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第十二話 「二人の侵入者」

 ライヴバー『ソニッカ』の裏口に回ったウィルは早速、停めてあった予備馬車を発見すると客車部分を馬から切り離し、馬に跨った。


 クロエが捕まっているギャング組織『ゼイダース』の拠点を目指して、


「さあ 出発よっ!」


「!?」


 突然後ろから先ほど聞いたばかりの声がしたので、驚きを隠せずに振り向くとそこには、


 サキュバスのアリアがいた。


「おい! 何してんだ?」


「何って クロエちゃんを助けにいくんでしょ? 私も行くわよ」


「危険だって忠告したのはそっちの方だろ 危ないぞ それに関係ないじゃないか」


「通りすがりの女の子を助けるために命かけるんでしょ? なら私のことも守ってね」


「....」


「ちなみに私にも関係あるわ 本来なら私が行くはずだったんだから さあグズグズしてないで行くわよ!」


「そうだったのかよ....」


 ウィルはこれ以上言っても聞く耳を持ちそうにないアリアを説得することを諦め、渋々アリアを乗せたまま拠点までの行き方を覚えているであろう馬を走らせた。


『ああ 我が騎士よ 私を闇から盗み出して ああ 我が騎士よ 私をあなーーー』


「突然歌い出さないでくれない? 今からギャングの拠点に行くんだからさ 目立つだろ」


「そう? 今から少女を馬に乗って助けにいくのよ 歌があったほうが盛り上がるじゃない!」


「普通拠点からの救助だったら隠密に動くんだよ アリアのことまで考えてたらクロエを救助できない....」


「あら! 嬉しい でも心配しないで 私はサキュバスよ 祖先様の能力を引き継いでいるから足手まといになるような女ではないわ」


「他種族交配で優秀な血筋になっていくってさっき言ってたな....それでどんなことができるんだ?」


「そうね 歌なら南部の暖かな気候によって大らかな性格になったリポ族達の舞踊から北部のシャキ族達の伝統民謡までこなせるわよ」


「歌は今回別だ。もっとさ....何というか....」


「殺しのスキル?」


「ああ」


「それなら私は暗殺能力が高いわ! 特に男を翻弄して寝た隙にグサッとねっ」


「....怖っ」


「ちょっと!引かないでよ 男全員を殺ってきたわけじゃないわよ あなたは と・く・べ・つ!」


「より怖いわ!」


 馬上で二人が口論していると、馬がある大きな邸宅付近で速度を緩めた。


「ここね」


 二人は顔を見合わし、頷き合う。


 『ゼイダース』の拠点に到着したのだ。地下街の商店同様に盛り上げた土を箱のような形にした建物であるのだが、大きさが桁違いだった。地下街の1ブロックほどはある敷地には複数の建物の他に庭やプールが設置されており、周りを囲う防御壁が侵入者を防いでいるようだ。


「私が来て正解だったんじゃない?一人でこの壁を越えるのは難しいわよ」


「....潜れば余裕だ アリアならその翼で飛び越えるのか?」


「潜れるの!? そうね確かに私なら飛んで壁を越えれるけど....問題なのはその後よ」


「誰にも見つからずにターゲットを確保して、脱出か.... まあ難しいわな」


「それで提案なんだけど.....」


 二人はある作戦を立てた。








 ーーー『ゼイダース』地下拠点。


 髪型がアフロなので仲間からはアフロというあだ名で呼ばれている『ゼイダース』の構成員、ビャック。彼、アフロはもはや同じ配置の時間が多すぎて相棒となってしまったちょび髭の男、クラッサと共に正門の警備についていた。


 ギャングの拠点の警備と言っても難しい仕事じゃない。アフロはそう思っていた。


 何しろ地下に拠点を作ったため敵対ギャングが襲ってくることが全くないのだ。地下街は四大ギャングの縄張り外であり、多数の亜人がいることから今まで誰も関わろうとはしていなかった。しかし、それを利用した『ゼイダース』はそのお陰で他ギャングと抗争する機会が少ない。下っ端のアフロがこの組織を選んだ理由でもある。


 そして、いつも通り退屈な警備の仕事を現在も遂行中だ。


「なあアフロ、さすがに交代はあると言ってもさ 一日中壁見てんの辛いわ」


「あのなクラッサ 退屈は正義なんだよ 地上で殺し合いするよりはマシだろ?」


「最初はそう思ってたさ だけどよ ずっとこの白か黄色なのかもよく分かんねえ壁を見つめる仕事ってどうなの? 何もない仕事が一番辛いって思うんだが.... だったら男らしく戦いたいぜ」


「いやでも今日は正門を開けるという大役を俺らこなしたじゃないか」


「大役ねえ.... そう言えばケンタウロスのギプロスはどうした? ボスの お気に だろ?」


「ああギプロスね 隣の市のホンブル市闘技大会に参加するらしいぜ」


「なんだ それ? ソルジャーゲーム以外にもあったのか」


「最近出来たらしいぞ」


「へー 行ってみたい気がーーー」


 ドンドン!


 二人が暇つぶしに喋っていると正門を外からノックする音が聞こえた。


「なあ アフロ? この時間誰か来る予定とかあったか?」


「ないな さっきのライブバーからの馬車だけだ」


「....」


「....」


「おい ついに来たな! 侵入者が」


「早まるなよ ボスの気が変わって新しい来客を呼んだかもしれないぞ」


「ああ....そっちの方があるな」


 少しテンションを落とし、ガッカリしながらもクラッサが正門に備え付けられた小さな小窓を開けると、外に馬を連れた二人の人の姿が見えた。


「どちら様?」


「ライブバー『ソニッカ』からのお届け物です。私の主人がそちらに追加でお渡ししたい上物があるとのことなのでお渡しに来ました」


「その予定はないぞ」


「申し訳ございません。急なものでして連絡が届いてないかも知れませんが、あなた方のボス様にサプライズを届けることになっておりまして」


「....うーん 確かにボスは珍しいものが好きだからな... そのサプライズは人間か?」


「サキュバスでございます」


「おお サキュバスか! 先ほど来たのが人間だったから不安だったが、それなら筋が通るな 入れ!」


 クラッサとアフロが重厚な両開き扉を開けると、


 ライブバーの従者らしき者が引き連れてきたサキュバスは、まるで後光がかかったように美しい姿をしていた。


 その姿に見とれたクラッサが、


「俺が案内する。アフロよ 警備の方頼んだぞ!」


 アフロは何か言いたげの様子だが、誰かが警備をしなければならないので何も言えずにいた。







 こうしてウィルとアリアは第一関門を難なくクリアしたのだった。




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