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第五話 「贋作」

 ウィルとロルトは走る速度を落とさずにそのまま扉目掛けて突進し、部屋へと入った。対象から逃れるために、そして情報を得るために。息を整えるの待ってからウィルは自分達が今入ってきた部屋を見て驚愕した。

 廃墟となっている筈の大きめの部屋には、ウィルが今まで見たこともない美しい芸術品の数々がそこには置かれていたからだ。


 ウィルは唾を飲み込む。


 ウィル自身日々繰り返される退屈な人生を豊かにするために、自分の部屋で密かに作品を作り上げてきた。当然他人にバレれば政府による厳しい処分が待っているので、誰にも言わなかったし、また他人の作品など見たこともなかった。それ故、ウィルにはこの世界に存在する「人間」は上の者に従い、日々個性のない人生を生きる生き物であるという固定概念が染み付いていた。

 しかし、今自分の目の前にある芸術品を見たウィルは自分の固定概念が急速に崩壊し始めているのに気づいた。


 そして、彼の気怠げそうな顔が夢を追いかける男の顔に変わり、頭の中にはこの部屋に入るまでは思いもよらなかった考えがまとまり始めていた。


 この様子を隣で見ていたロルトはウィルに心配そうに声をかける。


「大丈夫か?ウィル この部屋に入ってきてからお前の様子がなんか変だ。 このままでは、もうすぐ対象が俺らを見つけるぞ!」


「なあ ロルト お前はどんな作戦を今思いついている?」


「正直言って皆無だ。第一陣を一人でほぼ全滅した奴を俺ら二人で屠ることのできる作戦などこの部屋に来たからっといって思いつく訳がない!」


「俺も一緒だ。そこでお前に聞きたい。俺らは治安維持兵として勝てない奴と戦うか?それとも一人の人間として生き続けることを選ぶか?」


「戦う方を選ぶだろ普通は。例え逃げられたとしても後で俺らが治安維持兵にやられるだけだ。」


「普通かどうかは聞いてない! 生きたいかここで死にたいかだ!」


「生きたいに決まってる!! こんなこき使わされて死ねるか!!」


「俺もだ。そこで考えたんだが、対象を抹殺するという行為は治安維持兵としての選択だ。俺はこれを放棄することにする!」


「何!? じゃあ逃げるのか? どの道死ぬのが遅くなるだけであろうに!」


「それを踏まえてだ!! ここで逃げたら対象と治安維持兵の両方を敵に回すことになる。 それは最悪の状況だ。しかし、ここで対象ーーーいや彼女を仲間にできたら? もう少し面白い人生が待っているんじゃないのか?」


「っ!!?? いくら対象を仲間にしてもいずれは政府の手によって殺されるぞ! それでもいいのか?」


「固定概念を壊せ!! ロルト!! 今俺らの前には強大な力をもった者がいる。 そしてそれは政府が特殊部隊を送ってくるような者だ。ならば俺らと協力して仲間をさらに増やせれば........政府すらも倒せるかもしれない」


 この言葉を聞き終わったロルトは不敵な笑みを浮かべ、右手を上にあげた。


「ん? 何してんの?」


「いや 何でもない ウィル 俺は一人のお前の友として、全面的にその考えに乗ることにする!!! だがお前は奴を俺らの仲間にできると思ってるのか? あいつは精神異常者系の悪魔だぞ」


「悪魔とは呼ばれているが、彼女は人間だ。そして人間にはかならず弱みがある。その弱みを元に同じ目的を提示すれば仲間になる可能性は高いと思われるが?」


「はあ お前はさっき俺の幻術が全く効いていなかったのを見ていないのか? 奴に弱みはない。」


「お前の幻術と、この部屋に来たことにより、大体彼女の弱みは把握済みだ。」


「!? 任せていいのか?」


「ああ 無理なら その時はその時だ」


「っふ ああ そうだな」







 ジーンは二人の道具ーーーつまり二人の治安維持兵を殺したあと、残りの兵が自分が住んでいる屋敷に逃げ去った姿を見かけた。


「あの 二人は おもしろそーだから いっか ちょうど 私の アトリエ も 見つけてくれそう だし!」


 ジーンはゆっくりと屋敷に戻る。今日はいつも以上に作品を作れたので機嫌が良かった。自分のアトリエを先ほどの二人の兵がじっくり観察する時間を確保してから、ジーンは部屋にスッキプして入っていく。


「ねえ君達!! 私のアトリエ みた !???」


「見させてもらったよ。 実にすばらしい」


 ジーンは驚いた。 正確には、最近はどんなに他人に話しかけても無視されて避けられ続けていたため、久しぶりに話しかけた相手から返答が返って来た上に褒められたという事実に対して泣いていた自分に驚いた。


「......ホントに? 嬉しい!!」


「ただ.....全てではない。このすばらしい作品は拾いもので、残りは君が真似して作ろうとした贋作だろ?」


「はあ!? ナッ!! 何故だっあああ!!?? ガッ 贋作などじゃないい!! わたしを否定するのか!! <沈ーーー」


「待て!! 魔法で簡単に俺らを殺すこともできるだろうが、少し待て!! 偉大な芸術家とは批判の声にも寛大に耳を貸すものだぞ?」


「なっ!!? そうなのか ?」


「ああ そうだ 君は拾って来た素晴らしい作品を見て感動....もしくは居場所...を見つけたから、自分でも魔法で作品を作ろうとしたのだろ?」


「そう...」


「ふう なら 俺が作品を判断できた理由もわかるはず。 君は作品を真似て居場所を作ろうとした。しかしその素晴らしい作品は何かを真似ようとしたのでなく、感動した何かを表現しようして作ろうとしたのだろ? ならば完成した作品がもたらす俺と君のような『人間』が感じるものが同じの訳ないでしょ おそらく君も自分の作品に満足しなかった経験もあるはずだ」


 ジーンは自分の心が作品を廃棄処理場で初めて見たときよりも、今この相手によって揺さぶられていることに気づいた。まず自分のことを『人間』と言ってくれたこと。そして今ままで作品を創作してきた中でひっかかっていたモヤモヤを教えてくれたこと。ジーンは何もかも看破されてしまったように感じた。


「そう そう!! そうだけど あんた 何者?? 私に何をしてほしいの? 今まで私 と話してくれた 人間 なんて いなかった」


「作品は人の感情に訴えるものだ。君と俺たちならきっと今までにない最高の作品を完成させられると感じたんだ!!この国の人は今、政府により感情が抑制されている!! ならば俺たちでそんな人の感情を変えさせらる作品『国』というものを作り出そうじゃないか!! 俺は単なる兵士で才能もない。 だけど君ほどの者の協力があればこの駄作であるデヴォルカス連邦共和国を偉大な作品に変えられると思う!! 協力してくれないか??」


 ジーンの中の作品に対する固定観念が壊れ、自分の中に設定されていたありとあらゆる枠組みが大きくなっていくのを感じる。今までこんな人間はいたのだろか? もしかしたらこの機を逃したら自分は一生贋作しか生み出せなくなるのではという気がしてきた。ただ、


「最高かも!!! だけどあんた を 信用できるか 私には わからない 『人間』 は信用できない」


「君も俺と同じ人間だろ!! まあそう言うと思った。」


 と男が発すると腕輪型のマジックアイテムを二つ腰から取り出して、その内の片方をジーンに渡して来た。


「このマジックアイテムは装着した者の情報を交換する事ができる。自分が相手に伝えたいけど、言葉では伝えられない情報をこのマジックアイテムを使えば伝えることが可能だ。これを使って俺の自己紹介をする。だから君も自己紹介をしてくれ!! ただ念じるだけでいい」


 渡された物が本当にそんなマジックアイテムなのか信用はできなかったが、好奇心の方が強かったためジーンは装着した。


 そして自分の記憶を伝えることを念じ、相手からの情報が入ってくることを許可する。





 この瞬間二人の記憶が<接続(コネクト)>した。




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