表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
四章.名・B・探偵、ライカちゃん!
82/110

76.動き出してしまう事態

『悪霊退散悪霊退散!犯人の企み、木っ端微塵に砕いてくれようぞ!はーっはっはっはガガガガピー』

「…………こいつ、大丈夫なのか?」

「わ、わかんない。なんか勝手についてきちゃったんだけど…………」


捜査中に偶然ばったり出会ったルミネとリヴィ。その傍らには、何だかよく分からないガガガガ言ってるロボがいた…………。


「…………名探偵ロボ、でしたっけ」

「そうよ、セレナ。シャーロッテっていうの。この子、ここに来る途中もルミネのスリーサイズを見事推理してみせた切れ者よ。確か上から…………」

「拳骨、肘打ち、踵落としだよ♡」

「いっ!?いたっ!?ひゃうっ!?」


爆弾発言をかましたリヴィに、三連撃(スリーサイズ)が突き刺さる。…………お前でもそんな可愛らしい悲鳴を上げることがあるんだな。総じたらマイナスだけど。



「…………胡散臭いですぅ」

「…………個人的には胡散臭いと思うんだけど、わたしの正確な体型とかぴったり根拠付きで当ててきたし…………腕だけは確かだとは思うんだ。人間としてはどうかと思うけど」

『ロボですし!』


ごもっとも。


「名探偵って往々にして人間性に何があったりしますからねぇ…………。こいつ信用ならないですよ」

「ちょっ、お前それ…………!」


特大級のブーメランを気付かぬまま放ったライカ。自分が駄天使だと認めたか、迷探偵だと認めたか。二つに一つだ。もしくはその両方?


「…………私もそう思います。明確な実績をこの目で見ないとちょっと信用は…………」

『なら実績見せたるわ胸でかねーちゃんあくまでナンバー3!』

「呼び名酷っていうか凄く扱いに困る数字!?『あくまで』って何なんですか!?」

『ノリ!』


…………うん、ライカに賛成。こいつ凄く信用ならないわ。


「まぁまぁ、この子だって多分悪気はないと思うわ。許してあげて」

「やけに甘いなリヴィ」

「うーん…………なんていうか、親近感が湧くのよね。私ってネクロマンサーじゃない?従者的なオーラはなんとなく親しみやすく感じるって言うか、眷属にしたいっていうか…………。そういうのを感じるのよ。この子、従者適正ありね。っていうか誰かに付き従ってない?」

『私は助けたいと思った人を助ける探偵ですよピガガガ』

「そうなのね、頑張って」

『ピガヂュー!』


国民的なネズミのような音を立てながら、自信たっぷりに探偵宣言。…………怒られないかな?


「むぅー……………」

「どうしたんですか、ライカさん?」

「いやー…………ちょっと気になる事を思い出して」

「気になる事?」

「はい。なので…………ギルドに戻りませんか?」

「「またかよ」」


用事は一回で済ませてくれと言う思いが、俺とコルネさんの二人の間で合致した瞬間だった…………。


◆◆◆


「という訳で、とうちゃーく!」

「ギルド、そういえば私達来てなかったわね」

「え、最重要の場所ほっといてどこ調査したんだお前」

「冥界」

「…………えぇ…………?」


何故に冥界に出向いたのだろうか…………?実質的な死者はいなかったはずだよなこの事件…………。聞き間違いかなー…………?


「何があったんですお二人…………?」

「色々あったんだよね…………色々…………あはは」


コルネさんに聞かれそう語るルミネの顔は、明らかに疲れが見えた。お、お疲れ様。


「という訳で、捜査か…………」

『早速捜査スタート!ピッピ、ガガガガ!プシュー!』

「いしを言わせてください!?ちょっ、ちょっと待ってくださいシャーロッテさーん!?」

「…………あいつ、マジでただのポンコツロボットじゃないのか?」

「…………なんとも、言えない…………」


ギルド向かって駆けていく二人を見る(リヴィ以外の)目は、とても微妙なものだった…………。


「元気でいいわね」

「おばあちゃんか、お前は!」


◆◆◆


「あれ?また君達…………」

『容疑者っぽいの発見でござる!いざ確保ー!!』

「噂に聞くNINJA!?」

「キャラブレてますよシャーロッテさん!?ってか止まってください止まって止まれー!待ってー!!」


この世界にも、忍者って伝わってるんだ…………!?それはともかくして、シャーロッテが真っ先にヴェルカーに突っ込んだ!?


「あら、誰かしらこの人」

『容疑者容疑者!タイーホ逮捕!ホーッホッホビビガビガビビー』

「何だこのバグロボット…………!?あ、僕はヴェルカーです二人のお嬢さん!」


ロボットに押し倒され潰されかけてるこの状況でも笑顔を絶やさず応対、イケメンらしさ全開だなこの人…………何の罪もない、いや罪は犯してるかもしれないんだけど…………ともかく、何も悪くないのになんかムカつくな。これが嫉妬?


「笑顔で応対を忘れないその精神…………すてき…………」


もう隠す気がないのか、セレナさんがぽやんぽやんのデレデレだ。表情筋が緩みまくっている。それを見て、ルミネは何かを察したような表情を浮かべた。まぁ気付くよね普通。普通(バカ以外)


「…………?コルネ、顔赤いわよ?りんご病?」

「…………リヴィちゃん、それは…………ないよ」


普通の定義から外れてる人が、もう一人いたご様子。もうお前ら、バカコンビで定着してるよね。


「ちょっちょちょ、落ち着いてくださいシャーロッテさん!」

『逮捕しなきゃじゃん!?じゃん!?ジャングル!』

「何言ってんですかあんた!?」

『私は常に真実を見据えています!』

「やっぱシャーロッテさん壊れてませんか!?とりあえず落ち着いてくださ…………おち…………落ち着けぇ!」


ライカがガチでツッコミに回り敬語もすっ飛ぶという新鮮な光景の中、何とかヴェルカーからシャーロッテを引き剥がした。


「ふぅ…………た、助かった。ありがとうライカさん」

「い、いえいえ…………って、暴れない暴れない!ストップシャーロッテさん!」

『怪しい!怪しい!逮捕ォ!』

「あっちょっ激しい…………駄目、動かないでくださーい!いやー!」

「エロいわね」

「ねぇ、オブラートって知ってる?」

「前世に置いてきたわ」

「駄目じゃねぇか!」


…………なお、この状況でもコルネさんは蕩けてぽけーっとしてしまっている。完全なる別世界に旅立つ彼女を見ると思うのは、恋って凄いって事…………そして怖い…………。


「何でそんなにヴェルカーさん逮捕に拘るんですか!?」

『ピガッ!?だってそりゃあ勿論…………』


シャーロッテはそこで息を吸い込むと…………いや吸い込んでるのかこれ?ロボットだぞ?ともかく、息をする風の動作の後…………


『爆発魔法の硝煙っぽい残滓が残ってるの検知できるし、さっき測った脈は早くて明らかに動揺してるしイケメンだし犯人でしょ』

「な、なんて説得力のある理由なのかしら…………!?」

「いや、イケメンの下りは要らないと思うんだけど」

「重要じゃない。イケメンよ、やらかすでしょ」

「さも一般常識みたいに語らないでリヴィちゃん!?」


…………そう、それなんだ。


今の所、『ヴェルカーは犯人ではない』という扱いをして捜査を進めている。ただ、ヴェルカーが一番怪しいってのは事実な訳で、本当の真相があったとしても辿り着く前にこうなってしまう…………。


「ま、待ってください!それだけでは、それだけではヴェルカーさんが犯人と決まった訳では…………!」

『状況証拠だけで起訴できるレベルだよこれは!ビガガ!…………っていうか君、探偵なんだっけ?』

「…………はい、そうです!事件の謎を解き明かすために、真実を、証拠を全て揃えるまでは犯人を決めつけるなんて…………!」


歯を食いしばり、シャーロッテを迎え撃つ。しかし、そこから飛び出したのは。


「…………馬鹿だね君は、いやお前は。怪しい人物が出てそれがほぼ決まった時点でアクションを起こさないと駄目じゃん。ピガガガガ…………探偵として失格だと思う。探偵の面汚しめ」


…………非情な言葉だった。


「…………っ!」


ライカは、その言葉を受け止めると同時、いや受け止められなかったのか。食いしばった歯は擦れ歯ぎしりになり、口が開く。目から流れ出していたのは、涙だった。


ここでようやくコルネさんも現実に帰還し、状況を察した様だ。ライカの事を心配するような目で見つめている!


「…………」

「あ、おい!ライカ!」


ライカは顔を下げ、泣き顔を晒すのを拒むかのように走り去って行った…………!


「ルミネ!リヴィ!この状況の後始末を頼む!俺はライカを追いかける!」

「…………うん!わかった、行ってらっしゃい!」

「こっちは任せなさい」

「おう、任せた!こっちも頑張るからな!」

「ま、待って!私も着いていきます!ここまで一緒に捜査してきた仲間…………いえ!もう友達ですし!」

「コルネさん…………!はい、一緒にあいつを追いかけましょう!」


場の処理は頼れる仲間に任せて、俺達は仲間と話すため走り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ