第四話 「見えざる協力」
コルノン市、中央行政区画、貴族会合室。
今ここに壁外の四大ギャングを抱えている貴族達が集められていた。
『ヴィリカス』を束ねる代表貴族、キーシェス・ラン・ファスカス。
『ガルゴス』を束ねる代表貴族、ガルデリアン・ズース・マイカ。
『ロニロス』を束ねる代表貴族、アンジェラ・クス・レルン。
『ゼイダース』を束ねる代表貴族、ジーク・K・ニース。
そして、彼らの周りには取り巻きの貴族達が付いている。貴族の間にしか現在出回っていないとされるアルコールが入った酒、『シィンプッス』。それを曇りのない透き通ったグラスに注ぎ、出会う者と毎回乾杯をしては取り巻き貴族を連れて歩き回っているのだ。
毎度のことだが、代表貴族同士が出会うと両者の取り巻き貴族達が騒ぎ始め、いらぬ自慢話大会が始まり、最後に代表貴族同士の世間話が行われる。それは今日も例外ではなく。
「これはこれは『ロニロス』を束ねるアンジェラ様ではござんらか そちらの鎧騎士さんはお元気かね?」
「キーシェス様お久しぶりですわね。 ええ 私の鎧騎士、パーチェスはとても元気よ。 最近はあなた様のところで暴れまわっていたようだけど、大丈夫でしたか? ご迷惑をおかけしました。やり過ぎとは言ってあるのですがね.... 全く...困ったわ」
「ええ 気にしないでください。アンジェラ様のようなお美しくお優しい方の元で働けるのですから同性と言えど多少タガが外れてしまうのは仕方がないというもの」
「相変わらず、お口がお上手ですわキーシェス様。ところで今回の招集はいつもより時期が早いように思われませんか?」
「それは私も同じように思っておりました。まだ間引きまでは時間があったはず.... これは緊急なのですかね」
「まあ その線が濃厚ですわね。お互いにこれから忙しくなりそうで.....その時はまたよろしくお願いしますね」
「ハハハ。そうですな。こちらこそよろしくお願いしたい」
二人が片手で軽く握手を交わしたのとほぼ同時にこの会の進行をする壇上の者がこの場にいる全員に聞こえるように「壇上前までお越しください。準備が整え終わりました。」というと律儀に貴族達が集まりだした。
そして、司会の挨拶を軽く済まし、これから呼ぶ人物を紹介しだす。
「では、ご登場いただきましょう。デヴォルカス軍諜報部総指揮官、ジャン・デ・ゴン・ボリス司令でございます」
貴族達の拍手とともに貴族会合室の重い両扉が開かれると、ジャン司令が入ってきた。
そして、集まった貴族達を見渡し、早速貴族達を招集した旨を話し始める。
「面倒な挨拶は結構。貴族の皆様、この度急な招集にも関わらず集まってくれたことに感謝をしたい。早速だが、集まってもらったのは他でもない『ソルジャーゲーム』に関してだ」
相変わらずのジャン司令の淡白な雰囲気を堪能した貴族達は『ソルジャーゲーム』と聞き、予想はしていたがわずかな騒めきが起こった。
「その反応も最もだろう。本来ならば『ソルジャーゲーム』の開催まではまだ時間がある。しかし、今回は定年よりも開催を早めた。これはベイジョン元帥殿のご意向である。これに反論は許さない。」
先ほどよりも騒めきが大きくなったがジャン司令は気にせず続ける。
「今回の『ソルジャーゲーム』は時期が早いが、規模を通常の二倍に拡大するそうだ。故に急ピッチで『ゾンビ』の確保を要求する。規模に合わせて数も二倍だ。」
騒めきが響めきと変わる。至る所で「天国草が...」とか「廃人を...」などと聞こえてくる。
「今回は諸君にいつも以上に頑張ってもらう必要がある。それは今回の『ソルジャーゲーム』が史上最大にして最後のものとなるからだ。何か質問ある者はいるか?」
困惑している貴族達の中から手を挙げた者がいた。ガルデリアンだ。ジャン司令が頷き、司会がガルデリアンに質問を許可する。
「ジャン司令。『ソルジャーゲーム』が最後ということであれば、我々が束ねたギャング組織は今回で用済みということになるのでしょうか?」
「『ゾンビ』を作るという面では用済みだ」
先ほどより貴族達に不安の表情が表れる。
「この『ソルジャーゲーム』が終わった後、ベイジョン元帥殿は国、人類に革命を起こす準備をされている。もし今回の『ソルジャーゲーム』に大きく貢献してくれれば諸君らの今後は確実に保証されると聞いている。よって大量の『ゾンビ』を確保した者から順に優遇されるだろう。検討を祈る。詳細については後日伝令が来る。それに従ってくれ。以上だ」
ジャン司令はそれだけ言うと貴族達の反応を見ずに、貴族会合室を後にした。
今だ困惑している貴族達であったが、代表貴族達はすぐさま事の重大さを認識し、集まりだす。
「代表貴族の皆様、これは緊急事態だ。このまま我々同士争っていても廃人確保には無駄足を取られますぞ! ここは腹芸をせずに協力し合う時だと思うのだがどうですかな?」
キーシェスが他の三人の代表貴族に伝えると、反応は思ったよりも早く
「仕方がありません。協力しましょう」
「誰かが裏切る可能性があるが.... 裏切りをした場合はしてない組織が組んで対処するという形であれば協力をしましょう」
「それはいい考えですな。仮にここにいる者全員が裏切った場合。共倒れになるのは目に見えていますからな」
代表貴族達は己の保身にかけ、協力を誓った。




