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第四話 「悪魔討伐作戦」

「出撃開始!!!」


 ゴエル隊長の掛け声と共に総勢二十名に及ぶ、第一陣部隊の半数が対象の悪魔が住んでいると報告のあった今では廃墟となった屋敷の周りを囲うように移動して行った。この様子を残りの隊員と確認したロルトは魔法を唱える。


「幻術系攻撃魔法<汝が求める者>」


 一般の兵士では行使できる攻撃魔法の種類が政府により限られているため、あまりレパートリーがない。それゆえにシンプルで攻撃力が高い<火系>、<水系>、<土系>、<雷系>の魔法を習得する者が多いが、貴族向け商人の息子で余裕のあるロルトは脳筋兵士の(レール)を選ばずに<幻術系>の魔法を選択し、己の力でさらなる高みへと魔法技術を磨いたためかなりの需要がある貴重な兵士になった。そんなロルトが今回の悪魔討伐作戦の先陣を切る攻撃として選んだのが<汝が求める者>だ。 

 この魔法は対象者にとって心の中でもっとも会いたい人や親しい人が目の前に現れるように見える幻術だ。そして対象が接触しようとすると、対象者もろとも爆発する。

 ロルトは相手が精神異常者系の悪魔という情報が入っていたので、精神攻撃と肉体への攻撃を与える魔法を選択したのだ。精神自体を削れればその後の悪魔の抵抗が弱まると判断したためである。


 そして、廃墟となった屋敷の玄関口と思わしき扉が少しずつゆっくりと開く音が聞こえた。この音はその場にいた全ての者の耳まで届いた。しばらくすると開かれた扉からフラフラと歩いてくる女の姿が見えた。


「あと少しで対象と幻術が接触します。」


 ロルトがゴエル隊長に囁く。


 しかし、ロルトが報告してから女は今だにこちら側に向かって歩いてくる様子だ。


「おい! ロルトいつになったら爆発するんだ?」


「ーーーーーー。」


 ロルトが返答しない。というか呆気にとられている様子だった。


「答えろ!! いつ爆破する!?」


 ゴエル隊長が問いただすと、我に帰ったロルトがやっと返答した。


「隊長。 対象が幻術をすり抜けました。 .....つまり対象への精神攻撃失敗しました!!」


 ロルトの幻術であれば如何なる対象でも、対象の心に潜む弱みとなる人物によって攻撃することが可能なのだが、今回の悪魔の場合は


「対象に弱みとなる人物が存在しないだと!?」


 もはや人間の常識は通用しないようだった。


「クソ 失敗か! まあいい、このまま続行する!! 第二フェーズ実行せよ!!」


 掛け声と伴に周りに配置された兵士が魔法を一斉に唱え始めた。


「「「「「土系攻撃魔法<沼地>」」」」」


 すると対象の足元の地面が歪み始め、波を打つように振動し始める。そして沼地化した地面に対象の足が少しずつ沈んで行く。


「気持ちわるいーーーーーーーーーーーー!!! あああああああああああああああああああああ」


 今まで静かだった対象はいきなり絶叫し始めた。


「攻撃が効いているようだ。第三フェーズ実行せよ!!」


 とゴエル隊長が叫んだと同時に、土系攻撃魔法<沼地>によって動かなかった対象だったが、突如発動させた対象の魔法により事態が一変した。


「<睡蓮>」


 対象がそう呟くと、地面から睡蓮の葉のような円形状の物体が幾つも浮かび上がってきた。そして偶然的にその睡蓮の葉に立っていた兵士が次々に体の水分を奪い取られ、一瞬で干からび、倒れて行く。


 運のいい事に睡蓮の被害に遭わなかったウィルはこの様子を観察して魔法の情報を得ようとしていた。元々ウィル自身普段の一般市民として使用できる魔法がどれも同じで平凡と感じていたため、目の前の惨劇を見た今でも恐怖と共に好奇心から目を皿のようにして見入ってしまったのだ。そしてウィルはこの魔法の特性について一つ気づいた。


「隊長!! あの魔法が発動して睡蓮の葉が地面から出現する前に円形状の緑色のモヤが現れます!それが見えたらなんとか回避して下さい!!」


「...!!? 了解した!! 皆聞いたな!まだ生きている者は地面のモヤに注意しながら攻撃を続行せよ!!」


「おもしろい!! いい目を持った逸材がいるね!! じゃ私の芸術もっと見て欲しいな! でも周りの道具達邪魔だなーーー。 <従者の塔>」


 今度は対象に接近し、ゴエル隊長の指示により攻撃を放とうとした兵たちが上方に吹き飛ぶ。落下の衝撃により飛ばされた兵士達は無残にも即死した。


 残った兵士はゴエル隊長、マックス、ウィル、ロルトの四人のみになっていた。


「こっ 攻撃せよ!!!」


「しかし このままでは」


「我々は対象を倒す以外に帰還することはできない!! 攻撃!!」


「「火系攻撃魔法<火炎放射>」」


「<従者の塔>」


 ゴエル隊長とマックスの放った攻撃は先ほど吹き飛ばされた兵士たちの壁によって防がれ、対象には届かなかった。


「お前ら!!何故攻撃しなかった!!?」


 今更理由を聞かれても困るのだが、対象が強すぎるのだから正面攻撃という方法を変えるべきだったとは言えず、ウィルとロルトが黙ったまま、次の行動へと動き出そうとすると、


「命令違反だぞ!! この状況でーーー グホッ!!??」


「<沈黙(サイレンス)>」


 突如対象がいる方から飛んできた球状の液体がゴエル隊長とマックスの顔に纏わり付く。その球状の液体は真珠のような輝きを放っていた。ーーーーそして、その真珠の輝きのなかで二人の生者の命が消えた。


 ウィルとロルトは最後まで彼らを見守らずに対象の気がそれている間、廃墟となった屋敷へと突撃していた。対象の圧倒的な力を前にしても逃れることは治安維持兵として許されないため一筋の希望、つまり対象の情報が詰まっているであろう屋敷に潜入したのだ。


 屋敷の中を二人は駆ける。


「どうするよ!? すぐに追いつかれるぞ!!」


「とりあえずあの部屋に入るぞ!」




 部屋に入るとそこには二人の若者が今まで見たことのない光景が広がっていた。

 


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