65.張り巡らす罠
「リヴィりん!?なんで、こんな所に!?」
ライカが驚きの声を上げる。それに関してはおれも同意見だ、なんでリヴィがここに!?
「とらっかちゃんが単身助けに来てくれたわよ」
「まじか…………」
「とらっかちゃん、すごいね…………」
リヴィはあいつらにとって重要な能力の持ち主だ、本人が脱走したら取り戻される事もあるだろうし厳重に警備されてると思ってたが、そうでもなかったのかも…………。…………いや、トラックが突っ込んできたら見張りも一掃か。
「とりあえず、とらっかちゃんの殺害お願いしていいかしら」
「あっ、うん!ライカちゃん、リヴィちゃん持ってあげて!」
「はいです!あー、ちっちゃいリヴィりん可愛いです!よしよし」
「…………」
「あいたっ!?む、胸蹴らないでくださ~い!」
抱き寄せられて大きな胸の存在をより意識したからか、リヴィが表情を暗くしてドスドスと蹴りを加える。それはさながら、嫉妬しているかのようで…………。お前、悲しいぐらいつんつるてんだからな…………。
「えーっと、それじゃあ…………とりゃあ!!」
ルミネは掛け声と共に、とらっかに強烈な拳を一撃。数トンあるはずのとらっかを数十メートル吹き飛ばした後、壁に激突。そして…………
『…………はっ!?ボクは何を!?』
「生き返ってたわよ」
『マジですか!?ふ、不覚です~…………』
未だ胸に蹴りを入れ続けられるライカは放っておいて、とりあえず事情だ。とらっか、不意打ち準備してるんじゃなかったのか?
「どうやってリヴィを助けられたんだ?」
「そりゃあもうあれよ、あれ」
「あれってなんだよリヴィ」
「暴走車両」
は?
「…………ごめんリヴィちゃん、何それ」
「とらっかの必殺技。相手は死ぬ」
…………ごめん、待って。
「ぐ、具合的にどういう………………」
『轢きます』
「えっ」
淡々とした、だがあまりにも直球な言葉に思わずとらっかの方を振り返る。目は、死んでいた。そして、続ける。
『ワイルドに轢きます。割れるまで轢きます。訳わかんない位轢きます。我を忘れて轢きます。笑えないくらい轢きます。轢きます。そういう技です』
ご、5W1H…………!?
「これが、この前エクレアに教えてもらった究極奥義。別名、冥土流死の5W1Hよ」
エクレアさん何してんの!?冥土流術ってトラックの技も技もあったの、えぇっ!?なんかもう、びっくりだわ!
『エクレアさんは強くてかっこいいです!教えてもらって、とっても恐縮なんです!ボクもあんな風にいつか一切の躊躇いなく手を下せるように…………!』
恍惚に満ちたその表情に、俺とルミネの表情が凍りつく。とらっか、お前はまともなやつだと思ってたのに…………!環境か、環境が悪かったのか…………!
「まぁそんでもって、救出されてとらっかちゃんで皆と合流しようとしてたら、蘇生魔法にとらっかちゃんやられちゃって。それで、今に至るわ」
た、逞しいこと…………。
ちなみに、未だにライカは胸を蹴られ続けていた。
「いたっ、痛いですぅ!これおっぱいに痣出来ちゃいますよー!?」
…………まぁ何はともあれ、無事でよかったかな…………。とらっかが冥土流術継承者になっちゃったけど。
「おいリヴィ、そろそろやめてやれ」
「そうよね、ライカのライカ蹴るなんて我ながら酷いことしてたわね、私。ごめんね、おっぱい」
「逆ですリヴィりん、逆っ!!」
こいつ、普段ならこういうこと言わないのに…………。恐らく捕まっててストレスが溜まってたんだろうなぁ……………。
「…………能力は、多分スペクターが持ってるんだよね」
「だな。幻霊の強化に使ってたし。でも、ま…………」
「問題なっしん!なのです!」
「…………?それって、どういう…………!」
「説明は後!行きますよぉー!いざ、助太刀いたす!」
「とらっか!スペクターの所まで飛ばしてくれ!」
『は、はいです!』
「ちょっ…………私の疑問はどうなるの?ねえ、ちょっと」
「多分行ったら分かる!急ごう、リヴィちゃん!」
とらっかに乗り込み、シートベルトを着用!大事!
いざ、スペクター最終決戦へ…………!
「ギャァァァァァァ!!爪が、爪がァァァァァ!!」
「さ、刺さっ…………俺はもう無理です!すみませんスペクター様…………がくっ」
「お、落ち着け!こういう時は焦ったら負けだ、じっくり、ゆっくり、めきり……………………めきり?…………あぁぁぁぁぁぁ爪剥がされたァァァァァ!?」
す、すごい…………!これは、本気ですごい…………!
能力を取り戻し覚醒したエクレアは、初めての笑顔を見せ、もうこれ以上ないってレベルの笑顔で、生爪を剥がして回る。爪が巨大化している幻霊にとって、これは耐え難いレベルの激痛だろう。…………いや、人間でも耐えられないわこれ。あたしがやられたら多分、プライドも捨てて泣く。
「『グラキエース』!『サンダーボルト』!『サモンタイフーン』!こりゃいいや、当て放題の叩き放題!はなちゃんの仇だー、くらえーっ!!」
「ちょっ、あたし生きてるんだけどっ!?」
勝手に殺すな、きいろ!
「爪がいちまーい、爪がにまーい、爪がさんまーい…………はーい全部もげましたー」
「い、痛…………やめ、許…………!こ、声も出な…………っ!!」
「魔王ちゃん!」
「ビームっ!!」
「ギャァァァァァァ!?」
「…………これでもくらえ、『コキュートス』…………!」
「おっ、フェルがそう行くならお姉ちゃんもそういう系で!『インフェルノ』!」
「みなさーん!!料理で体力回復してくださーい!」
「バフも盛れますよー!!」
さっきまでとは打って変わって。みんなが、幻霊を押している。数の差では圧倒的不利だけど、そんなの関係ない。みんなの事を傷つけたあいつを、絶対に倒す…………!
「………………ふふ」
しかし、スペクターは。
「ふふ、ふはははは…………!ふはははははは!!よくもまぁ、ここまでやってくれたものだなぁ!?えぇ!?お陰でこっちは大損害だ、ありがとうよ!!」
皮肉めいた言い回しをしながら、されども余裕を崩さず不敵な笑みを…………!?まさか、隠し札が!?
「俺の眷属をいたぶってくれやがって、ご苦労ご苦労!けれどもな、こっちにはこれがあるんだよ…………!!『ネクロマンス』っ!!」
「ちょっ、そ、それは!?」
「まずいよはなちゃん!それって、つまり…………!」
「残念ながら、俺達は無敵だ!倒されようがなんだろうが永遠に復活できるんだよ!!」
…………やられた。殺される事で、死霊術の適応範囲内に。そして、再び動き出す。これじゃ、永遠に堂々巡りじゃない…………!
せっかく勝てると思ったのに、これって、こんなのって…………!
あたしときいろは絶望的な表情を浮かべる。他の人の表情はよく見えないけど、フェルは肩を震わせている。あ、あれって、絶望に打ちひしがれてるとか…………?
「………………」
「おぉどうした氷の小娘悪魔、無敵の俺達に怖気付いたか!?降参してこちらに下ると言うのなら、特別に見逃してやってもいいんだぞ!?」
そんなスペクターの発言に、フェルは。
「……………………ぷっ(笑)」
「えっ」
「は?」
…………嘲笑で、返した。
「…………おもしろいからいわせておけば、ぴーちくぱーちく…………かちほこっちゃって、だっさ(笑)『ざんねんながら、おれたちはむてきだ!』だっけ?…………んなわけないじゃん、なにいってんの?しりょうじゅつ、できるわけないじゃん。だっさ、まおーさまいか(笑)」
「えっちょっ、酷くねフェル!?主に何たる暴言!」
フェル、啖呵切りすぎ…………!あいつらが無限なのは変わりないし、いくら強がっても…………!
「…………どうやら、恐怖で頭が茹で上がってしまったようだな!見逃す価値もない、お前ら殺せ!この女を始末しろ!」
…………しかし。
「…………だから、いったじゃん」
その指示は。
「おいお前ら!?なんで、死霊術が掛かってるのに動けないんだよ!?」
「しりょうじゅつ、できるわけないじゃん。だって、そいつら…………」
「いきてるよ?」
届くことはなかった…………!




