91.氷華の七賢者・テトラ
『七賢者が出た』
そんな重大な事を聞かされて、ルミネに導かれ花の国を駆ける。花の国の入口、門に辿り着いた俺達が見たのは…………
「…………全員揃い踏みですか。まさかあなた達が居るとは思いませんでしたよ、便利屋」
氷の槍を持った、ロングヘアーの女だった。
「あっ、レイさん!待ってたでち!」
「レイ!遅いわよ!」
「そうですよレイさん!どこ行ってたんですか!?」
「悪い、ちょっと野暮用で!それで、七賢者ってこいつか!?」
先に到着していたらしいリヴィとライカに叱責されながら、状況を確認する。
七賢者。何やら『憎しみを集める』との目的の元、各地で悪事を働く奴ら。今まで三人の七賢者と遭遇してきたから、これで四人目…………!
「そうです。私はテトラ、『氷華』の七賢者。偵察用のアイスベアが倒されたから直接出向いてみれば…………まさかあなた達だったとは」
「アイスベア…………レイくんが倒したあいつか!」
森にそぐわないモンスターだと思っていたら、まさか七賢者が放ったものだったとは。あの時点で、おかしいと気付いて長老に報告するべきだったか…………!
「私は氷華の七賢者…………花の国を侵略するに相応しい肩書きだとは思いませんか?」
「し、侵略でち!?」
七賢者…………テトラのその言葉に、フリルが驚きの声を上げる。正面から堂々と名乗ってやってきたって事は、やっぱりそれが目的か…………!バカンスは一時中断だけど、仕方ない!
「ええ。手始めにこの国を氷漬けにして、世界中の植物に大被害を…………そうすれば、多くの人が悲しみ、憎しみ…………そういった負の感情を抱くでしょう。私はそれを頂きに来たのです」
「な、なんて事を…………!」
フリルの握られた拳に、力が込められて行くのが傍から見ても分かる。
「…………前から思ってたのだけど、その憎しみを集めてどうするつもりなのかしら」
「…………機密です。せいぜい自分の頭で考えてみる事ですね」
どうやら、真の目的をしゃべる気は一切ないようで。ま、そりゃそうか…………力ずくで聞き出すしか、ないか!
…………でも、どうする?今までのように助っ人がいる訳でも、作戦を練る時間がある訳でもない。しかも、酢豚の時の様な小物臭のしないいかにも強そうな相手だ。ネタ特技集団の俺達で、対抗できるのか…………?
「さぁ、茶番はこの辺にして。この門から順に氷漬けにしてあげま…………」
「じゃんけんしませんか!?」
「…………死にたいんですか、貴女」
「ライカちゃん!?」
ら、ライカ…………!?
いつの間にかテトラの目の前に移動していたライカが、そんな馬鹿な事を…………!?
いや、でも待て!この手口、まさか…………
「嫌って言われるかもしれないけど、なんだかじゃんけんしてみたくて…………ダメですか?」
「そんなの、嫌に決まって…………」
「かかりましたね、おマヌケさんっ!!」
「っ!?」
ドカァァァン!!
テトラが答え終わる前に、唐突な爆発があいつを中心として起こった!
やっぱり、昨日のプリン争奪戦の時と同じ手口だ!
「フラグ爆弾ね!ナイスよ、ライカ!」
「不意は突きました!あとは皆さん、畳み掛けちゃってくださ~い!」
こちらを向きニヤリと微笑んだライカが、総攻撃の合図を出す!
「レイ!スクラップの砲台持ってきたから、憑依しちゃいなさい!」
「サンキュー、リヴィ!『憑依』っ!!」
いつものうさぎのぬいぐるみの裂け目から飛び出してきた砲台に憑依を使う!身体に伝わるずっしりと重い鉄の感覚…………憑依成功だ!
「よっしゃ、撃つぞー!」
「私もいくわよ!とらっかちゃん、サモン!」
『あいあいさー!』
「私だって!『プロミネンスナックル』ッ!!」
俺が砲撃、リヴィがとらっかでの攻撃、その後にルミネの拳を叩き込む!
「くっ…………伊達に他の七賢者達と渡り合って来たわけじゃありませんね…………!」
「っ…………そこそこ効いてるみたいだけど、相手はまだ余裕はあるみたいよ!気をつけて!」
「思わぬ一撃を喰らってしまってダメージが大きいので…………ここは撤退とします、また明日来ますよ!首を洗って待っていてくださいね!」
「あっ、ちょっ!?待て、おい!」
「『テレポート』!」
そう言い残すと、テトラは影も残さず消え去った…………。
「…………消えちゃったね」
「…………まぁ、俺らみたいなポンコツでも追い払えただけマシだろ。対策を考える時間もある事だし。ていうかライカお前凄いな、見直したぞ」
今回の状況を対処出来たのは、間違いなくライカの機転のおかげだ。いっつもバカみたいな事しかしないと思ってたけど、成長してるんだなぁ…………。
「えっへへー、褒めるがいいです!頭をなでなでしてくれても構わないんですよ!」
「分かったよ、ほれ」
「にへへへー」
「…………羨ましい…………」
不本意ながら、ではなく本当に感謝しているので要求通り頭をなでる。緩んだ表情は普通に可愛い。…………いつもこうならいいのに、台無しにするからなぁ。
「皆さん、本当にありがとうございまちた!あのままだと花の国が侵略されてしまう所でちた…………自分の力の無さが不甲斐ないでち…………」
「フリルは悪くないわよ、誰だって得手不得手はあるもの。でも、明日も来るって言ってたからまだ油断は出来ないわよ」
「そうでちね…………とりあえず、長老に報告でち!」
~長老の部屋~
「先程見回りの精から連絡が入ったよ、概ねの事情は把握済みさ」
部屋に入ってそうそう、ボビンはそんな事を言う。
「七賢者、という奴が攻めてきたのだろう?」
「はい、そうなんでち…………花の国を氷漬けにするとかなんとか…………」
「心配しなくても大丈夫だよフリルくん。今日は騒ぎを聞きつけるのが遅くて参戦出来なかったが、明日は私も撃退に参加するからね♪」
「ちょ、長老がでちか…………そうでちか、それは頼もしいんでちけど…………少しばかり気の毒な気もするでち」
そう言うフリルの顔は、どこか困った様子で。…………この人、キレたら怖いだろうからなぁ…………この前も地雷を踏んだフリルを極刑に処そうとしてたし。
「ボビンさん、強いんですか?」
「あぁ。そのテトラとか言う女には容赦なく『汝…………』を喰らわせてやろうと思うよ。マジ汝♪」
そんなマジ卍みたいな感じで極刑を表さなくても…………。確かそれって、『汝の腸を引きちぎり地獄の業火で焼き上げ吊し上げた後にその肉を細かく砕き蘇生術をかけながら生きたまま苦しみを味あわせその後も…………』だったよな?
「ボビン、ちょっといいかしら」
「何かね?あと、ボビンお姉ちゃんって呼んでくれても構わないんのだよ♪」
「じゃあボビン御局えちゃん、いいかしら」
「なんか多くないかな!?」
こいつの恐ろしい所は、再三繰り返すようにこの発言に一切の悪意がない所だな…………素で間違えてるよ、これ。
「私達もテトラ討伐に協力したいのだけど」
「おぉ!それは有難い!他の子達も大丈夫なのかい?」
「OKです!七賢者とはいっぱいやり合って来ましたからね!今回も勝ってやりますよ!」
「わたしも大丈夫ですよ。人々の希望を奪うやつなんか、コテンパンにしてあげます」
「俺もOKだ。七賢者討伐、やってやろうじゃん」
「みんな…………ありがとう!」
俺達の発言にボビンが笑顔を浮かべる。この笑顔を守るためにも、頑張らなきゃだな…………。
「それじゃあ、明日の戦いに備えてゆっくり休んでくれたまえ!」
こうして、俺達の長い一日はようやく終わるのだった。




