37.強敵ドロモス・ベノム
「クケケ、考えル事が甘イんだよ。貴様ガ鎖を断トうとしてイる事なド、お見通シだ。お返シに、苦痛の呪イのプレゼントダ」
……これは、まずいことになったぞ……。
ベノムへの反撃の為に、俺が囮になってルミネに拘束されてる三人を救出してもらおうとしたまではいいものの、その目論見は阻止、しかも呪いをかけられてしまった。
「ちょっこれ鎖に呪いかけてあるです!?これじゃルーちゃんが切ろうとしても呪い発動しちゃうじゃないですか!!」
「……うん、この鎖、触ると滅茶苦茶痛い……これを切るのは、多分無理……」
ルミネは顔に苦痛を浮かべながらも必死に切ろうとしていたが、呪いの苦痛のせいで力が入らないのだろう、鎖が切れることはなかった。
「クハハ……この俺ヲ出し抜こウと不相応にモ考えタこと、後悔スるが良イ!さァ、苦しメ苦シめ!!ヒャハハハハハハ!!」
「っ……こいつ……」
「……ちょっとこれ、痛すぎます……辛いですぅ……」
「……流石の私でも、これはちょっと痛いわ……今にも意識が飛びそう……」
「……ごめん、悪魔でもこれはキツイ……むりぃ……」
三人の表情は苦痛に歪み、見ていられない程に悲壮感を放つ。でも、俺にその光景を止める程の力は無い。クソ、自分が何も出来ないのがもどかしい……!
「フフフ……さぞ辛イだろウ?どうダ、俺に従ウと誓うナら呪イを解いテやるゾ?」
こ、こいつ、卑怯な……!
「……そうすれば、これ解除してくれるの?」
「あァ、そうダ。解除でモ何でモしてやろウ」
「何でも……です……?」
「お、おい、そんなの罠に決まってるだろ!惑わされるな!」
「うるセぇ」
「っ!?」
しまった、急に攻撃が……!?
魔力弾での攻撃をもろに浴び、身体が宙に投げ出される。身体は為す術なく地面に叩きつけられ、自由を奪われる。……クソっ、致命傷ではないものの暫く動けそうにねぇぞ、これ……。
「さぁ、そコのゴミなんテ放っておイて決断スるが良イ。俺の下僕になルことを選ぶカ、死を選ブか」
「わ、私は……」
「私は……ですね……」
「リヴィちゃん……ライカちゃん……!?」
頼む……誘いにだけは乗るな、絶対……。
「さァ早く言うンだ。そうすレば貴様らだケでも助かルんだぞ?言えヨ、早く言エ!」
「「だ が 断 る っ !!」」
「…………何だと?」
お前ら……!
「だが断るって言ったのよ、聞こえなかったのこの陰キャ!」
「陰キャ!?」
「そうです!毒と呪いとかいうネチネチした戦法使うとか、確実に陰キャです!そんなやつの誘いなんて乗ってやるもんですか!」
「そう、この私達が一番好きなことは……」
「「自分が絶対的有利に立っていると思っているやつにNoと言ってやることよ(です)!!」」
とってもジョ○ョ!でも誘いに乗らなかったのはナイス!甘言に惑わされず、きちっと正義を貫いてくれたのが素直に嬉しい!
「……貴様ラ、俺の提案は聞キ入れラれないト?」
「そうです!さっきも述べた通り、反逆します!悪堕ちなんて、以ての外です!」
「……それと、あなたさっきレイのことをゴミって言ったわよねぇ?」
「言っタが、それガどうしタ?」
「私の事をトラック女とかネタロマンサーとかネクソマンサーとか言う分には結構だけど……。私の仲間を、大切な仲間を馬鹿にするのは…………絶対に許さないわよ!」
リヴィさんクソかっけぇ!やばい、やばいよ!普段ポンコツな分余計かっこよさが際立ってる!お前今、輝いてるよ!
「だガ、貴様ラは呪イがかかっテいるんダぞ?その苦痛ニ耐えられルと言うのカ?」
「ふっ……それに関しては問題ないわ」
「……何?」
「何故なら、私達……」
「「呪いなんて全然効いていないからね(です)!!」」
「……何ィィィィィィッ!?」
えっマジで!?嘘だろ!?こっちもビックリだわ!
「え、あの……二人とも、痛がってなかった……?」
「あれは演技です!本当は全然大丈夫です!ピンピンしてます!」
「……マジか……」
すっげぇ顔が苦痛に満ちてたように見えたけど、あれ演技だったのか……マジかよ……。本当にこいつらって無駄なところで才能を発揮するよな……。
まぁそれはともかく、呪いが効いていないのはとてもナイス!今日の二人、なんか凄くかっこよくない!?
「な、何故だ!?何故俺ノ呪いガ効かナい!?」
「ちょー可愛い天使である私に、呪いなんて効くはずがありません!天使は強いんです!」
「ふっ……私もネクロマンサーだからね、そんな闇魔法なんて効かないのよ」
「馬鹿な!?そンな理由で俺の呪イが効かなイ訳ねェ!何か他ニ理由ガ…………あッ」
「……何ですか?」
ベノムは少し考える素振りを見せた後、何か思い当たることがあったのかは知らないが間の抜けた顔をした。
やめろよ、ここにきてかっこ悪くなるなよ……。
「……俺ノ呪い、精神ヲ狂わせテ苦痛を与えル呪いダから、元かラ狂っテるやつニは効かなイんだっタ」
「…………」
「…………」
……………………か、かっこ悪ーっ!
「……わたしが触れた時は、普通に痛かったよ」
「……わ、私は…………普通に………………苦し………………い………………」
「おいディアブロさんが死にかけてるぞ!早くあいつ倒さないと!」
ディアブロは言わずもがな常識人、ルミネも狂ってる訳では無い!なるほど、そういう事だったのか!
そしてもうディアブロさんの顔が苦痛に満ちすぎて見ていられない程に!その顔は見せちゃいけないやつ!指定がかかるやつっ!!
「じゃあ、さっさと片付けてやろうかしら。…………ルミネとレイが」
「そうそう私とレイくんが……って二人は!?」
「無理よ、鎖切れないもの」
「ビクともしません!はっはっは!どやぁ!」
「ウザいから止めろ」
結局見せ場は作ったけど、自分達は何も出来ない訳で……。なんか、さっきまでのかっこいいのが完全に相殺された気がする。マイナスじゃないだけ、まだマシか……。
「それじゃ、今度こそ正面衝突であいつ倒そう!……レイくんが!」
「そうそう俺が……ってちょっ!?」
まさかの天丼ネタ!?え、何でお前は戦わないの!?
「えっ……お前、何で」
「あいつ毒霧展開するから近づけないもん!遠距離攻撃できるレイくんに削りは任せた!」
「確かにそうかもしれないけど、酷くない!?俺だけで勝てると思う!?」
「…………きっと、勝てる?」
「なんで疑問形なんだよ!?」
マジで俺一人でやらないといけないの!?嘘だろ!?嘘だよね!?嘘って言ってくださいお願いします!
「……あと、それと」
「……何だよ」
ルミネが距離を詰めてくる。そして、俺の耳元に口を近づけ、小さな声で……
(……一応切り札はあるけど、下手に切ると対策されかねないから。それまで、なんとかあいつの体力を削って……。お願い)
……と、言った。
なるほど、そういう理由が……。
…………やるしか、ないのか。
「……どうしタ?貴様一人で立ち向かウのでハないのカ?」
「……あぁ、そうだよ!こうなりゃヤケクソだ、やってやるよっ!!」
そうして俺は地面を蹴り……いや足ないけど、感覚的には蹴ってる感じで、跳躍する!
「とりあえずこれでもくらえ!技名は適当に……『連射』!」
「くっ、割とやルな!だが、これハどうカな?『ポイズン・ボム』!」
「危なっ!?って、痛っ!?」
直撃は躱したものの、弾けた毒の飛沫に当たってしまった!やばい、この毒想像以上に強いぞ……!
「『ポイズン・ボム』!『ポイズン・ボム』!『ポイズン・ボム』!」
「クソっ、そんなに連射されると攻撃する隙がない!」
何とか身体を捻り雨のように放たれる毒の爆弾を躱す。しかし……
「『ポイズン・ボム』!」
「っ!それは避けられな……ぐおっ!?」
避け続けるのも無理があり、もろに毒の爆弾をくらってしまった。全身が重い感覚に包まれ、身体の感覚が無くなっていく。やばい、これはもう動けないかも……。
「……終わりダ、口程にモなかっタな」
「くっ……ま、まだ、終わった訳じゃ……」
「強がっテも無駄ダ、さテ……トドメを刺スとしよウ」
「駄目っ!レイくんが駄目なら、私が申し訳程度に使える攻撃魔法で……!」
「おっト、動くナよ?毒液塗れニされたイか?」
「くっ……ひ、卑怯な……」
あぁ、俺、死ぬのか……。そんな実感がひしひしと湧いて出る。五感が無くなり、脳と心だけが実感を伴う中で、俺は死を覚悟し目を瞑り……。
「……さァ、終わりダ」
「駄目っ!!!!」
「…………何?」
「…………え?」
「…………えぇっ!?」
だが、攻撃により意識が飛ぶことは無く、ベノムが疑問の声をあげる。そして、聞いた事のある声が。この声は……もしかしなくても……。
「おにーちゃんとおねーちゃん達に手を出すのなら、わたしが許さない!わたしが……シフォンが、相手になるよ!!」
「シフォン……ちゃん……?」
目を開けて飛び込んできたのは、膝を震わせながらも俺の前に立ち俺を庇うシフォンちゃんの姿だった。




