40.自分達だけの物語
「わたしの名前は……わたしの名前は、ストロンゲスト!パパ……偉大なる勇者、ストロンガーの娘にして、勇者ですっ!!」
……シフォンちゃんの親友、まさかのストロンガーさんの娘かよっ!?あの人妻子持ちだったのか!?最近で一番の衝撃だわ!
……ここで、ふとある出来事が頭をよぎる。
『あのさ……シフォンちゃん』
『なぁにおにーちゃん?』
『』その『すーちゃん』って……ストロンガーって名前じゃないよな?』
『だれ?その人』
あの時感じたストロンガーみは間違いじゃなかったんかい!当たらずとも遠からずってやつだな、おい!
「ス、ストロンガーさんの……娘さん……!?」
「あの人、子供いたのね…………」
「ライカちゃんもビックリです……ストロンガーさん、娘もやばいとか何事です……?」
他の人達もほぼ同じ感想を抱いた模様。まぁそうなるよな、無理もない。
そんな呆けた俺達を気にせず、ストロンゲストは更にこう告げる。
「しーちゃんの危険を感じてここまでやって来ました!だから、今のわたしは勇者にして勇者にあらず!ただの……友達を守りたい女の子として、あなたを倒しますっ!!」
「すーちゃん……!」
その瞳には、親友を傷付けたものに対しての怒り、絶対に倒すという決意が宿っていた。その眼光は、小さい身体から放たれているとは思えないプレッシャーを放つ。
「……私も、お前達の危険を察知してここまで飛んできた。……さすがに、ここまでの実力者も助けに来ているとは思わなかったが……まぁ、あの子がいなかったら突入出来なかったし、助かった。お前達とは何だかんだ言って色々あったからな、見捨てるなんて出来ん!」
ハルバさんも、そう告げてくれる。……あぁ、今まで迷惑かけてばかりですみません、危機を察知して助けに来てくれるなんてありがとうございます!これ、信頼されてるんじゃない!?
「ハルバさん……!」
「危険を察知して飛んできてくれるなんて、嬉しいですっ!でも、どうやって危険を察知したんですか?ここ、外界に向かう魔力も遮断されるんで危険察知魔法とか位置検索魔法とか使えないはずですよ?」
え?そうなの?じゃあなんで、(ストロンゲストは別として)みんなここが分かったんだ?
「……その、お前達街の門であった時『珍しく何も無く終わった』って言っただろう?……お前達が何もやらかさない訳が無い、きっと何かやらかすに違いないと思って……ここに来てみたら、こうなった」
………………。
………………し、信頼ゼロ!これは酷い!!
「クッ……小癪な、小癪ナ、小癪な!!今すグ貴様らヲ八つ裂きニ……」
「させないよ!『シールド』!!」
「あぁモうクソ、何だソの防御魔法!?俺の攻撃ガ一切通用しなイなんテおかしイだロ!天界指名手配受けテんだゾ!?」
「勇者ですから!」
「無茶苦茶ナー!?」
こちらが悠長に話をしている隙にベノムが不意の一撃を浴びせようとするも、その攻撃はあっさりとストロンゲストに防がれる!流石勇者、そしてストロンガーさんの娘、幼女の時点でクソ強い……!
「じゃあとりあえず、一撃入れさせて貰いますね!」
「…………ヘッ、俺にハ実態が無イ。身体は毒ノ霧そのもノだ。魔法耐性モ強イ俺に、果たしテ一撃入れることが出来――」
「『邪悪な霊を現世に繋ぐ鎖』っ!!」
「せメて最後まデ言わせロー!?」
問答無用で、強烈な一撃をベノムに叩き込む!剣による攻撃なので、すり抜けるかと思ったんだが、普通に命中した!?それどころか、剣が命中した所から段々身体の色が濃くなっていく!?
「……はいぱーようじょ、これって……まさか」
「そのまさか!皆さん、あいつに実体を付与することに成功しました!毒に気をつける必要はありますけど、これで物理攻撃は通るはずですっ!」
「流石すーちゃん!カッコイイ!」
「ありがと、しーちゃん!」
マジか!つまり、毒対策さえ出来ればルミネが直接殴ることでもダメージが通るってことだろ!?それだったら、勝てるかもしれないぞ!
「クッ……だ、だガまだダ。俺は魔力耐性モ物理攻撃耐性も高イんだ、貴様の攻撃だケで削りきれル訳が……」
「ふんぬっ!そぉいっ!!」
「………………ハ?」
背後から鎖を引きちぎる音がする。それは、つまり……。
「ふふふ……今までよくもうちのレイとルミネ、それにディアブロをいたぶってくれたわね?」
「自由に動けるって、生きてるって素晴らしいのですよ~うぇへへへへ~。今解放されてすっごく嬉しいので……嬉しさのあまり殺しちゃっても仕方ないですよねぇ?」
……こいつらの、戦線復帰だ!ルミネ、でかした!
こいつらは普段からアホなことしかやらかさないけど、実力は本物だ!俺達なら…………いや、俺達とみんな(主にストロンゲスト)なら、勝てない相手などない、はずだ!
「……というわけで、降参するなら今のうちですよ?モンスターさん」
「クッ……クハハッ……降参なんカ……する訳なイだろうガ!殺す……!確実に殺ス……!殺す殺スこロスコロスッ!!」
ストロンゲストは最後の慈悲をベノムにかけるも、ベノムはそれを蹴る。そして、今までとは比べ物にならない程の殺意を見せながら、此方を睨む。
……その殺意を表面から受け止めて尚、余裕を見せながらストロンゲストはこう告げる。
「そっか。それじゃあ……お前を倒してみせます!…………わたし以外の皆さんが!!」
「いやちょっと待ってお前戦わないのー!?」
またこの流れかい!っていうか何でお前が戦わないんだよ、間違いなくこの中で最大の戦力はお前だろ!
「えっと……すーちゃん、でいいのかな?な、何で一緒に戦ってくれないのかな~って……」
「それは簡単です。わたしが、勇者だから」
「……勇者だから?」
……勇者だったら、こういう状況で剣を真っ先に抜き先陣を切るものじゃないのか?そんな考えと疑念が、俺の頭を埋め尽くす。
「パパが教えてくれました。勇者とは、基盤を救う職業だって」
「……基盤……?」
「はい。勇者という職業は、人々が安心して生活出来る環境を守るため戦う存在。言わば、縁の下の力持ち。皆を影から支える、世界の裏方だと思うんです」
「……裏方……」
「だから、わたしはあいつにトドメを刺しません。それは皆さんがすることですから。わたしはあくまで、基盤を救うだけ。……だから、あとは皆さんで、皆さんの物語を救うんです!」
……………………物語を救う、か。
……確かに、チートに頼ったり誰かに頼んだりして、自分は楽して何かを成し遂げても、何も楽しくないし、何も得るものはないだろう。でも、苦労して……それこそ命まで削って物事に挑んだなら、負けても何かを得ることが出来るはずだ。だったら、俺は……。
……いや、違うな!俺達は、やるんだ!
「なので後は皆さんにおまかせします!その代わりと言ってはなんですが……『魔力増強』っ!!」
ストロンゲストが何やら呪文を唱える。すると……何だろう、この感覚……身体の中から何かが湧き出てくるような……。
「皆さんに五分間魔力を消費せずに魔法を使えるようになる魔法をかけました!強力な魔法だろうが何だろうが打ち放題です!」
………………ほう。
「………………………………」
「「「「「「「………………………………」」」」」」」
暫しの間、お互いの間に沈黙が訪れる。
「………………や、止メろヨ?絶対ニ止めロよ?」
「突撃ーっ!!」
「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」
「グァァァァァァ!や、止メ、止めローッ!!」
悲鳴を上げるベノムは完全無視!皆が攻撃の準備を行い、一斉に畳み掛ける!
「あははははっ、とらっかちゃん、他の重機の皆!『死霊術』よ、やっちゃいなさい!」
『突撃ですー!続けー!!』
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
「グォォォォォォ!?」
「あっはっはっは!あーら不思議、ポケットの中からキュートなライカチャンが一体!もひとつ叩くとライカチャンが三十体です!いけー!!」
『『『爆発だー!!』』』
「ギャァァァァァ!!」
「フェル、行くよ!『ファイア・アロー』乱れ打ちっ!!」
「……おっけ。『フェルコン・パンチ』ひゃくれつけんだ、おらぁ!!」
「痛い痛イイタイ!?やッ、止メろォォォォォォ!!」
「私も行くぞ!『魔槍一閃』ッ!!」
「ヒギャァァァァァ!!」
それぞれが得意な攻撃をありったけ叩き込む。その結果、戦場はトラックが超速で行き交い爆発がそこかしこで起こり炎と氷が飛び散り拳と槍が容赦なく炸裂する混沌の渦、地獄絵図と化す!そんな中俺はバズーカに取り憑いてちまちまダメージ与えてるよ、うん!多分貢献はしてる、少し!
でも、いいぞ!ベノムに怒涛の勢いで畳み掛けてることもあって、あいつのプレッシャーが大分弱まってきてる!弱ってるぞ!!
「クハッ……何故、こノ俺が……こんナ奴ラに……」
「俺達は一人だと能力に問題があるけど、その実能力が特化型だから集まってぶちかませる状況になると強いんだ!思い知ったか、ベノム!!」
「馬鹿な……馬鹿ナァッ……!!」
「ルミネ!シフォン!決めてやれ!!」
「了解!!」
「任せて!おにーちゃん!!」
俺は、皆が猛攻撃をしている中準備をしていた二人に合図をする!さっき言ってた切り札とやら、ぶちかませ!
「シフォンちゃん、行くよ!『ゴーレム錬成』っ!」
「………………!」
「あれは……まさか……!?」
ルミネがゴーレム錬成を発動させると、シフォンは宙に浮き、光を放ち始める。…………なるほど、そういう事か!理解した!!
シフォンは光を放ちながら、オーラを纏い始める。そのオーラは具現化し、どんどんシフォンの身体を包み込んでゆく。そして……!
「これが、わたしの切り札!『ゴーレム合体』だよっ!!」
……シフォンが、ゴーレムと化した!!
「いつでも行けるよ、おねーちゃん!!」
「それじゃ、行くよ!!せーの!!」
「や、止メッ、止めロォォォォォォォォォォォォ!!」
「止めてたまるか!『ゴーレム投擲』っ!!」
「『シフォン・タックル』ーっ!!」
凄まじい腕力からとてつもない勢いで投擲されたゴーレムは、光を放ち真っ直ぐにベノムへと向かって行く!!
「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」
「グァァァァァァァァァァァァ!!!!」
そしてゴーレムはその勢いのままベノムを穿き、ドロモス・ベノムは断末魔の声を上げながら爆発四散した!!
俺達の勝利だ!!




