48.サディスティック・レディ?
「よくぞお越しくださいましたブタのように素敵なお客人方!犬のように無様に鳴きながら是非わたくしにそのくだらない最高のお話をお聞かせくださいませ!」
…………えーっと、お、お嬢様……?だよね……?
屋敷に入る前も、入った後も紆余曲折あったけど、ここで一番衝撃的な出来事が降り掛かってきたぞ……。お、お嬢様って、まさかの…………
「ど、ドS…………?」
「まさかのそういうやつ……だったの……?」
「る、ルーちゃん大丈夫ですか?か、顔が……パグとドラゴンとカミツキガメを足して三で割った…………いや掛けたような顔になってますよ……?」
「(唖然)」
「ちょ、ちょっと…………あんたいきなりどうしちゃったのよ……!?」
みんな三者三葉の反応を返す。特にルミネが一番ひどい、モザイクかかりそうな顔ひどい顔してる。お嬢様がこんな態度を取ればこんな反応になるのも無理はない…………
…………あれ?ちょっと待て。お嬢様と対面した事がある六花も驚いてるってことは、少なくともちょっと前まではこうじゃなかったってことだよな。『あんたいきなりどうしちゃったのよ』って言ってるし。……偉い人に向かって『あんた』呼ばわりなのは気にしないでおこう。
……ってことは、誰かの影響を受けたってことか……?…………しかも、一切驚きのリアクションを起こさなかった人が一人だけいるよな。つまり…………
「やりましたクッキーさん!『どえす』キャラってこんな感じなんですね!」
「ふっふっふ~、お嬢様×ドS…………いいですねぇ~いいですよぉ~」
……案の定、クッキーでしたとさ。いや、偉い人に何してくれてんの……。
「…………きいろ、あんた何やってんの…………」
「いやぁ、ウブなお嬢様に色々吹き込……いや教えるのは楽しいなぁって」
「…………それ、不敬罪じゃ……」
「へーきへーき、あたしとリコちゃんは強い絆で結ばれてるんだもーん。ボンドボンド~」
…………?リコ…………?それって…………
「ちょっときいろ、玲達はリコのことあまり知らないんだからいきなりあだ名を出すのは…………」
「あ、大丈夫ですわハナさん。わたくし自ら説明しますので。えー……コホン」
お嬢様は咳払いをし、場の空気を整える。ごたごたしていた空気が鎮まった所で、口を開いた。
「手紙にも書きました通り、わたくしツヴィトーク家の長女、ツヴィトーク・クラレット・アシュリーと申します。気軽に『リコ』と呼んで下さいませ。あ、タメ口で構いませんよ」
「よ、よろしくお願いします……リコ、さん?れ、レイと申しますです……じゃなくて」
「ふふふ、そんなに緊張しないでよろしいのですよ。ほら、力を抜いて。さんも付けなくていいですから」
そう言うと、リコは俺に近づいて肩を叩いて力を抜くように促し……ちょっ、近……!?な、なんか髪から……いや髪どころか全身からいい香りするんだけど!?これがお嬢様パワーなのそうなの!?
「…………リコ、近すぎじゃない?玲から離れたらどうなの」
「あ、それもそうですね。ふふふ、はしたなくてすみません」
「い、いえ……」
「…………デレデレしちゃって」
…………なんか二人からの視線が冷たいんだけど……。俺、本当に何かしました…………?
「リコ……でいいのよね。よろしく。リヴィよ」
「ルミネです。よろしくお願いします」
「ライカです!よろしくですリコさん!」
とりあえず、下半身の平穏は保たれそうで良かった……。ガチでドSだったら余興代わりにぶち抜かれてた可能性あったからな……。肝が冷えたわ……。
「ところで、なんでリコさんって呼ばれてるんですかー?ライカちゃん気になります」
「あ、それ俺も気になってた」
名前の何処にもリコ要素は無かったはずだけど……リコって何処から来たんだろう。
「ふふふ、ハナさんが名付けてくれたんですのよ」
「……可愛いあだ名が欲しいって言うから。アシュリーって、地球ではトネリコのことだから……そこから取って」
あ、なるほど。俺植物に関しては疎いから全然分からなかった。そこから取ってリコか……風流でいいあだ名だな。
「あの、リコちゃん……で、いいんだよね」
「勿論かまいませんわ、ルミネさん」
「その、今日わたし達がお呼ばれしたのって……冒険話が聞きたいってことだったよね」
「はい!そうですわ!強敵を屠り、人々の願いを叶えてきたあなた方の話が是非聞きたいと思いまして!」
強敵を屠り、人々の願いを叶えてきた……。うーん、物は言い様だなぁ……。ストレートに表現しようとするなら『爆発で数多くの物を破壊したり、腐った物とかグロい物とかを呼び出したりして周りを不快にさせつつも一応人助けをした』が正解だと思うんですけど。
「あたしも聞きたい……かも。玲がこの世界に来てから何してたか、気になるし」
「うむうむ。しずくんのことだからきっと面白い話を聞かせてくれると期待しているぜ~。ひゅ~ひゅ~」
「ちょ、ちょっとハナちゃんとクッキーちゃん囃し立てないでよっ」
寄せられる期待に、ルミネが少し狼狽える。確かに、期待に添えるような話じゃないもんなぁ……。
「ふっふっふ……私達の素敵な話を聞いて恐れ戦き跪くがいいわ」
「お前がドS化してどうするんだよ、跪かせたらエクレアさんが黙ってないだろ。そんな事したら絶対あの人来るぞ」
「来てますよ」
「うぉぅ!?え、エクレアさん!?」
いつの間に後ろに剣を構えたエクレアさんが!?冥土流の隠密術どれだけ性能高いんだよ!?
「リヴィさん。もし、もしですよ?そんな真似をしたら…………穴、埋め立てですよ」
「ひっ……わ、分かってるわよ。そんな事しないしない」
珍しくリヴィがビビってる……。エクレアさん、この世界でストロンガーさんと双璧を成す最強加減が恐ろしいな……。あ、ストロリ……じゃなかったスーも入れて三強か。
「エクレア、そんなに皆さんを脅さなくて大丈夫です、剣を仕舞いなさい。失礼ですよ」
「……お嬢様がそう仰るなら。皆様、ご無礼をお許しください」
エクレアさんはチャキと言う音を立てさせて、剣を鞘に仕舞う。そして、こっちに向かって深々と一礼をした。
「大丈夫ですよエクレアさん。リヴィちゃんが迷惑かけてすみません」
「有り難きお言葉。それでは失礼します」
「あ、消えました」
音も立てずにエクレアさんはその場から退散。まだその場に残像が残って見えるんですが、それは……。
「エクレア、いつ見てもキレッキレよね。リコの事が絡むとちょっとアレだけど…………」
「お嬢様命ドジっ娘気質ぽんこつ有能メイド……属性マシマシで萌えますね~うへへへへぇ」
「きいろ、キモいわよそれ」
「え~酷いなぁ~、あたしゃそんな子にはなちゃんを育てた覚えはないよ……よよよ……」
「育ててないでしょ」
「えぇ~、ノリわる~い」
…………ところで、冒険の話は……?
話が直ぐに逸れるのは、俺達の悪い癖だな……。話の矯正術を覚えたい。そんなスキル、無いのかな。
「ふふふ、皆さん盛り上がっていて素敵ですわね。でも、そろそろお話聞かせてくれると有難いですわ」
ナイス、リコ!流石お嬢様、空気が読めるし話を矯正出来る!
「そうねー。じゃあ、話そうかしら」
「そうですねー。……じゃあ、アレですね?」
「えぇ……アレよ」
「ふっ」
「へっ」
そうやって、リヴィとライカは意味深な会話を…………って、ちょっ!?よ、余計なことやらかさないだろうな!?
「お~、どういうパフォーマンスを見せてくれるのかな~」
「楽しみですわね!どんなお話なのでしょう……ワクワクが止まりませんわ」
「…………玲、ルミネ。あたし嫌な予感しかしないんだけど……気の所為?」
「多分気の所為じゃない。このパターンは……」
「何時ものやらかすやつじゃない…………!?」
リヴィとライカは、お互いの手を合わせると、何かを唱え始める。魔法使うの!?え、それ大丈夫!?エクレアさん警察に引っかからない!?
「それでは始めます!ステージ、せり上がってこーい!『召喚』っ!」
そう唱えるや否や、リヴィとライカの足元からステージが!?
「れでぃーす・あんど・じぇんとるめーん!いっつしょーたいむ、です!」
そしてステージから大量の煙が!?何これ!?
「今からショー『便利屋トゥットファーレの楽しい冒険話』始めるわよー!」
そしてステージの下からせり上がって来たリヴィの格好は……
「「「ら、ラスボスー!?」」」
「まぁ!とっても派手で素敵ですわね!」
某歌手が身につけるような、身長の何倍もある派手派手なドレスに身を包んだラスボスだった…………!
いやこれ大丈夫かよ!?第二のラスボスに逮捕されそうな気がするんですけどぉ!?




