72.イケメンは最有力容疑者!?
「貴方からは何故か濃い硝煙の匂いがするのですが、その理由説明してもらいましょうか?容疑者さん」
ライカは、しっかり、はっきりとそう告げた。
おい…………ってことは、まさか…………。
「…………僕が犯人だと?」
「返答によっては、疑わざるを得ませんね」
ヴェルカーさん、いや、ヴェルカーが犯人…………?
硝煙の匂いってことはつまり、爆発魔法ってことだろ…………?加えて、ギルド職員ってことはギルドの構造とかに詳しいってことだから、計画を考えるのも容易…………。もしかしたら、本当に…………。
そんなライカの糾弾に、ヴェルカーはどこか余裕じみた様子で笑いの表情を浮かべる。
「ふっふふふ…………あははは、面白い推理ですね!…………でも、残念ながら僕は犯人じゃありませんよ」
「…………へぇ?」
「確かに僕は爆発魔法を使いました。でも、それはギルドの爆破の為じゃない」
「…………じゃあ、何で爆発魔法なんてぶっぱなしたんです?」
「それは…………」
ヴェルカーは大きく息を吸い込むと、一言。
「煙草の火をつける為です」
「…………は?」
は?え、煙草?…………はぁ?一体、どういう…………。
「ライター忘れちゃったんで、仕方なく小規模爆発魔法で着火したんですよ。僕ったらそそっかしくて。あはは」
…………んなどっかのアホ天使みたいなことしたのか…………って、うん?
…………なんか、ヴェルカーさんの足がプルプルというかガクガクしてるんだが…………。汗もめっちゃかいてるし…………。
…………これ、苦し紛れの嘘だろ。そもそも確か爆発魔法は火属性魔法の派生系のはずだから、初級火魔法も同時に扱えたはず。…………こりゃ、こいつが犯人でほぼ間違いなさそうだな。ライカも多分、そう問い詰める…………。
「なるほど~!納得しました!」
納得しちゃったの!?さっきまでの有能な探偵っぷりはどこ行った!?コルネさんも、貴方怪しいですねって言ってやれ…………!
「もう、ヴェルカーさんったらうっかりさんなんですから~。でも、そういう所もいいかも…………ボソボソ」
あ駄目だこの人全然聞いてない!正に恋は盲目!って、そんなこと言ってる場合じゃない!
「あの、やっぱりさっきの発言を考慮してあんたが犯人じゃ」
「レイさん違いますよ~。この人、犯人じゃないってしっかり分かりましたから。そんなことも分からないなんて、レイさんったらおバカさん!あは☆」
さっきのヴェルカーの怪しい挙動も分からないなんて、ライカさんったらおバカさん!あは☆
「という訳で、僕は仕事がないけど失礼します!さようなら!」
「あっ、おい待て…………速っ!?」
そこはせめて、仕事があるって言うべきだろ…………。そんな思いを俺の中に生まれさせつつ、ヴェルカーは全速力で駆けていった。
「という訳で、犯人っぽい人を探しましょう!」
「いや、明らかにあいつだろ!怪しさ満天だったぞ!」
「えぇー?あの人は絶対にないですよぉ。私の目に狂いはありませんよ!」
この人、よくこれで探偵を自称しようと思ったな…………。節穴にも程がある。
「コルネさんも何か言ってやってくださ…………」
「ヴェルカーさんかっこよかったなぁ…………いつか、一緒に、なんて…………きゃー!」
駄目だこの人。脳内がオランダのチューリップ畑よりもお花畑状態。完全に蕩けてしまっている。
「あのあのコルネさん、ちょっといいですか」
「そんな大胆な事考えるなんて私ったらなんてはしたな…………あっはいなんでしょうか」
そんなコルネさんをなんとか現実に引き戻し、ライカに聞こえないように(あいつにこういう事聞かせるとろくなことないと思った故の判断)端っこに誘導して話をする。
「コルネさんって、あの人のこと好きですよね」
「もっぴょろちゃみごげふぅっ!?な、何故その事を!?」
驚きすぎだ。寧ろ、何故バレないと思っていたのか…………。
「いや、態度で…………」
「そうですか…………レイさんって洞察力凄いですね、ライカさんより探偵向いているのでは?」
洞察力云々は同意しかねるけど、ライカに関しては本当にそうだと思う。あいつ、ノリと本能で動く野生動物みたいなもんだから…………。
「ちなみに、どんな所が好きなんですか?」
「…………えっと、彼、かっこいいし…………とっても紳士的で、女性を見る時も胸に視線を送ったり全くしないんです。その上仕事も出来て…………好きになるべくして、好きになったというか…………」
コルネさんは、髪をくるくるさせながら恥ずかしそうにそう言った。
…………確かに、コルネさんはかなり立派なものを持っている。…………ルミネとタメ張れる位かな。けっこう胸元が開いた制服を着用しているし、なるべく見ないのがマナーだとわかっていても視線がどうしても向いてしまう…………こともある。いつも見てる訳じゃないよ?…………そう考えると、ヴェルカーは聖人みたいなやつだな…………でも、なら何故事件を?
「あの…………大変申し上げにくいんですけど」
「な、なんですか?」
「ヴェルカーが犯人の可能性が濃厚です」
コルネさんの動作は、その瞬間フリーズした。
「…………同名の有名な犯罪者がいるんですか?」
「現実から目を逸らしましたね!?さっきまで話してたあいつですよあいつ!」
「まままさか、ヴェルカーさんに限ってそんな事…………きっと誰かがヴェルカーさんを陥れるために仕組んだ罠です。これは罠です」
なんかどっかで聞いた事のあるキラキラしたセリフを言いながら、コルネさんはわたわたする。…………まぁそりゃ、そういう反応になるよなぁ…………。
「…………とは言っても、さっきの挙動がかなり怪しかったですし…………」
「…………そうですか」
暫しの間俯き、そして顔を上げた。
「本当に彼がやったと言うのなら…………罪を償うべきだと思います。…………勿論、やってないに越した事はないんですけどね。それでも、彼の事が好きだから…………例え罪を冒していたとしても、償いを終えて帰ってくるまで待てばいい話ですし」
「コルネさん…………」
「そのためには、真相を知る必要があります。証拠なんてガンガン見つけて、彼の罪か無実を証明しましょう!頑張らないと、ですね」
健気で一途だな…………出来れば、犯人じゃない方が良いけれど…………犯人でも、誠実な対応を期待したいものだ。
「ていうかこの事、ライカさんにも言わないでいいんですか?」
「あいつは言い出すと聞かないんで…………ヴェルカー以外が犯人じゃないって言う証拠集めて外堀埋めてった方が効果的だと思いまして。その過程で他の容疑者が見つかったらそれはそれですし」
「手馴れてますね」
「伊達に一緒に暮らしてないですよ」
問題児達の扱いにも、もう慣れた(制御できるとは言っていない)
「そろそろいいですかー?内緒のお話、まだ終わりませんか?」
「あ、終わったぞ。気使って聞かないでくれてありがとな」
「えへへへー、もっと褒めてくれてもいいんですよ?」
「はいはい、つよいつよい」
「むー…………なんか違います…………」
「ふふふ、仲良いですねお二人共」
「およ?コルネさんがなんか丸くなったような…………?まぁ、いいです!次の目的地に向かいましょう!」
次?
「おい、それってどこなんだ?」
「ふっふっふ…………困った時は、知恵者に聞くのが1番です!つまり、そういう事!」
なるほど、君は探偵じゃないと。つまり、そういう事。
「向かう先は、愉快なおじさんがいるあそこです!」
「愉快なおじさんって…………まさか」
俺の思っている通りなら、それは…………
「いざ!魔王のいる魔王城へ!」
やっぱり、 愉快なおじさんの居城だった…………。




