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⑤ゴブリンの生態(前)

俺達は一先ずその場で対応を話し合うことになった。

まずは人員。

この店にいるのは7名。

そして、戦力になりそうなのは魔法使いのサナ、あとは俺だけだ……。


俺が戦力というのもどうかと思うが、他の者なんてマスター、カーラの危機を伝えた男(本業は魚屋)、近所の花屋の夫婦、いつも昼から飲んだくれてる常連の老人だ……。

ちなみに、俺は武器の扱いはショートボウが多少は扱えるくらいで、命中させる自信は50メートル以内程度。

まあ、スキルの気配隠蔽と合わせると十分な能力ではあるんだが、強敵や今回みたいな多数相手では活躍は難しいだろう。


サナについては、どうやら氷系の魔法が得意なようだ。

詠唱が魔力増幅で魔法陣が性質付与なら、ただの暗記や事前準備の差で魔法に得意不得意などなさそうな気もするが、詠唱で働きかける先の存在にとっては違うらしい。

精霊や神等の概念そのものである存在にとっては、概念というものが非常に重要なんだろう……。

ちなみに、サナが力を借りる先は魔狼フェンリルだという。

フェンリルはもともとは氷の概念の存在ではなかったが、いつの頃からか人々の認識が変化してフェンリルに氷の性質をもたらしたらしい。

そして、多分サナは知らないだろうが、フェンリルに力を借りることが出来るなんて者はほとんどいない。

それほど上位の存在だ。

どのような経緯で転生由来ではないこの力を得たかは語られなかったが、神々に匹敵する力を「信仰」の対価としてのおこぼれでなく、「契約」としてある程度は自由に使えるなんて異常とも言える。

ただ惜しいのは、力は十分だがサナにはその力を操る経験が不足していた。

日々、仕事(雑用のバイト)の後にビールを冷やしたりするだけで、モンスターの相手も詠唱もしたことがないという。

ああ、宝の持ち腐れだ……。

俺にそんな力があれば、観察で小金稼ぐ生活なんてしてないのに……。


まあ、そんなことは今は気にしてる時ではない。

この頼りない戦力でどうすべきか、だ。

本当はあと一人、冒険者の戦士あたりがいてくれたら良かったのだが……。

だがまあ、そもそも冒険者なんて数が少ない。

生態系の上位にあるため生息数自体が少ないモンスター、更に素材に価値があったり、懸賞金があるのは一部だ。また、財宝や貴重な資源の採取も既に過去にあらかた取り尽くされてきている。昔ながらの冒険者は一部の精鋭以外は食えない職業になってきているのだ。

そして、冒険者の多くは畑で栽培不可の薬草なんかを採取したり、一般住民のボディガード程度で糊口を凌いでいる状況であり、それらの職はリスクに対して儲けは少ない。更に、無職の若者の手っ取り早い就労口であったり、ならず者のような者も多く、あまり自慢出来る職業ではないのが現状である。そのことが更に冒険者という職への魅力の低下を招いてる。


とりあえず、応援を頼むしかない。

そこに、花屋の夫婦が真剣な面持ちで切り出す。

「俺は戦力にならない……出来ることは、警備兵に助けを求めに行くくらいだな。すぐに向かうよ。」

「私も冒険者ギルドに依頼してみます。」

カーラ達がゴブリンに襲われたという場所を地図に書き込み、夫婦は走り出した。

警備兵と冒険者には依頼するに越したことはない。しかし、警備兵が動き出す体制が整うのは時間が掛かるだろう……。

ギルドを通じた依頼にも応募がくるか分からないし、くるにしてもすぐにはこない……。


こんな時にエドがいたら…。

見通しの立たない救出作戦に深い溜め息をつく。

エドは唯一の知り合いのまともな冒険者であり、戦力としても申し分ない男だが、今はこの街にいない。

依頼の為、遠征のモンスター討伐に向かっているのだ。

なかなかの大物相手だということで、既に2週間は留守にしている。


そこで急に、それまで黙り込んでいたサナが少し緊張で上ずった声を上げた。

「わ、私も……頑張ります!とにかく、早く向かわないと……」






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