42.便利屋への招待状
今回から三章突入です。新キャラ、まだまだ増えます。それでは、始まります。
「――という訳で、便利屋を殺すことには失敗してしまいましたぁ……すみません……」
「ボク達二人でかかっても無理だったよ~。ははは、まぁ被害被った訳じゃないから許してくれるよね?」
「ちょっ、ちょちょ、その言い方は…………」
「……良い。死ななければ再利用できる」
「あはは、ドライだね!流石大神官サマ!」
「……それ以上大神官様に無礼な態度を取るなら、七賢者同士とは言えども殺しますよ」
「テトラちゃん、怖いな~もう!……まぁ、おふざけはこの辺にして。あいつら、どうする?ウィークネスちゃんはどう思ってるの?」
「……憑依使う人がいて少し驚いたので……あの人を仕向ければ良いのかなぁと」
「……『憑依の七賢者』……。確かに、一理有りますね。大神官様はどのような考えをお持ちでいらっしゃるのですか?」
「……奴は、まだ出すべきではない。代わりに、お前が行け」
「おぉ~ボク!さっすが大神官サマ、素敵な判断!お目が高いですねぇ!Ω!なんちゃって!」
「……貴女、いい加減に……」
「ま、まぁまぁ。ここで問題起こすのは私達にメリットありませんし、抑えましょうよ。ね?」
「…………分かりました。貴女がそこまで言うなら、私もこれ以上は言いません」
「ヒュ~、ウィークネスちゃんありがと!愛してるぜ★」
「……任務遂行してる時の貴女は真面目なのに、何で任務抜けるとそうなっちゃうんですかねぇ……」
「……でも魅了魔法、記憶干渉術などの妨害魔術で彼女の右に出るものはいませんから。受け入れ難い事ですが」
「テトラちゃん辛辣……。でも、ウィークネスちゃんの言う通り、私は仕事だけは真面目にこなしますからね!『魅了魔法の七賢者』の力、見せてあげますよ!」
「……そうか。なら、行け」
「「「……はい。大神官様の仰せのままに」」」
「ぴえぇぇぇぇぇぇ!ぴえぇぇぇぇぇぇ!!」
「のっけからどうしたよお前」
土地問題が解決してから約一週間。俺達は特に何も無く平凡な毎日を送っていた。……依頼もなかったけどな!
お陰で、ここ最近のご飯はまたサフラン。本っ当にやってくれたな、あいつら……!
……まぁそれはさておき。起きてきたら、ライカが凄い勢いで泣いていたと言うのが今の状況。本当に、何があったし。
「あ、おはようレイくん」
「……なぁ、コイツ何で泣いてるんだ?」
「あぁ、ライカちゃんね……。……なんか、七賢者とドロモス・ベノムの討伐を天界に報告しなかったからみっちり怒られたんだって」
「……そういえば前、現地調査しろって言われてたなぁ……」
忙しかったこともあるけど、ライカには全く報告してる様子が見られなかった。ヤバいかもしれないから調べろって言ってんのに、それサボってたら怒られるよなぁ……。
「酷いですぅぅ!!私だってサボりたくてサボってた訳じゃないんですよ分かりますかレイさんんんんん」
「ちょっお前やめろ鼻水着くから!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらこっちに迫ってくる様子は、さながらホラー。抱きつかれてもちっとも嬉しくありません。放せ。
「レイさん酷いです私達仲間じゃないですか悲しみは共有するべきだと思うんですよどう思いますかです!?」
「もうお前何言ってるか分からなくなってるぞ!?とりあえず一旦落ち着け!」
「はー、はー…………はい、落ち着くです……。すー、はー……」
「落ち着いた?ライカちゃん」
「……大丈夫です。ルーちゃん、ありがとうございます。あと、レイさんもちょっとありがとうございます」
「ちょっと!?」
この件に関しては俺の方が感謝されて然るべきだと思うんですが、そこはどうなんですかねライカさん?諭したの俺だよ?
「……そういえば、リヴィりんがいないです?どこ行ったんですかね」
「あ、本当だ。いないな」
「仕事しに行くって言ってたけど……」
「へー……仕事!?」
「うん、何するかは言ってなかったけど」
マジか……。俺達が依頼が来ないと嘆いている間にあいつちゃんと仕事してたのかよ……。散々馬鹿と言ってたけど俺の方が人間的に下じゃん……。
そう思っていると、ドアが開く音がする。この音の感じ……、玄関のドアが開いたのか?ということは……
「ただいま」
噂の当事者の帰宅だ。
「おかえりー。朝早くからお疲れ様」
「おかえり。お前、仕事してたんだな……」
「おかえりです!なんの仕事してたんです?」
「ふっ……よく聞いてくれたわね、二人とも。私がやってるのはネクロマンサーに、特に私にぴったりな仕事よ」
「……と、言いますと」
「運送業」
なるほど。ネクロマンサーとしての仕事か、確かにぴったりだな。
「朝から新聞配達、郵便配達こなしてきたわよ……!」
「う、うん。お疲れ様」
「お前それでいいのかよネクロマンサーとして……」
「重機運転は一流のネクロマンサーのステータスよ、知らないの?」
「知らん」
そんなもんが一流のネクロマンサーのステータスであってたまるか。世界中……いや異世界中探してもそんなもん心得てるのはお前だけだわ。
「あ、それと、これ」
「?手紙です?」
「ええ。配達リストにトゥットファーレ宛の手紙が入ってたの」
「随分と綺麗な封筒だね……?」
「確かにそうだな……」
少しの装飾が施された白い封筒。それはシンプルながらも、何処と無く気品が感じられた。
「ちょっと開けてみるね。え~と、なになに……………………!?」
「みゅ?どうしましたルーちゃん?」
手紙を読んだルミネが、何故かフリーズする。……一体、何が書いてあったんだ?少し値が張りそうな封筒だし、イタズラってこともなさそうなんだが……。
「……何が書いてあったの?」
「…………え?な、何でもないよ!?えっと……その、イタズラ!イタズラだった!」
…………怪しい。
「……イタズラでも、何が書いてあったか確認したいんだが。ちょっと、見せてくれないか?」
「えっ!?い、いや、その必要ないよ!本当にただの、取り留めないイタズラだから!責任持って処分しとくね!」
「………………」
「………………」
「………………」
「ライカ、行って!」
「はいですぅ!クローゼットからライカチャン軍団、こうりーん!!」
「「「ライカちゃんだよー」」」
「ちょっ!?」
ライカが合図すると、部屋にあるクローゼットの中からどうやって入っていたのか分からない程の量産型ライカチャンc.cが!でもそれ爆弾だよね!?爆発させんなよ、フリじゃないぞ!
「ちょっ、やめっ、揉みくちゃにされるー!?と、取らないでー!」
「取ったよ、ますたぁ!パス!」
「ナイスですライカチャン!キャッチ!お疲れ様です!クローゼットに戻っていいですよ!」
「「「もどりまーす」」」
「ちょっと待って!か、返して!」
「レイさん、パスです!」
「よっしゃ任せろ!読むぞ!」
「やめてー!!」
やめてと言われて、やめるような俺ではない。よって、読み上げちゃいます。
「えーと……『便利屋の皆様、お忙しい所失礼致します。わたくし、ツヴィトーク・クラレット・アシュリーと申します。かねてから便利屋の皆様の噂は耳にしておりまして、今回是非お話をお聞きしたいと思った次第です。便利屋の皆様の中にはチキュウと言う場所から来た方もいらっしゃるのですよね?実はわたくしの屋敷にも、チキュウからやって来た二人組が居候していますの。ですから、その二人に他のチキュウの人と会わせてあげたいとも思いまして、この手紙をしたためさせて頂きました。お食事会を開きたいと思っておりますので、是非屋敷にお越しくださいまし!冒険者としてのお話を聞きたいのでドレスやスーツでなくても全然大丈夫ですよ。お返事、お待ちしていますね』」
「………………」
「………………」
「うぅ………………」
暫く、場に沈黙が落ちる。そして…………
「つ、ツヴィトーク!?あのツヴィトーク家からの手紙ですか!?ツヴィトーク家といえば、スペランタの街一帯を治める天界の地上史の授業でも教わる程の大貴族中の大貴族ですよ!?」
「私でも知っている程に偉い人よ、レイ!これ、相当よ!」
「何となく名前で察してた!つまり、凄く偉い人ってことだよな!?」
「う、うん……。そういう事に……なるね~……」
「………………」
「………………」
「………………」
再びの沈黙。リヴィとライカは綻びを隠しきれない顔をしており、ルミネは汗をダラダラと流している。俺も恐らく、リヴィとライカと同じような顔をしているのだろう。つまり……
「遂に私達も貴族にお呼ばれする程度に地位を上げたのね!私達の時代、到来よ!」
「「いえーい!!」」
「うわーん、だから見せたくなかったのにーっ!!」




