81.ライカの決意
「ライカとレイが捜査している時、私達だってサボってた訳じゃないのよ!新たな力でレイを救ってあげるから、見てなさい!!」
「リヴィちゃん!?…………まさか、あれを!?」
せ れ な さ ま
「そのまさかよ!来て…………私の、友達!」
「っ!?召喚術ですか!?」
「ざっついぐざくとりー!それじゃあ行くわよ!カモン、みーちゃん!」
「あいあいさーっ!!」
「わっ、眩しいですっ!?」
「………………へえ」
じ ぶ ん は
「こう言う使い方だってあるのよ、『死霊術』!」
あ な た に…………
………………?
………………何で俺は、あいつに様なんて付けて呼んで…………?
………………っていうか、これ!?…………まともに思考できるようになってるぞ、俺!?
「…………ふーん、そうきたかぁ」
「よし!作戦成功ね!」
…………俺、やっぱり魅了魔法嫌い。あの他人に溺れていく感覚は一生味わいたくないね…………。
魅了から復帰したばっかりだからか、身体が重い。主に頭と肩の辺りが。でも…………身体はばっちり動くし、問題ないな。
「…………確かに治ったけど、これ…………」
「そうですね、ルミネさん…………。なんと言うか、これ…………」
「私も同じような感覚ですぅ…………。どう反応するのが正しいんでしょうかね、これ…………」
…………?
ルミネとコルネさんとライカの反応がなんか変だ。なんというか、リアクションに困っているような…………?
「…………あっ、皆が反応に困ってるのってそういう事ね。理解したわ」
リヴィは、そう言うとさらに加えて。
「レイ、ちょっと下向いて貰えないかしら」
下…………?別にいいけ……………………は?
……………………。
…………ちょっと自分でもよく分からないから整理するぞ。下を向いた俺の目に映ったのは…………。
たわわに実る二つの果実だったんですが!?
「えっ、俺まさか女になってんの!?」
『そーだよー!』
「うわ喋った!自分の唇が動いてるのに自分が喋ってないって気持ち悪い感覚だな何これ!?」
「ちょっと死霊術でフュージョンして貰ったわ!」
って事はなに、俺って今アンデッドの女の子と合体してるって事か!?
リヴィから投げ渡して貰った鏡を見ると、確かに女だった。金髪のふわっふわした髪、そこそこある胸、背中にちょこんと付いた羽の飾り、そしてピアスに髪飾り。これは…………ギャルだ…………。
『そーいうこと!という訳であいさつだね!うちはミサト!ぴっちぴちのギャルJKリッチだし!よろしくね!』
ちょっと待て、リッチってあのリッチ!?あの魔術師とかが自らアンデッドになったとかいう、アンデッドの王様ともいうあれ!?まじで!?こんなのが!?
「あ、あぁ…………レイだ、よろしく」
「おっけ!レイちんね!うちの事はみーちゃんでいいよ!」
変な渾名を付けられた。
「リヴィちゃん、この子って冥界で知り合った子だよね!?いつの間に召喚出来るようになってたの!?」
「こんな時の為に契約を交わしてたのよ」
「そそ!リヴィ子の、友達のピンチに駆けつけられて良かったし!ルミルミも元気そうで何より!」
冥界に行ってたって聞いて、なんて無駄な事をと思ってたけれど…………。物事って、どう繋がるか分からないものだなぁ…………。
「『男性は魅了される』っていう理の穴を突いて、肉体を女性にする事で逃れる!ナイスですリヴィりん、よく考えましたね!」
「って事は、今こうしてミサトさんとくっついている限りレイさんは大丈夫って事ですか!?」
「そういう事です、コルネさん!」
「ちぇー、よくも余計な事を…………上司に怒られちゃう」
今のセレナを見ても、病的なまでに心を奪われる事はなかった。『理』だっけか?…………しっかり克服できてるみたいだ!
「さぁ…………反撃開始よ!ルミネはコルネとヴェルカーの護衛をお願い!後はセレナを狙うわよ!」
「OK!流れ弾でも何でも殴り飛ばすよ!」
『それじゃ、レイちん!会ったばかりで早速だけど、二人で息を合わせていっちゃお!身体の主導権は今そっちに譲ってるから、お願い!』
「了解!」
「それじゃあ、攻撃開始ですっ!!」
「…………まぁでも、負ける道理はないし?七賢者としてみんなボコってあげるよ」
普段と感覚が違うからやりにくいけど…………その代わりに内側から力が湧き上がってくる感覚がする。これがリッチの魔力か…………!
「ちなみにどういう感じの技が使えるんだ!?」
『えっとー、魔法なら大方使えるかな』
「流石リッチ…………」
『だから、レイちんの好きに動いていいよ!合体するのは初めてだけど、うちが全部受け止めてあげるから!』
何だか言い回しにすごく、ものすごーく引っかかりを覚えるけど…………まぁいいか!
「それじゃあ手始めに…………そりゃっ!」
手に気合いを集中、生成された弾をセレナ目掛けて発射する!
「っ!…………結構やるじゃーん?」
『そうそう上手い上手い!うちそういう感じのが得意だし!そんな感じで行くよーっ!!』
なるほど、勝手が分かった!これならいける!
『ちなみに、背中の羽は魔力で定着させてあるから飛べるよ!使っちゃって!』
「情報ナイス!行くぞぉぉ!」
羽を羽ばたかせ、空へ舞う。月をバックにしたセレナと真正面から向き合った。
「確かにちょっと実力はあるみたいだね…………でも、無駄だよ!ボクの力にひれ伏しちゃえ!」
「ひれ伏すのは貴女よセレナ!支援あげるから頑張るのよ、二人とも!『死霊術』!」
セレナは背後の月からエネルギーを吸収するような素振りを見せ、ビームを四方八方に撃ちまくる!当たったら凄く痛そうだけど、支援も貰ってるこの状況なら!
『へへん、避けきるなんてよゆーだし!』
「なっ…………へぇ?その余裕はいつまで続くかな!」
「やべぇ、こいつ速度の違うエネルギー弾も飛ばしてきてるぞ!」
『置きボール…………ウザイし!レイちん、ここは力を合わせて切り抜けるよ!』
「応ともさ!」
これが弾幕シューティングだったらグレイズを貰えそうな位のギリギリの距離で相手の攻撃を躱す!普段の俺なら絶対に当たっているが、支援含めてパワーは三人分!負ける気がしない!
『うちらのパワー思い知れーっ!!』
「ビームッッ!!」
「痛っ!?…………中々やってくれるじゃん?」
『ナイス、レイちん♪あ、レーザーも出せるよ!』
「レーザーッッ!!」
「その二つに何の違いが!?あぁもう、地味に一撃の威力が大きくて鬱陶しいなぁ!?」
戦況は明らかにこっちの有利!いける…………いけるぞ!
「…………みんな、凄いです」
レイくんとみーちゃんは先陣を切って前線でセレナに攻撃を加えてますし、リヴィりんはそこに死霊術による支援。ルーちゃんはコルネさんとヴェルカーさんへの攻撃を完全にシャットアウト。拳で流れ弾を全部弾き返してます。
…………でも、私は?
…………この事件、ずっと私は何も出来てないです。
犯人を暴きこそしたものの、相手が『結界』持ちだって言うリスクを考慮出来ていなかった。そのせいで、レイさんは洗脳されて壊されかけました…………。
そうなった後も、私は全然解決法なんて考えつかなくて。結局リヴィりんが何とかしてくれたけど、私…………本当に、駄目な子です。探偵失…………
『駄目でも良い。リヴィだって普通の死霊術は使えないポンコツネクロマンサーだし、ルミネだって普通のアルケミストらしい事は出来ないだろ?でも、だからってその職業である事を諦めなきゃいけない訳じゃない。違うか?』
…………っ!
そう、ですね…………さっき言われたばっかりなのに、忘れちゃって…………。私ってばやっぱり駄目天使です。
でも…………それがどうしたって言うんですか!
やりたい事貫き通して、好き放題やって…………それが普段の私です!しおらしさ、クソ喰らえです!
レイさんが教えてくれたから!私は!
「…………まずいわね、これ…………」
「あぁ…………。こっちが押してるようで、実際はまるっきり逆。こっちの攻撃全部読まれてるぞ…………」
『しかもわざと外してきてるし…………まさか、こっちが消耗してきた所を狩るつもり?』
「ふっふっふ、そのまさか!縦横無尽に飛び回って、エネルギー注いで…………さぞさし消耗したことだろうね?それじゃ、チェックメイトだよ」
「レイくん、リヴィちゃん、みーちゃん!最大級の攻撃来るよっ!!」
「はい、それじゃこれでおしま――」
「待つですっ!!」
勇気を振り絞って!
「…………へぇ?」
「こっから先は…………自称でしかない多分の名・B・探偵!だけど、自称だからこそ!名・B・探偵として、本物の名探偵になるかもしれないライカちゃんが貴女の相手ですっ!!」
脅威に立ち向かうんですっ!!




