69.名探偵は容疑者!?
「…………は?」
なんて事はない、普通の昼下がり。
…………ギルドが、跡形もなく消え去った。
「…………ちょっ、えっ!?何これ、どういうこと!?」
「ギルドが…………ない、わね」
俺達だけではなく、周りも騒然とする。そりゃそうだ、ギルドが急に消え去り、なおかつ中の人間には何も被害がないという超常現象が起こったのだから。俺だって、何が何だか…………!?
「た、大変です!?ギルドが、ギルドが吹き飛んじゃいました!?爆発ですか!?どうしましょう、先輩!?」
「そ、そんな事私に聞かれたって…………とりあえず冒険者の皆さん、落ち着いてくださーい!!」
セレナさんやコルネさんをはじめとする職員も動揺する。上層部の混乱は、下層部の混乱も誘発する。ギルド職員も慌てている事で、冒険者達は半ばパニックに近い状態に陥っていた。
「…………ふっふっふ」
…………そんな中。
「待ってましたの大事件!こいつぁ、私の出番ってもんです!」
空気を読まないアホが、一人だけ。
「今回の難事件!どんな事件もスパッと解決、悪をBEATな名探偵!名・B・探偵、ライカちゃんにお任せあれですっ!!」
いつ着替えたのかも分からない探偵衣装に身を包み、メイビー探偵はそう告げた…………。
「何でですかー!?出してください、出してくださーい!出せこんにゃろー、ちくしょーっ!!うわぁぁぁぁぁぁん!!」
事件解決の確約を高らかに謳った名探偵は、まさに。
その身によって事件を鎮圧した。
というわけで、現在地点はライカが収容された牢の前。リヴィとルミネの二人は、事情聴取中だ。
「いや、今回は流石に擁護出来ないぞお前…………償うもん償って早く出てこいよ」
「何故私がやった前提で話が進んでいるんです!?無実です、牢から出してください!」
…………ライカが名探偵宣言したすぐ後。
セレナさんにより、爆発でギルドが吹き飛んだのではないかという証拠が発見され。そのまま爆発イコールライカという最もな意見により、こいつが逮捕された。
「証拠だって上がってるんだし、シラは切れないぞお前…………」
「証拠って言ったって、爆発魔法痕が残る壁の欠片だけでしょう!?そんなの幾らでも仕込めますよ、絶対に私を陥れるための罠に決まってます!」
…………見つかった証拠というのが、ライカの言う通り魔法痕が残った壁の欠片。
曰く、この世界の魔法は、使った後魔法痕と言うものが辺りに残るらしい。犯罪現場に残る指紋みたいなものだ。
それでは、術者は特定出来ないのだが…………ギルド外の監視カメラに誰も写っていなかったこと、並の術者が起こせる爆発の規模ではないこと。また、人間に一切被害が出なかった魔法の特殊性。
それら状況証拠を全て踏まえて、出来るやつがこいつしかいなかった。…………そして、逮捕されたと言うわけだ。
「陰謀です!陰謀説を推します!私は絶対犯人なんかじゃありません!」
「んな事言ってもなぁ…………状況的にお前しか出来るやつ居ないんだもんなぁ」
「…………そうやってレイさんも私を犯人扱いして。全く、酷いです…………」
そう話すライカは、いつもより覇気がなく。
…………実際、悪い事をした時はきちんと謝れるやつだし。冤罪なら救ってあげたいが…………そう出来ないのも事実。何故なら、全ての証拠があいつに不利に働いているのだから…………。
「爆発魔法痕があるからって、私を犯人と決めつけるなんて……………………ん?爆発魔法痕?………………あーっ!?」
「うわっ!?きゅ、急にどうした!?」
ライカは急に大声を上げ、立ち上がった!
「レイさん!よく聞いてください!爆発魔法痕があるってことは、絶対に私が犯人じゃありません!!」
「ど…………どういう事だ?」
寧ろ、爆発魔法痕があるからお前が犯人扱いされてるのでは…………?
「私が普段爆発してるのは、溜まった魔力を解放してるだけで…………正確には、爆発魔法じゃないんです!」
と、衝撃的な事を…………!
「え、じゃあ爆発魔法痕が残ってたのっておかしいって事か!?」
「そうです!!」
なんてこった、これは百パーセント冤罪…………
…………いや、待て。
「お前、確か爆発魔法も使えなかったっけ?それが暴発したって可能性はないのか?」
「それはないですっ!!」
ライカは、尚も力説する。
「私は確かに爆発魔法を使えます!エスプロジオーネとか!でも、爆発魔法を使ったなら、爆発痕とセットで絶対になきゃいけないものがあるんです!!」
「そ、それって?」
「詠唱ですっ!私は確かに爆発魔法を好んで使いますが、専門は光魔法!高位の爆発魔法を使うなら詠唱もしないと絶対に撃てません!」
「…………なるほど。それで?」
「爆発魔法の準備と詠唱には、早くても十秒はかかります!でも、実際にギルドが吹き飛んだのはいつですか!?」
その言葉に、当時の状況を思い出す。あれは、確か…………
『地震です!?…………ん、でもライカちゃん地震レーダーは反応してないですね。地震じゃなさそうですよ』
『え?じゃあ、何なんだ?』
俺の発言が終わった後、すぐに…………!?
「おい、お前が爆発前最後に口を開いたのって、爆発の六秒くらい前じゃねぇか!?」
「そうです!詠唱してる暇なんかぜーんぜんありません!」
「あ、でも一連の下りが詠唱になった可能性も…………」
「それもないです、魔法名の前の文言はぶっちゃけ飾りで、魔法名を唱えるのが詠唱なんです。地震うんたらの前に唱えてたらレイさんが話す前に爆発してるし、その後に唱えてたらもっと後なはずです!」
…………それなら、いつもやらかす事に定評のあるライカでも犯行は不可能だ!完璧なアリバイがある!
「という訳で、無実です!ぜんぜん、これっぽっちも、もうぜーったいにやってないですっ!!私に濡れ衣を着せようとした真犯人は他にいますっ!!」
ライカは、そう叫んだ。
「だったら、この事を話して釈放して貰わないと…………」
「そうしてください!…………と、言いたい所なんですが~…………」
「ん?どうした?」
先程までの力強い声は、急に弱気な声へと変貌した。
「冷静になってみて気づいたんですけど、ぶっちゃけ、私が詠唱してない事を証言できるのはレイさんにリヴィりん、ルーちゃんしかいないんですよね…………」
「それに何か問題が…………あっ」
その証言をできる者が、身内にしかいない事に気づく。なんてこった、第三者の証言がないと身内だけじゃ証明が難しい…………。ギルドに監視カメラはあっても、声を拾う機械はなかったはずだし…………。
「ここ破壊して脱出したらそれこそマジモンの犯罪者ですし…………ただの拘留じゃないから釈放金払っても難しいだろうし、ていうかそもそもお金ないですし…………」
「…………詰んでる、って事か」
「そういう事になりますぅ…………」
無実なら今すぐにでも釈放してやりたいけど、それが出来ないというジレンマ…………一体、どうしたら…………。
「ふっふっふ…………お困りのようですね!」
突如、後ろから声が響く。その声は、聞き覚えがあるもので。
「れ、レイさんの影に隠れて見えないですけどなんかお嬢様感のある声が!?誰です!?」
…………それはもう、答えが出てるだろと思いつつ、振り返ると…………。
「はい!実際にお嬢様なツヴィトーク・クラレット・アシュリー、参上です!ライカさんを助けに参りました!」
そこには、札束と家紋の記されたペンダントを手に持ったリコがいた。
…………うん、もう何するかわかった。




