32.七賢者……?ウィークネス
「私、七賢者ですから。私の名前はウィークネス、以後お見知り置きを~」
…………予想外の展開になってしまった。
口ぶりから途中から察してたけど、七賢者に遭遇するとは……。
何だかんだ戦闘では頼れる二人もいないし、一体どうすれば……?
「……七賢者……」
「はい。マハネールさん倒したって聞きましたよぉ、凄いですね~。あの人結構強いのに」
その少しおちゃらけた口調からは、余裕を感じさせる。これは名前とは裏腹に強敵かもしれないぞ……。
……その前に、確認しておかなければならない事がある。
「お前……何の七賢者なんだ?」
「おっ、鋭いですね~!私達に二つ名があるの知ってましたか!」
「そういえば、あの酢豚『幻獣使いの七賢者』って名乗ってたね……よく覚えてたねレイくん」
「まぁな」
その戦い方が分かれば、戦いが少しは楽になるかもしれない。それを見越しての質問だ。さて、どう返ってくるか……。
「いいですよぉ、私の二つ名は……」
「……二つ名は?」
ゴクリと唾を飲む。暫しの沈黙の後、ウィークネスの口が開く。その口から紡がれたのは……
「『最弱の七賢者』!……はい、弱いことには定評のあるよわいさんことみんなのウィークネスさんですよぉ!」
「「それでいいのか七賢者!?」」
本当に名前通り弱かったの!?何でこの人七賢者やってるんだ!?
「えっ、じゃあその強そうなオーラは何なの?」
「あ、これ?魔力を放つだけのハリボテです、ほら」
「本当だ……よく見たらそれただのハリボテだし、魔力もほぼそこからしか検知出来ない」
「はい!ぶっちゃけさっきシールド使った時点でもう疲れましたお家帰りたいです!」
「ダメじゃん」
色々拍子抜けである。……っていうか、油断させるための演技じゃないよね?ガチで弱いんだよね?
そう考えていると、丁度よく足元に石ころを見つけた。
……試してみるか。
「……えいっ」
「もう疲れてるので出来れば平和的に解決した痛いですぅ!?ちょっ、やめ、軽く死ねます!!」
「……えぇ…」
俺が投げた石ころはウィークネスの胸の辺りにクリーンヒット、そこにはのたうち回って苦しむウィークネスの姿が。
……いや弱すぎでしょ、ここに来るまでのモンスターの方がよっぽど強いぞ。こんなのがボスでしかも七賢者だなんて、一体どうなっているのか……。
「私の弱さはかの有名なスペさんの五倍位なんです、そういうのやめてくださいー!」
「いやお前それ相当だぞ」
腰の高さから落ちて死ぬ人の五倍弱いって、どういうことなの。もうそれ弱いって域を超越してるぞ、おい。
「というわけで!ここはお互い嫌な思いをしなくて済むように、お互いに話し合いで――」
「先手必勝!!」
「わーお!?ちょっ、ちょっと待って待って!?」
ルミネさん、行ったぁ!!容赦ない!
……俺も一応、突撃するか!何もしないとかいよいよ本当の役立たずだし!
「せいっ!とりゃっ!」
「待ってって言ってるでしょぉ!?ちょっとやめてくださきゃー!?」
「くっ、意外とすばしっこい!大人しく殴られてくれない!?」
「無理ですよ!死にますもん!」
ダメだ、ルミネの攻撃が激しすぎて近寄れない!ここはひとまず……
「……『憑依』」
小声でそう唱えると、床に憑依する。このまま床を動かしてあいつを追い込めば……ダメだ硬すぎる!地盤がしっかりしすぎてて動かせない!力もないし!一体、どうすれば……
「やめてくださいやめてください!……っていうか、お仲間さん一人居なくなってません!?あーっとこれは大変です!探しに行った方がいいんじゃないですかそうじゃないですか!?ほら!だからさっさと探しにいけー!かえれー!」
「本当だ、確かにレイくんがいない!でもいる場所はだいたい検討ついてるから余計なお世話!」
「じゃあどこにいるって言うんです!?」
「それは……ここだよ!決めちゃって、レイくん!!」
そう言って、ルミネは思い切り拳を地面に突き立てる。その結果、地面は砕け、破片となって辺りに飛び散る!ナイス、このサイズでしかも宙に舞っている破片なら俺でも制御できる!
「喰らえっ!!」
「えっちょっ明らかに物理法則無視した軌道で破片がこっちにぎゃーっ!?」
破片を操りしっかりとウィークネスにクリーンヒット!俺、今までで多分一番活躍した!ナイス!姿破片のままだけど!!
「ふ……ふふふ……これは流石に無理ですぅ……ばたんきゅ~……」
「…………勝った、のか?」
「うん、元々微弱だった魔力反応が完全に感じられなくなったから、多分死んだよ」
フラグは立ててしまった気がしたけど、どうやら本当に死んでいるようで。……しかし、なんかこう、呆気なかったな……。七賢者の人選、一体どうなっているのやら……。
「それにしても、よく俺の姿が見えなくなった時地面に取り憑いてるって分かったな」
「えへへ、これでもレイくんとは数ヶ月どうせ……いや、寝食を共にしてるからね、うん。そりゃ分かるよ、うん」
どうやら、「同棲」と言いかけたが恥ずかしくなって表現を変えたらしい。その証拠にルミネの顔が赤みを帯びる。確かに同棲って言うとそういうイメージが付きまとうもんなぁ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。今俺達がすべきことは……
「じゃあ部屋の奥行くか」
「そうだね、マジックアイテムありそうだし」
そう、マジックアイテムの回収だ。
そう言って俺達は、奥にあった扉を開ける。そこにあったのは……。
「……祭壇?」
「っぽいね」
神聖な何かを感じる祭壇が、俺達の目の前に現れた。そして……
「これがマジックアイテム?」
「だと思うよ。何かこう、オーラを感じる」
祭壇の上には、紫色の石が収めてあった。どことなく怪しい輝きを放つ石。魔力がこもっているのは想像に難くない。恐らくこれがマジックアイテムなのだろう。
「……これ、持ってっちゃって良いやつなのかな?」
「……いいんじゃないか?呪いとかはなさそうなんだろ?」
「うん。呪いではなさそうだけど、がっちり封印が施されてる。魔力が無限湧きするアイテムだから、セーブしてるのかな」
……魔力が湧いてきて暴走するケースは身近にいるから危険性がよく分かる。そりゃ封印もするってもんか。
「この封印の強固さから見るに、私じゃ解けないな……。ミジンギさんとか魔王さんとかなら解けるかもしれないけど」
「じゃあ、一旦帰るか?」
「そうだね、そうしよう。あの二人もわたし達のこと待ってるだろうし」
「そうだな」
「…………」
「…………」
「「何か問題起こす前に、帰ろうか」」
あの二人、監視役付けるべきだったかもしれないな……。
そんなことを考えながら、俺達は洞窟を後にするのであった。
「あいててて……随分と派手にやってくれましたね恨みますよぉ……。これじゃよわいさんじゃなくてつらいさんですよぉ……。……まぁ、とにかく。作戦第二段階、ミッションコンプリートです。第三段階も成功するといいんですけどねぇ……」
「……え?」
「……えぇっ!?」
洞窟から出た俺達。俺達はリヴィとライカが出迎えてくれるかな?なんて雑談をしながら淡い期待を抱いて洞窟を出たのだが……そこにあったのは……
「ちょっ、どうしたんだお前ら!?大丈夫か!?」
「リヴィちゃん、ライカちゃん、しっかりして!どうしたの!?何があったの!?」
……そこにあったのは、力なく横たわるリヴィとライカの姿だった。




