62.開き始めた花が知るは
「街が騒がしいから来てみれば…………なにやら友達のピンチらしいじゃん。これは助けるしかないね」
「…………あいすついでに、きゅうさいしてやる。いつもいつでも、やまばはのがさずでばんをねじこむ…………ふぇるさんのこうりんだ」
「ぶろりんにふぇるるん!?」
「…………うむ。よばれずともとびでるふぇるさんだぞ、おまえら」
ノープランで飛び出す悪癖。六花達が危険だという理由で策もなしにスペクターの前に飛び出した事を軽く後悔していると、思わぬ加勢が!
「あ、貴女たちは?」
「…………お、にゅーふぇいす。ひょうかのあくま、ふぇるだ。いごよろしく」
「火焔の悪魔、ディアブロだよ!よろしく!」
「わたくし、ツヴィトーク・クラレット・アシュリーです!リコと呼んでください!」
「えっ、うそ、ツヴィトークってあの!?」
「…………まじか、おじょうじゃん」
こんな状況でもいつもと変わらぬ態度に、少し安心する。
「二人とも、助けにきてくれたのか!?」
「…………まぁな」
「うん。いつもお世話になってるし、恩は返すよ!」
これは嬉しい誤算!(主にフェルの)性格面に問題はあるけれど、これほど頼もしい援軍はない!
「ふっ…………二人ぐらい増えたところで、死霊術で強化された俺達に叶うとでも?甘いな」
その言葉に、フェルは不敵な笑みを返す。
「あまいのはそっちだ、はちみつしろっぷくそげんれい」
「私達、いつ二人だけで来たって言った?」
と、いうことは…………!
「れ、レイさん!あの時は助けられたけど…………今回は、私が助けますっ!」
「と、いうわけで!ステータスにバフを盛る料理各種持ってきましたよ!」
「ドルチェ!それにロッシェさんも!」
この世界の料理は、作り方によって食べた人を強化できるらしい。強力な後方支援も来てくれた…………!
「ふ、ふん!後方支援が増えたところで、俺達の圧倒的な数の前では無力だ!」
「…………あれ?そーいえば、シフォンちゃんは置いてきたの?」
クッキーが素朴な疑問を漏らす。
「あぁ、それは…………」
「魔王ビーム!!」
「うぉっ!?危なっ!?い、いきなりなんだこれは!?」
さっきまでスペクターが存在していた場所に、突如空中からビームが降り注ぐ。避けられたものの、動揺しているようだ。思わず上を見ると…………。
「魔王ちゃん、ビーム!もっとビームだよ!」
「そんな乱発できないから!街壊れるからっ!落ち着け、シフォン!」
「そっか、ざんねん…………じゃあ、あれ!魔王ちゃんロケットパンチ!」
「無理!!」
……………シフォンと、物理的にも態度的にも尻に敷かれている魔王がいた。…………信じられないかもしれないけど、シフォンが魔王にしがみついて空を飛んでる。
「………………なに、あれ」
「あぁ、六花は知らないと思うけど…………あの二人、仲がいいんだよ。でも、まさかここまでやるとは…………」
「幼女と魔王…………!?」
「異色の組み合わせだねぇ、こりゃ」
この世界の幼女強すぎない?スー然りフェル然り、目の前のシフォン然り。
「魔王ちゃん!ベアナックルだよ!」
「いや近づくの!?それはシフォンも危険じゃないか!?」
「んー、じゃあ、使い魔ばらまいて」
「えっ…………えっと、あ!でもこれでいいのか…………?…………ええい、ままよ!行け我が眷属!」
そう言って、魔王がばらまいたのは…………
「あっ…………あれは今日の夕飯のエビじゃないですか魔王様!?」
「術式で一応契約を結んどいた!多分戦力にはなるだろう!?」
「…………まおーさま、それは…………どうなん」
…………エビだった。いや、ロブスターと言った方が正しいだろうか、それ位でかいやつだ。
「うわっ!?痛い痛い痛い耳挟まないで耳!」
「結構重いから当たるだけで痛いんだけどこれぇ!?」
「お、落ち着け眷属達!あぁもう、こんな攻撃計算外にも程がある…………!ふざけやがって!!」
いつぞやのライカチャンのように、空から降り注ぐ無数のエビ。字面も絵面も破壊力抜群だが、割と効いているらしい!
「あー…………まぁ、こんなグダグダだけどここは私達が引き受けたよ!ここにいないリヴィとルミネ、探しに行かなきゃいけないでしょ?行ってきな!」
「筋力増強と探知能力増強のおにぎりですっ!これ食べて、皆さん救い出してきてください!」
ディアブロとドルチェは、そんな事を言ってくれる。この人達が引き受けてくれるなら、これほど頼もしい事はない!
「ライカ!行くぞ!」
「はい!ハナさん達はどうします!?」
「あたし達はフェルちゃんとか手伝うよ!いいよね、はなちゃん!?」
「OK!回復したあたし達の本気、見せるわよ!」
まだ捕まったままの仲間のため、駆け出す!
「あ、おいこら、待て!」
「…………やらせない。ようじょ、きゅうえんもとむ!」
「りょーかいっ!魔王ちゃん!!」
「分かった分かった、魔王ビームッ!!」
「『フェルコン・パンチ』っ!!」
「ぐぁぁぁ!?貴様、よくもぉっ!!」
「さっさといってこい、ごーすとやろーとくそてんし!」
「私の呼び方酷くないですかーっ!?」
後押しを受け取り、喚くライカを引っ張って。脇目も振らず、あいつらを探しに!
「………………すごい」
本当に凄い。劣勢だった。それも、圧倒的な…………。でも、あいつは来てくれた。諦めなかった。その結果…………助けは来た。
やっぱり、あいつは凄い。他者のために自分の損得勘定関係なく駆け出せて、振り回されても怒りはするものの、見放したりはしないで…………。あたしにはないものを、あいつは持ってる。
…………でも、何でだろ。少しだけ、胸の奥にもやが残る。この気持ちって…………?…………あぁ、そうか。
「みんな、玲とか便利屋のみんなのために…………集まってくれたんだよね」
「はなちゃん?」
助けてもらった。本当に、沢山…………。でも、それはあたしを助けに来たわけじゃない。あいつらを助けたかったから…………ここにいるみんなは、集まったんだ。
それは、あいつの人望があるって事なんだろうけど…………それでも、自分はあくまでついでなんだって考えると、少し悲しくなる。…………でもそれって、身勝手で図々しい事だよね。少し関わっただけなのに、当然の顔して助けを求めるのって…………
「…………?なにいってるの、しーまいなす」
「え?あぁ、いや、その…………」
「大方『しずくんを助けに来たわけであって自分はついでなんだよね』って考えてナーバスになってたんじゃないの?」
ず、図星…………。
「…………は?なにいってんの、しーまいなす」
「…………え?」
「…………ここすうじつ、しーまいなすとぽわぽわやきがしにはおせわになったし…………おまえらがしぬの、もったいないから、たすけにきた」
…………え?
「ふふ、フェルったらツンデレなんだから。『まちやべぇなこれ』ってずっと文句垂れ流してたんだけど、ハナ見た瞬間『しーまいなす…………!?』って飛び出しちゃったんだから」
「よし、ころす」
「ちょっ!?痛い痛い、氷突き刺さないで!」
…………それって、つまり…………。
「あたしを、助けに来てくれたの…………?」
「…………そ。しーまいなすたちはいいやつだからな、べんりやめんばーがいなくてもたすけにきた」
「…………っ!」
向こうでは、はっきり言って嫌われていた。友達も全然いなかった。自分は周りから必要とされていないとも感じていた。でも…………。
「そうですよ、ライバルとはいえハナさんとクッキーちゃんさんは大切なお友達です!見捨てるなんて、出来ません!」
「私もお二人の事好きですよ、だから助けに来たんです」
「ハナおねぇちゃん、クッキーおねぇちゃん、大好きー!!」
「殺されかけたけど、それはそれ。君達は面白いし、私の数少ない友達だ!そりゃ、助けにくるとも!」
あぁ、こんなにも。
あたしの事を大切にしてくれる友達は、いたんだ。
「はなちゃん、泣いてる?」
「ち、ちがっ…………!そんなんじゃ、ないし…………」
強がって認めない。でも、頬から零れ落ちるのは。大粒の、冷たいのに温かい涙だった。
「戦闘中に茶番とはふざけた野郎どもだな…………!死ねっ!!」
「魔王ちゃん、シールド!」
「よしきた!」
「ぐぅぅぅっ!」
「…………かんしょうにひたるのはあとだ!たたかうぞ、しーまいなす!ぽわぽわやきがし!」
フェルがあたし達を鼓舞し、手を差しだす。無論、あたしは…………
「じゃあ…………ひと暴れ、しちゃおっか」
「…………そうね、きいろ。友達からもらったパワー、存分に受けるがいいわ!幻霊!!」
その手を取り立ち上がり、剣を鞘から引き抜いた!
さぁ…………ここからが、真の戦闘開始よっ!!




