82.ライカの■■
「こっから先は…………自称でしかない多分の名・B・探偵!だけど、自称だからこそ!名・B・探偵として、本物の名探偵になるかもしれないライカちゃんが貴女の相手ですっ!!」
消耗した所に攻撃を打ち込まれそうになったその瞬間、ライカはそう叫んだ。
「へぇ…………探偵さんね?ボクに立ち向かうつもりかな?」
「へっ、じゃないでこう発言するチキンじゃないですよ私は」
そう啖呵を切るライカの背中は頼もし…………
『あちゃー、足ガクガクになっちゃってるよ』
…………くは、なかった。
「その震えてる足は何かな?」
「そ、それは…………えと、小鹿の構えです!」
…………はぁ、全く。その言い訳はなんか違うぞ、ライカ…………。
大方、自分が活躍出来てない事を気に病んだ末に前に出たんだろ?そんでもって、意外とやってみたら怖くてビビってる…………そんな所だろう。死んだ時以来の付き合いだから、なんとなく分かる。
あいつが震えてるなら…………鼓舞してあげるのも、仲間の務めってやつだよな。
「ライカ!」
「ななな、なんですか!?」
「お前の得意な事って、何だか自分で理解してるか?」
「…………!そ、それって」
「あぁ、そういう事だ。ぶちかましてやれ」
俺がニヤリと笑うと、ライカは完全に理解したのか悪い笑みを返しながら。
「そうですね!あれなら、セレナに対抗出来る気がします!それじゃ…………ぶちかましてやりますよ!!」
ライカは魔法の発動準備なのか、光に包まれた!
「ライカちゃんの得意な事…………?…………ってそれ、レイくん、まさか!?」
「あぁ、多分そのまさかで合ってるぞ」
「そういう事ね。ライカ、やっちゃいなさい」
便利屋メンバーはみんな、それどころか街のみんなもほぼ知ってるライカの特技。最大にして、唯一に近いアイデンティティ。
コルネさんもそれを理解したのか、どこか呆れた表情をしながらもライカを見守る眼差しを見せる。
「っ!?…………なんか、膨大な魔力を感じるんだけど、何しようとしてるのさキミは」
「そんなの決まってるです!これまで私がやってきた必殺技!七賢者も厄災も葬ってきたあの技!探偵として、活かしてやりますよ!!」
そう叫ぶと、ライカはより一層激しい光に包まれ…………!
【ボガァァァァァァァン!!】
「「「「「あっ」」」」」
自らが、爆ぜた。
………………えぇ…………?
「ゲホッ、ゴホッ…………ゴホン!え、演出です演出!私はこの通り、しっかり無事です!それどころか、二つの力を組み合わせて使ってみたら思いの外相性が良かったので、普段の私よりパワーアップしましたよ!」
爆煙の中から姿を現したライカは…………
「なんかお前…………衣装まで変わってない!?」
普段とは違う、肩出しでフリフリの付いた薄いベージュの衣装と探偵帽を身にまとい、ステッキを持っていた…………!?
「ら、ライカちゃんがなんかすごく変化してない!?あれ、どういう事!?」
「あれは…………おそらく、『覚醒』ではないでしょうか!?」
「『覚醒』って何かしら」
「戦闘などで経験を積んでいくと、稀に劇的なパワーアップを遂げることがあるんです!何か刺激やきっかけがあった時に多い現象と言われています!」
「ポ〇モンみたいね」
「リヴィさん!?」
『つまり、今のあの子はちょーパワーアップしてるってこと!?だったらいけそうじゃん!やったれ、やったれー!』
覚醒…………!それなら、もしかしたら勝てる!?
「ふむふむ…………なんとなく会得した力は把握しました!これなら、いける気がします!」
「…………確かにパワーアップしたみたいだけど、それがどうしたのさ。ボクの力の前にねじ伏せてあげるよ」
エネルギーを充填するセレナに対し、ライカはステッキを突きつける!
「予言します!貴女は十秒後にエネルギー充填が終了します!!」
「は?…………確かにその通りだけどさ、それがどーしたの」
ライカはそれが分かっても、逃げも隠れもせずセレナの前に立っている…………!?直撃くらうぞ、お前!?
「ライカ!だったら、逃げた方がいいわよ!」
「大丈夫ですよリヴィりん。…………そろそろですね。3、2、1…………」
「エネルギー充填かんりょ…………っ!?」
【ボガァァァァァァァン!!】
「っ!?な、何が起こったの!?」
「あれは…………爆発みたいよ、ルミネ」
「爆発!?こんなにタイミング良く!?ライカちゃん何にもしてなかったよ?」
確かに妙だ、エネルギー充填が完了すると同時にセレナは爆風に包まれた…………一体、どういうカラクリで!?
「ふっふっふ…………やっぱり、そうみたいです!」
「…………キミは一体どんな能力を会得したっていうの…………?」
「聞きたいですか、セレナ!…………ならば、教えてあげましょう!私が身に付けた能力、それは…………」
「フラグを爆弾化する能力ですっ!!」
フラグを、爆弾に…………!?
「ライカ、詳しい説明お願いしてもいいかしら」
「…………探偵とは、少ない情報から真実への伏線を洗い出し、暴く職業です。それと私の爆発をくっつけてみたら、まさかのジャストフィット!伏線、フラグを解き明かし犯人を爆破する探偵ライカちゃんの誕生です!」
「なるほど、二割くらい理解したわ」
「してないよね理解」
つまり、相手の動きを予想してその通り動いたから爆発したって事か?…………えっ、それって普通に強くない?
「なるほど、そういう…………。あーもー、厄介だなぁ!」
「おっと!そんなの当たりませんよっ!」
【ボンッ!!】
「っ!そっか、当たらないっていう伏線を自分で張って実行したから爆発したのか、ほんとウザいねそれ!」
「褒め言葉ありがとうございます!起こる事象を座標や場所、時間を正確に予測出来れば出来るほど威力が上がるので、さっきのはほぼ最小の威力ですが、それでも撹乱には十分です!」
当たらない事を予測して躱せば爆発、当たることを予測して自ら当たりに行っても爆発。自分で予測してフラグを貼っておけるのか!そりゃ、すごいわ!
「という訳でリヴィりん、レイさん、みーちゃん!私が注意を引いてる間に体力は回復しましたか!?」
「えぇ、だいぶ疲れは取れたわ」
「しっかり休めたからまた動けるぞ!」
『ばっちり!魔力充填完了したし!レイちん、指示は任せてね♪』
「ちっ…………そっちが狙いだったか」
「へっへーん、です!気づかなかった貴女が悪いのです!あ、ルーちゃんは引き続きコルネさんとヴェルカーさんを守ってくださいね!頼りにしてますよ!」
「任された!ライカちゃん達はあいつをぶっ飛ばしちゃってね!」
ライカがパワーアップした今、負ける気はしない!みんなのコンビネーションで、勝つしかない!
「それじゃ…………いきますよっ!!」
「「「「おー!!」」」」
反撃開始だ!!




