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異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
一章.便利屋トゥットファーレ、開店!
7/110

7.剛腕×ゴーレム×アルケミスト=?


「あ!あれだよ!あいつがわたしのペンダントを奪ったんだよ!」

「うわっ!?デカっ!?」


お約束のようにとらっかで目的地に向かった俺達は、今回ペンダントを取り返すピュロボロスの所に着いた……のだが。こいつ、クッソデカい。家1つ分くらいあるぞこいつ!?こんなのが爆発したら、ペンダントが壊れるどころじゃ済まないだろ!


「なるべく攻撃だけじゃなくて体も当たらないように気をつけないと……あれくらいのサイズのピュロボロスになると転んだだけで自重に耐えられず爆発するわよ」

「こわっ!そんなのに俺突っ込まされるの!?」

「「……」」

「……当たらなければ大丈夫……だと、思うよ!」

「……私もそうお、思うわ」


うん、ダメなやつ!それ、思いっきりダメなやつ!俺憑依使うの初めてなんだぞ!?んなやつにそんなミッション出来んのか!?出来ません!とってもインポッシブルだよ!


「リヴィ、せめてコツか何か教えてくれ……」

「んー、憑依なんて使えないから分からないけれど、グッとしてきゅっとしてバッとしてしゃきーん!で出来るんじゃないかしら」

「分かるかんなもん」


要するにフィーリングってことっすか、リヴィさん。やるしかないか……ないのか……ホントもう、ここ来てからこんなことばっかりだな!チクショウ‼


「まあとにかくやってみるか……えーっと、……グッとして……きゅっとして……バッとして……しゃきーん!」

「え、何その掛け声。ダサいわよ」


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?お前が言ったんだろォォォォ!?なんだその態度はァァァァ!?もー我慢の限界だ、とりあえず一発殴らせろォォォォォォ‼


「あっ!?なんか、体光ってるよ!?」

「え?……うわっ、本当だ!?」


怒りを込めて踏ん張ってみたら、なんか体が光り始めた!?これって、つまり、今なら!


「『憑依』ッ‼」


光に包まれて、一瞬感覚が消えた。そして、その直後に感じたのはふわっとした綿の手触り。感覚が徐々に戻っていく。この綿の感覚は……


「っ……なれたのね……ぬいぐるみに」


そう、クマに憑依出来たってことだ。身体中が綿でもさもさして、何だかむず痒い感じだけど、手も足も動かせる。これなら、アイツを刺激せずにペンダントを取り返せるかもしれない。


「すごい……これが、憑依……」

「レイ、行けそうかしら」

「ああ、行けそうだ。でもその後一発殴らせろ」

「ひどいわ」


その言葉を最後に、俺は駆け出す。勿論目標は、アイツの手に収まってるペンダントだ!


「レイくん!足音、立てないようにね!」

「分かってる!」


体が物理的に軽いから、足音を立てずに走れるぞ、この体!まずはピュロボロスに近づいて……見えた、今だ!


「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「!?ギャォォォォォォ!?」


ピュロボロスの手に向かって、大ジャンプ!よし、奪還成功!でも気づかれちまった、さっさと逃げないと!


「やった!取り返したよ!すごいすごい!」

「さっさとこっちに逃げて!じゃないと手痛い一撃食らうわよ!『死霊術(ネクロマンス)』!」

『はいはーい!ボクの出番です!レイさん、乗って下さーい!』

「OK!よっと……サンキュー、リヴィ、とらっか!」


もうすっかり慣れた、とらっかに乗って窮地を脱出!あとはペンダントを奪ってくれたお返しをするだけだ!


「ルミネ!アイツにとどめ、刺してくれ!」

「うん、わかった!いくよ……『ゴーレム錬成(ゴーレム・クリエイト)』ッ‼」


ルミネがそう唱えると、上空に魔法陣が展開。そこから出てきたのは、まさに造られし巨人。巨大なゴーレムを錬成した。ズドォォォォォン‼という地響きが着地と同時に上がる。ルミネ……すごっ。


「すごい……大っきい……」

「ルミネ!そいつでちゃっちゃとやっちゃってくれ!」

「了解!さあ、ゴーレムちゃん、やっちゃって!」


ルミネがそう言うとゴーレムは立ち上がり地響きを上げピュロボロスに突撃……


「……」

「……」

「……」


しなかった。


「……動かないわね」

「あちゃー、やっぱ無理だったか……」

「……ルミネ、それってどういう……」

「あはは、二人がいるからちょっとかっこつけてみようかなって思ったんだけど、無理だったね……実はわたし、ゴーレムは造れても動かせないんだ」

「……は?」


おいおいおいちょっと待て‼性格は至ってまともだったけど、性能全然まともじゃないじゃん‼ゴーレム造れても動かせないんじゃ敵倒せねぇじゃねーか‼どどど、どうすんだよ!?


「こ、こっちにピュロボロスが走ってくるわよ!?」

「お、おおおおいルミネどどどどどどうすんだよよよ」

「大丈夫、わたしに任せて」


そう言うとルミネはゴーレムに近づき……


「……ほいっと」

「……!」

「は?」


それが当たり前であるかのように、いとも簡単にゴーレムを持ち上げた。


「そりゃあ!」

「グギギギギギッ!?」


そして、投げた。投げられたゴーレムはピュロボロスにしっかり命中、ピュロボロスは爆発四散。これにて、戦闘終了。


……いや、ちょっと待て。


「ふー、勝った勝った」

「あの……ルミネ、今のは……?」

「わたし、ゴーレム錬成くらいしか取り柄ないし、どうにかして有効活用しようとしてみたら、意外と投げられたんだよね。それで、今みたいな戦闘スタイルになったんだ」

「……ってことは、実はあのゴーレムって割と軽かったり……?」

「ううん、少なく見積もっても5トンはあるよ。こう見えてもわたし、結構力強いんだよね。ステータス見る?」

「お、おう……って、何じゃこりゃ!?」


力の欄が……力の欄が65535って書いてある……ちなみに、俺の力のステータスは102。コルネさんによると、一般的な戦士の力のステータスは5000位。つまり、その10倍。俺が貧弱なのはいいとして、力エグすぎだろ……


「力、やばいわね……まさに剛腕……」

「そうなの……そのせいで、友達からは『剛腕のゴーレムクリエイター』なんて呼ばれちゃってたんだ」


待て、ここでよく思い出してみよう。ルミネは依頼する時に、こう言っていた。


『そうなの。わたしが得意な魔法はゴーレム錬成だから、わたしが攻撃したら間違いなく爆発しちゃう。友達に『剛腕のゴーレムクリエイター』なんて痛い渾名付けられちゃうくらい火力あるから……』


確かに、ゴーレム錬成が得意とは言ってたけど、行使するのが得意なんて言ってない。「わたしが」攻撃したら爆発っていうのも、あの力で殴られたらひとたまりもないから間違っちゃいない。そして、その痛い渾名……「『剛腕のゴーレム』クリエイター」じゃなくて、本当は「『剛腕の』ゴーレムクリエイター」だったんだ。ははは、なんという叙述トリック!すっかり騙されたわ!チクショウ‼


「……まぁ、何はともあれ、依頼解決じゃないかしら?」

「……そうだな……釈然としないけど」


トゥットファーレ依頼file.1 「ペンダントを取り戻せ!」 解決!






「二人とも、本当にありがとう!わたしの大事なペンダントを取り戻してくれて!」

「まぁ、これも仕事だから」

「仕事を解決して感謝される……気持ちいいわね、レイ」

「あぁ、そうだな」


たとえ仕事だとしても、いや、仕事だからこそ、それをこなして感謝されたからこんなに嬉しいのかもしれない。リヴィのノリと勢いで始まったこの仕事だけど、まぁ、悪くないんじゃないかなと思う。


「じゃあ、わたし宿に帰るね。さようなら」

「……ルミネ。ちょっといいかしら?」

「え……?どうしたの?」

「私たちと一緒に、便利屋やってみる気はない?」

「……‼」


やっぱり、こうなったか。ルミネのポンコツ加減が見え始めた時、こいつの目同士を見つけたみたいな感じでキラキラしてたし。性能はともかく、性格は常識人だし、ツッコミ役がもう一人欲しいと思ってたから俺としては全然いいんだけど。


「え、えっと……わたし、さっき見ての通り性能のおかしなポンコツアルケミストだよ?それでもいいの?」

「平気よ、私達もポンコツを地で行くミス&ミスターポンコツだもの」

「俺も含めるの止めてくれ」

「レイも大概でしょ。それより、ルミネのトゥットファーレ加入の件、いいわよね?」

「ああ、勿論。うちの便利屋に是非欲しいと思う」

「ほ、欲しっ!?わっ、わわわ……!?」

「あ、人手が欲しいって意味ね」

「あ、そうなの……」

「まぁ、何はともあれ……ルミネ、私たちの便利屋に加入して。いいわよね?」

「……うん!これから、よろしくね!リヴィちゃん!レイくん!」


こうして、俺達に新しい仲間が加わったのだった。

















「ふぁぁ……よく寝た」


初めての依頼から一夜。今日も清々しい朝が来た。……とりあえず、世界樹に水やりでもするか。


「あ、おはようレイくん」

「あぁ、おはよう」


どうやら先にルミネが水をあげてくれていたようだ。今のルミネはパジャマ姿なのだが……その……格好が……


「昨日からツッコミ入れたかったんだが……なんだ、そのパジャマ」

「あ、これ?えへへ、可愛いでしょ」


そう、ルミネが来ているパジャマはゴーレムを模したデザインのパジャマだった。デフォルメされたゴーレムにすっぽり収まったようなルミネ。可愛いんだけど……昨日ゴーレムを超腕力で投げ飛ばしたのを見ていると、なんとも言えない。


「それより、ここいい場所だね。太陽もいい感じに当たるし」

「そうだな。空も青くて雲一つない……ん?」

「あれ?なんか、落ちてきてない?」

「うん、俺の目にもそう見える」



見間違えじゃない。空から何かが落ちてくる。こういう時、普通のファンタジー世界なら「親方!空から女の子が!」ってなるんだろうな。絶対違うと思うけど。


「なんだろ、あれ……!?ちょっ、あれ、人だよ!?」

「えっ!?ガチで空から女の子!?」

「た、多分あれ、女の子だよ‼」

「マジか‼」

「って、こっち目掛けて落ちてくるよー!?」


だんだんとその女の子は地上に近づいてきて、しっかり見えるようになってくる。何だろう、声も聞こえてきたぞ。耳を澄ませて……


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!落ちる落ちますぅぅぅぅぅぅぅぅぅ‼ぴぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」


……不思議だなぁ、どこかで聞いたことある声だなぁ。本当に、誰なんだろう?俺、分かんないや。


「うわわわわっ!?地面ぶつかっちゃうよ!?助けないと‼」

「……いや、多分今からじゃ間に合わないぞ」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜‼」


そして、空から落ちてきた女の子は今にも地面に着きそうになった。そして……


「ごめんなさい!このまま着地するとエネルギーが大きすぎて抑えきれません!ごめんなさ〜い‼」

「え」

「え」


そう言うと、着地と同時に俺達を巻き込んで爆発した。

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