36.ターン・ラウンド・レイ
「「反撃開始だっ!!」」
何とか鎖から抜け出すことが出来た俺達、今までは一方的に拘束されてただけだったけど、それももう終わった!ここからは俺達のターンだ!
「クソっ、抜け出しテきたノは想定外だっタ……だが問題ハない、毒ト呪いで貴様ラを殺しテくれルわ」
「レイくん!来るよ!」
「OK!そっちも頼んだぞ!」
「了解!とりあえず先手必勝、『フェルコン・パンチ』ィ!!」
「……『ポイズンミスト』」
「ちょっ、ヤバっ!?あっ、危ない……」
先制攻撃で一気に片をつけようとルミネが飛びかかるも、ベノムが展開する毒霧に阻まれ後ろに飛び退き、一撃を入れるのに失敗。毒と厄災の魔獣と呼ばれた位だ、きっと毒は強力に違いない。咄嗟の判断、ナイス!
「ライカ!あれってどの位強い毒か分かるか!?」
「やばやばのやばです!超強力な対毒スキルでもない限りまともに浴びたら苦しみ抜いた末に内蔵が全部毒に侵され身体が溶けて死にます!!」
薄々分かってはいたけど、やっぱりえげつねぇな!
……でも困ったな、それだと近接戦闘特化のルミネは手出し出来ないぞ……。
……ということは、リヴィ達を解放しないとだよな……。
ルミネが悪戦苦闘している中、こっちも必死に思考を巡らせる。考えろ、考えろ……あいつに打ち勝つ方法を……
「クハハ、近接戦闘だケが取り柄ノようダな!だガ、そんなヨうじゃ俺ヲ倒せナいぞ?」
「くっ、あの毒霧が邪魔すぎて近づけない……」
「悔しかっタら魔法ノ一つデも使ってミるんだな!フハハハハッ!!」
…………魔法?
………………そうか!あの手段を使えば俺でも対抗できる!じゃあその間にルミネに……よし!これで行こう!
「魔法……攻撃魔法なんかわたし使えないよ……」
「大丈夫だ、ルミネ!」
「……レイくん?」
こっちに注意を向けさせ、身振り手振りで作戦を伝える。伝わってくれ、お願いします……!
「………………!」
ルミネは一瞬考える素振りを見せた後、何かに気がついたような表情を見せる。そして俺にジェスチャーで合図を……
……よし!そのジェスチャーが返ってくるってことは理解してる!このまま作戦決行だ!
「分かった、それじゃあ、任せるね!」
「任せろ!」
「死なないでね!」
「あぁ、死にたくない!」
「……そこは、『あぁ、死なないさ』じゃないの……?」
おっとルミネさんの視線が冷たい上に痛いです、でもこんな風にいつもみたいなノリの方が緊張せずに行ける。……大丈夫、行けるぞ。
「……ほウ?次はお前ガ相手カ」
「そうだ。……言っとくけど、俺は」
「弱いわよ!!」
「余計な口を挟まんでよろしい!!」
折角決めゼリフ言おうとしてたのに、何水差してくれてんだお前!
って、そんなことどうでもいい!とりあえず戦闘に移らなくては!
「武器モ持たズに戦おうトするトか、笑わせテくれルな!俺に勝負を仕掛けタこと、後悔スるが良イ!!」
そう言いながら、ベノムは周囲に纏う瘴気を更に濃いものとする。そして、俺はその殺る気十分のベノムに向かって……
「…………ハ?」
……背中を向けた。
「え」
「ちょっ」
「レイさん!?」
そして……
「あっ逃げました!?逃げましたよレイさん!?う、嘘ぉ!?」
「れ、レイー!?どこ行くのー!?」
「……それは、男として……いや人として、どうなんだろう……?」
全力ダッシュ!真面目に戦うと思った!?残念弱いレイさんでした!!
……でもこれも意図があってしてる事なんだ、決してお前らを見捨てて逃げようってわけじゃないんだ。だから、その……ルミネ以外の人、その冷たい目止めてください。心が、痛いです。
「………………すげェな、こんナ啖呵切っテおきナがら敵前逃亡するヤつ初めテ見たゾ……。あレか?後ろかラ毒でモ吹きかケれば良いノか?」
おっと、天界に指名手配されてるようなやべぇやつからも引かれてますね、はい。冷たい視線が心地よくなる前に、早めに終わらせよう……。
「誤解されそうだから言っておくけど、別にそういう意図で背中向けたわけじゃないんだからねっ!」
……その前に冷たい視線に耐えられなくなったので、言い訳をしておきました。どう見てもチキン&ヘタレです、本当にありがとうございました。
「……ツンデレ?」
「違うぞ!?」
自分でも言ってる途中にそう聞こえると気づいたけど。
「……じゃあ、なんだって言うのさ?逃げた理由」
「ディアブロさん、良い質問!それは……こうするためだっ!!」
「なッ!?キ、貴様、まさカ!?」
「そのまさかだ!『憑依』っ!!」
部屋の端っこに積んであった山のような魔術用の道具。あの時見た感じ、壊れていそうなものもあった!バニラ状態だと貧弱な俺。ならば、何かの力を借りるまで!!
「成程、そういう事だったの!?だったらその中だと一番奥に強いのがあるからそれ使いな!」
「ありがとうディアブロさん!」
えーっと、真ん中の方の……?あっこれか、なんか強そうなオーラを感じる!物がありすぎて全貌が全然見えないけど!まぁ、ハズレでもバニラよりは強いんだ、一か八か!
「とりゃぁぁぁぁぁ!!」
取り憑く時に感じる、身体と感覚が一致していない感覚。その不快感を振り払いながら、俺は魔術用の道具の山の中から飛び出す!
「おぉ、やったわねレ……イ?」
「……う、うわお。ライカちゃんそれに憑依するとはちょっと予想外だったです」
…………?
………………待って、え?俺何に取り憑いた?
取り憑いたものと同調していく感覚、それが、徐々に身体の感覚を取り戻させていく。
……取り戻させて、いく。
えっとそれはつまり、身体の質感とか触れているところがそのまま感覚として伝わってくる訳でして。そんでもって、なんか奇妙なんですよ、それ。
……何が言いたいかと言うと……。
その……接地面積が異様に少なくて、手と足の感覚がないんですよ。
……恐る恐る、自らの姿を見てみる。すると、そこに居たのは……
「…………バズーカじゃねーか!!」
そう、バズーカだ。
接地面積、持ち手の所だから少ない。勿論、手と足もない。
……なるほど、さっきの奇妙な感覚はそういう事だったのか!って、アホかー!?ディアブロさんも何これ平然と勧めてくれてんの!?確かに強いのかもしれないけど、扱いにくいことこの上ないわ!
「……なんかモう、一周回っテ貴様のコとを尊敬すルぞ」
「あっ、なんかどうも」
……ボスにも本気で引かれる。これが、安心信頼のトゥットファーレクオリティ。
「……って、何言っテんだ俺。こいツ倒せバ良いダけじゃネぇか……。といウ訳で、死んデ貰ウ!!」
「いやちょっといきなりですねっ!?」
唐突にこちらに向けて撃たれる無数の毒針。俺はその毒針を必死で躱そうと……あっ意外としなるこの身体!割と機動力あるぞ!?
「チっ、避けラれたカ!」
「よしじゃあこっちも……やり方とかよく分からないけど、どーん!!」
「グッ!?」
あっ弾でた!なるほど、下腹部辺りに力を込めると、魔力弾が出るのね!
「はっ!よっ!ほっ!!」
「クソ、すばシっこイ!ああモう畜生、意外と痛イなそレ!」
「凄いです……あのレイさんがまともに戦って押し気味です」
「絵面はシュール通り越してカオスね、あのレイだし」
「ですね」
なんか人を貶してる香りが滲み出てるとともに余裕あるね君達!?拘束されてる自覚ある!?
……まぁ、拘束されてる自覚はそろそろ無意味なものになるんだけどな。
「レイさーん、頑張ってくださーい!!……おりょ?」
(しー、静かに)
(……ルーちゃん、どうしたんです?)
(レイくんが惹き付けてくれている間に、鎖切るよ。動かないでね)
……どうやらルミネの方も、上手くいっている様子!
ちなみに、作戦の全容はこうだ。まず俺が何かに取り憑いて戦闘能力を獲得し、ベノムを引きつける。その間にルミネに三人の鎖を切ってもらい、その後は数の暴力。
……今の所ベノムは拘束されているライカ達の方を向いていないし、いける、いけるぞこれ!
(それじゃ、切るよ?ちょっと痛いかもだけど、我慢して―――)
「『カースド・ディメント』っ!!」
「あばばばばばばば!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「えっちょっと待って!?痛い痛い痛い痛い!!」
「みんな!?」
…………嘘、だろ。
ルミネの手刀が鎖を今にも断ち切ろうとしたその瞬間、ベノムから魔法が放たれた。それは邪悪な気となり三人の元に送り込まれ、三人は苦しみ必死にもがいている。これって……。
「クケケ、考えル事が甘イんだよ。貴様ガ鎖を断トうとしてイる事なド、お見通シだ。お返シに、苦痛の呪イのプレゼントダ」
……まずい、数少ない勝ち筋が完全に断たれてしまった……。一体、どうすれば……?
タイトルはつまりそういうことでした。次回へ続きます。




