49.天使とネクロのショー ~地獄絵図を添えて~
さあさあ皆様お待たせしました、これはとある便利屋が紡いできた軌跡のお話。
出会いは草地、とっても綺麗な美しい美少女と、モブっぽい男の子の運命の出会い。
…………我慢だ。まだその時じゃない。
二人は出会い、共同戦線を張ることに。便利屋『トゥットファーレ』を立ちあげる。そしてまたしても運命の出会い、超絶美少女天使と殴る人との……。
…………まだ我慢。横からこめかみがピキピキ言う音が聞こえてくるけど、耐えてください。
その後も様々な事件を解決していく敏腕便利屋『トゥットファーレ』。ペンダント奪還、勇者の手伝い、酢豚の退治、パセリの街を創る……。他にも、各所で何故か起こる奇っ怪な爆発の処理。モブ男子と腕力の人は知らないだろうけど、特に爆発処理が主な収入源だった。
…………ま、マッチポンプ…………。これ、流石に我慢しない方がいいだろうか。なんか横の人から煙出てるし。あずかり知らぬ所で何やってたんだよあいつら…………。
その他にも色々な方達とお近づきになったトゥットファーレ。例えば、魔王、悪魔、幼女、幼女、幼女、ストロンガー……。
…………知り合った人物紹介、偏りすぎだろ…………あとなんでストロンガーさんだけ名指し…………。で、でもまだ我慢。お嬢様の手前怒鳴るなんて事は…………
そして今は、大貴族のお嬢様に謁見出来る位までに地位を上げたトゥットファーレ。……と、言う訳で、お近づき記念に…………
…………生活キツイのでちょっとお金ください。
出来ないとか言ってられないレベルの発言出たね!ライン越えたね!よし、せーの!!
「黙って大人しく聞いてりゃギリギリどころかアウトな発言しやがって!お前達は人に迷惑をかけることしか出来ないのかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「失敬ね。お嬢様にお金せびっただけなのに」
「それが!!大問題だって!!!言ってんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
俺はキレた。盛大にキレた。『主人公不遇すぎてもっと怒った方がいいかと』と言われたからじゃないけど(実話)、キレた。
だって、だってだよ!?こいつら企画の冒険話ショーってだけでぶん殴って止めさせたいレベルのやつだったのに、挙句の果てに貴族にお金をせびったんだよ!?これはキレるわ、リコだってそうだろ!?
「たいへん素晴らしいお話でした!お金なら幾らでも出せますので、どうか続きを聞かせて欲しいですわ!」
リコォォォォォォ!!そこはその返しじゃ駄目だろ、こいつらが……
「やったぜ」
「ライカちゃん大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!!」
ほら調子に乗った!調子に乗ったこの二人はカブトムシの体液で作ったお茶漬け並にタチが悪いんだ、いや何を言ってるんだ俺!怒りで思考回路がめちゃくちゃになってる!
「……………………なに、この状況」
「どうやらしずくんは凄い状況で暮らしてきたみたいだね~……ハーレムも大変なんだねぇ」
あ、同情どうも。でもそれ、『金をくれ』っていう前フリじゃないからね。あと巻き込んですまん……。
「…………殴る人…………腕力の人…………胸でか星人…………あはは…………しねばいーのに、ふふ」
こ、怖い!目からハイライトが消えたルミネが斜め下を見つめながら呪詛を垂れ流してる!亡霊!?いやそれは俺か!でも最後のは誰も言ってなくない!?君には何が聞こえてるの!?
駄目だ、俺一人ではこのカオス極まる状況を打破出来ない…………なら…………この手段は取りたくなかったけど…………仕方ない!
「ストロ…………」
「ンガー参上」
早い!登場が早い!!上から来たから気を付けた、言い切る前に来たぞ勇者ンガー!でもこの人なら状況を打開出来るはず!
「言われなくても要件は分かってるよ。『記憶操作』」
うっわ、予想以上にえげつない手段取ったこの勇者…………。記憶改竄して今までのゴタゴタを消し去るとか、恐ろしすぎる……
そして、ストロンガーさんが魔法を唱えるが早いか、俺とストロンガーさん以外の人が崩れ去る。しかし、それもほんの数秒。直ぐに立ち上がり、そしてきょとんとした顔で辺りを見渡す。
「あれ……何してたんだっけ、わたし達」
「冒険話が終わったところじゃなかったかしら」
「ええ!とても楽しいお話でしたわ!」
「むみゅ~……何が忘れてるような……まぁいいですかぁ」
「楽しかったね~しずくん達の話~」
「…………あの勇者何者なのよ……?日本人っぽい風貌してたけど…………」
あれ?一名記憶消えてなくない?そこどうなのストロンガーさん? ……ん?いつの間にか消えてる。一体何処に…………
(やらかしちった。てへぺろ)
…………こいつ……直接脳内に……!オッサンのてへぺろとか需要ないよ、ストロンガーさん!イタイよ!
「…………なんか腑に落ちないけれど、これで私達の冒険譚はおしまいよ、ちゃんちゃん」
「リヴィりん&ライカちゃんぷれぜんつ『便利屋トゥットファーレの楽しい冒険話』お楽しみ頂けましたでしょーか!?」
お楽しみどころか、大暴走して乞食と亡霊を生み出した挙句爆弾処理班の手によって記憶ごと抹殺される程地獄絵図だったんだけどね。まぁ、これ以上問題を起こさないんなら怒る理由はない…………これ以上何かやらかしたら怒るけど。
「本当に楽しいお話でしたわ…………!これなら、あの依頼も任せられそうですわ!」
「「お金っ!?(お仕事っ!?)」」
「二人とも逆だよ……本音思いっきり出ちゃってるよ」
「「はっ!」」
貧乏だからって、そこに過剰反応するのは人としてどうかと思う…………。
…………っていうか、依頼?一体、何を?まさか、また七賢者……!?
「あの…………それで、依頼って?」
「あぁ、それはですね…………」
一泊置いて、リコが口を開く。
「ハナさんとクッキーさんにこの世界のこと、教えてあげて欲しいんです」
「わーお、お屋敷の外出たのは初めてだから興奮するねぇ!異世界だよ、異世界!アナザーワールド!いぇいいぇい!」
「きいろ、あんまりはしゃぐとバカに見えるわよ。でも……この街並み、いいわね」
二人とも、楽しそうに辺りを見渡すな……。まぁ、この世界に来て初めての外出だって言うし、無理もないか。
ちなみに、リコからの話はこうだった。
『この二人、ツヴィトーク家お付きの占い師が言っていた、近々現れると言われている世界を脅かす強大な敵に立ち向かうためにお父様が無理矢理召喚したんですの。でも、そんな事の為に異世界の人を巻き込むだなんて……全く、お父様ったら!わたくし、怒ってますよ!ぷんぷん!』
…………世界を脅かす強大な敵が現れる事に対して、『そんな事』と言い切るリコにちょっと度肝を抜かれたけど……まぁそれはいい。そして、発言の続き。
『という訳で、呼んでしまったからには元の世界に返せなくてですね…………。ならせめて、この世界を楽しんで貰えるようにしようと思いまして。ただ、生憎わたくし自分で言うのも何ですがお嬢様なので、気軽に外を案内する事が出来なくてですね…………。そこで、同じチキュウから来た、しかも知り合いのレイさん達にこの世界のガイドをして欲しいんですの。よろしくお願いします』
……無理矢理召喚されたと言う境遇の二人。全然そんな様子は見せないが、家族とも友達とも会えないんだ、ホームシックになったりもするだろう。俺?俺は…………じ、実はたまに家族の事を思い出して寝られない夜が…………ってそんなのどうでもいいわ!
とにかく。断る理由もなければ、受けない理由もない。ここは何気に交友関係が広い俺達が街の案内と行くか!
「とりあえずどこから案内するのがいいんだろうな」
「そうだね…………うーん、どこがいいんだろ…………」
「…………あそこはどうかしら」
「あそこですかー?どこですー?」
「魔王城」
「あぁ、なるほど!」
確かに魔王城なら常識人もいるし、ゲーム好きの気さくな魔王もいる!ゲームは地球にある物にちょっと似てたから、異世界初心者の二人でも楽しめるかもしれないぞ!ナイス提案、リヴィ!
「それじゃ、あそこに見える魔王城に…………」
「ま、魔王!?魔王って、あの魔王!?」
…………?何をそんなに驚いて…………
…………ってあぁ!?しまった、この世界に来て完全にイメージが崩れたから忘れてたけど、地球で魔王ってワードが出てきたらほぼ確実に悪役じゃん!つまり、六花は…………
「魔王と言えば世界に災いを振りまく存在……!そんなのがこんな街の近くにいるなんて…………!リコが言ってたあたしが呼ばれた理由はそいつを倒すためだったのね…………!!」
違います。貴女が言っているその魔王は人々の相談に乗ったり喫茶店でバイトする位の平和主義の魔王です。とりあえず落ち着いてください。
「ちょっ、ハナちゃん……!?違うの、魔王さんはそんなに悪い人じゃ…………」
「魔王…………切るべし。この銀剣でたたっ切ってくれるわ…………!!」
「ちょっ!?お、落ち着いて!?」
ルミネの説得、まるで通じず。どうしよう、早く止めないと…………!
「待ってろ魔王!あたしがアンタの息の根を止めてくれるわぁぁぁぁ!!」
「はなちゃーん、人の話を聞かないのは悪い癖だよー!!も、戻ってきてー!!」
は、速っ!?
異世界に来て脚力強化スキルでも習得したのか、物凄い速さで走る六花。もはやクッキーでも止めること叶わず。これは…………ヤられる……!?
…………ま、魔王逃げて!超逃げて!




