に座りながら地面に突き立てた剣の上で退屈そうに頬杖をついている。

なんというか、とりあえず警備してますというような……。

数も少ない上に、あまりにも警戒心が感じられない。

人間を攫った直後で、仲間が取り返しに来ると考えないのか?

それとも、罠か?

俺はサナにジェスチャーで待機するよう伝え、よく観察しようと低木の茂みとスキルにより気配を消して洞窟に近付いていく。

既に辺りは薄暗く、空は群青色に染まって月といくつかの星が輝きはじめようとしている。

それは夜行性のゴブリンが活発化することも意味している。

本当であれば、朝まで待ちたいところだが……。


サナに念の為に掛けてもらった暗視の魔法のお陰だろう、洞窟にあと20m程になった時、気付いた。

ゴブリンの見張りの奥、洞窟の中で月の光を反射して時折わずかに鈍く光る刃に。

もう一匹、剣を握るゴブリンがいるようだ。


サナにジェスチャーで攻撃を開始すると合図を送る。

コクリと頷くサナを確認し、手近な石を拾い洞窟横の茂みに投げ入れる。

ガサッ!!

ゴブリン達は俊敏に反応し武器を構える。

声を掛け合いながらゆっくり茂みに近付いていく。

俺は深呼吸し、緊張を落ち着かせると、慎重に音を立てないように弓を引き絞り、放つ。

ヒュッと風を切る小さな音を立てて矢は後ろのゴブリンの喉を貫いた。

小さく籠もった音を漏らし、ゴブリンは倒れる。

前を歩いていたゴブリンは音に気付いて振り返るが、その直後には俺の二発目の矢が胸に刺さり、倒れていた。

俺が矢を外した際は、サナに魔法を使うように頼んでいたが、その必要はなかったようだ。

なるべくなら、確実性の低いサナの攻撃に頼るシチュエーションは作りたくはないが、捕われたカーラをすぐに救うためには仕方ない……。



洞窟の内部は予想外に広かった。

這いつくばったり屈んだりして進まないとならない洞窟が多いので、それを想定していたが嬉しい誤算だ。

暗視の魔法のお陰でうっすら見える洞窟の輪郭は、幾つかの分岐があるようだ。

そのうち一つの先にはゆらめく炎の光が微かに見えるのは、ゴブリン達集まっているのだろう。




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