43.冥土代表呪詛御文
「ねぇ……本当に行くの?断りの手紙なら私作法分かるからその……ね?」
「愚問ねルミネ!行くに決まってるじゃない!ふぃーばーよ、ふぃーばー!」
「貴族にお呼ばれとかやっと異世界らしいイベントじゃねぇか!この世界に来れて良かった、ありがとうライカ!」
「褒めるでない、褒めるでないですよ!あっはは、ふぃーばー!!」
「「ふぃーばー!!」」
「駄目だこの人達ー!!」
ある日突然トゥットファーレに届いた手紙。それはまさかの貴族からの招待状だった!さっきも言った通り、ようやくまともな異世界イベント、ファンタジー!ここまで長かった……今までどの位期待を裏切られてきただろうか。そう思い、これまでにあった事を振り返ってみる。
トラック少女、物理アルケミスト、爆弾天使、チート勇者(だがしかし主人公じゃない)、酢豚、土地問題、パセリ……いやひっでぇな、何だこれ。羅列してみると更に意味不明すぎる。まぁでも、そんなことばっかりだったけど、今ようやく報われたってやつだ!
「貴族のお屋敷でお食事会……!絶対美味しいもの出ますよ!」
「そうね!サフランとか!」
「お前らサフラン大好きだな!?でもまぁ、高級食材かぁ……やばい、ワクワクしてきた!」
「ちょっ、待っ……皆いつもの調子で行ったら無礼者として首が飛びかねないから、本当に断りの手紙入れよう?ね?」
「断りなんて入れる訳が…………えっ、首?」
浮かれ気分で盛り上がっていた俺達(リヴィに至ってはいつ着替えたのか知らんが衣装を着てサンバを踊っていた)はその一言を聞き、硬直する。
…………首、ですか。
「そうだよ。だって、大貴族だよ?わたし達なんかじゃ本来会うこともない人なんだよ。そんな人の前で、いきなり腐ったマグロを取り出したり爆発したりしたらどうなると思う?」
「…………首ちょんぱ、です?」
「もしくは拷問だよ」
貴族怖っ!?しょ、処刑ってこと!?何だか急に怖くなってきたんだけど!?
「……そう、なのね」
「むしろ今気づいたの!?皆大丈夫!?」
「そ、そうね……」
……ルミネさんから「お前ら頭おかしいんじゃねぇの」的な態度を取られて、凄く心が、痛いです。
そしてリヴィのテンションもダダ下がっているようで。でもとりあえずサンバ衣装脱がない?落ち込んでるサンバのダンサーとか、絵面の破壊力がやばいから。
「…………で、でも!多分大丈夫ですよ!手紙の文面も友好的でしたし!」
……そんな中、一人だけ処刑の可能性を否定してくれているライカ。…………そ、そうだよな。手紙の文面は友好的だったし、大丈夫だよな!…………だよな。
「ほ、ほらこれ!少なくとも処刑の意思は示してませんし…………おりょ?」
おっと?君は何を見つけてしまったと言うんだいライカ?何やらとっても嫌な予感がするのだが?
「……ど、どうしたのライカちゃん」
「いや……これ、よく見ると秘匿術かかってます」
「秘匿術!?」
「……なぁ、秘匿術ってどんな術なんだ?」
「えっと……文章とかを隠せる術です。密書とかラブレターとか送る時に周囲に文章を見られないようにしたい時に使うんです」
「……な、なるほど」
要するにあぶり出しみたいなものか?だとすると、そこに書かれているのは他者には見せたくない……いや、見せられない事?
……………………。
「…………一応この位の術だったら解除して読めるように出来ますけど、どうします……?」
「…………こ、怖いわね…………」
「で、でも……見るしかないんじゃないか?大事な事だったら困るし」
「…………う、うん。そうだね、よろしくライカちゃん」
「は、はいです~……」
そう言う俺達の声は、隠すことが出来ないほど震えている。……本当に処刑関連だったらどうしよう……。
「えっと、それじゃあ……『解除』っ」
すると、手紙が浮き上がり淡く輝き出す。だがしかしそれは一瞬の間、直ぐに光は収まり手紙もライカの手に収まる。
「これで読めるはずで…………うごぉ…………」
「ど、どうしたの、ライカ」
「…………もう既に嫌な予感が……」
「…………それな…………」
手紙に目を落としたライカは、女子としてあげてはいけないような太い落胆の声を出す。うごぉって、お前……一体そこに、何が…………!?
「…………ライカ、何て書いてあるのかしら、それ…………」
「…………え~…………『追伸:お嬢様に無礼な真似を働いたりしたら、あなた達の を潰します メイド代表、エクレアより』」
「潰っ!?」
「な、何を!?何を潰すって書いてあるの、ライカちゃん!?」
「分かりません!ここだけメチャクチャ強力な秘匿術で隠されてて空白にしか見えないんです!」
「何それ怖っ!?」
潰す!?処刑とかじゃなくて明確に潰すって言ってきた!?いやマジで怖いんだけど!何潰すの!?
「……それ、頑張って解除出来ないかしら?」
「……超頑張れば出来ないこともないですけど…………見たいですか?」
「いや怖いからあんまり見たくないけど……でも何を潰すのか分からないのもまた怖いし……」
「…………お願い、ライカちゃん」
「は、はいです~……ははは……」
そう笑うライカの目に、いやここにいる皆の目に、既に光はなかった。死んだ目だ。
「い、行きますよ~……すー……はー……『神聖解呪』っ!」
そう唱えるとさっきより強い光が手紙から溢れ出し、一瞬の後再び収まる。ライカは、その手紙をおそるおそる覗き込み……。
「…………出来ま…………げぐぁぉ…………ちょ、ちょっとお花積んで来ます」
「あっちょっ、それ正しくはお花を摘みに行くだから!おい、待て!」
「お花が私を呼んでいます!と、止めないでくださ~い!……うぷ」
ライカは手紙を見るとさっきより女らしさを捨てた声を上げ、お花を摘みに走り去っていった。…………震えが止まらない、一体手紙に何が……何が……!?
「………………………読むわね」
「…………死ぬなよ」
「大丈夫よ……多分。えーっと、『追伸:お嬢様に無礼な真似を働いたりしたら、あなた達の性k
「わーっ!!わーっ!!やめろ何も聞いてない聞こえてない!」
「そうだよ!何も書いてなかった、だよね!?いいよね!?」
「そ、そうね!多分私の見間違え、もしくは幻覚ね!」
「そうだよ本っ当にもう困ったやつだな~リヴィ!」
「幻覚見るなんて疲れてるんだよ~きっとそうだよ~!」
「そうね~!あはははははは!」
全員が全員大事な所を手で隠し、狂気的なまでにテンションを上げて誤魔化そうとする。だって、その、あれ…………!!性…………いや何でもない何も無かったオーケー!?ドゥーユーアンダスタン!?
「……………………」
「……………………」
「……………………これ、行かない方がいいかな…………?」
「……………………でも、行かないのも無礼に当たるんじゃないかしら…………」
そして静寂が辺りを包む。それからたっぷり三十分後…………
「………………行くか」
「そうね。ここまで来たら、行くしかないわよね」
「…………潰されないように、頑張ろ~…………」
「「お~…………」」
こうして、(半ば脅される形で)俺達はツヴィトーク家のお屋敷に出向く事を決めたのだった……。
ちなみに、この後二時間経つまでライカは帰ってこなかった。
久しぶりに挿絵が付きました。挿絵担当の友人N、ありがとうございます……!(友人Nと言う名に違わずリアルの友人なので敬称を省略しています、ごめんなさい)
挿絵の手紙の本編との差異は気にしない方向で読んでくださいね!オブラートです、オブラート!
次回は来週の月曜更新です。




