30.洞窟探索も珍生物と共に
「まーるかいてブォンッ、まーるかいてブォンッ」
「ぼうからひかりでてラ〇トセーバ~」
「ろくがつむいかにUFOが~」
「彷徨った挙句不時着」
「髭を伴い顕現せし者、猫型ロボット哉」
「…………」
「…………」
「…………暇ね!」
「暇ですね!」
レイとルミネが洞窟の中に潜ってからはや二分。……短い?長いでしょ、多分。
そんな訳でもう待つの疲れたわ。猫型ロボットえかきうたで時間を潰すのも無理があるし……。
……時間じゃなくて洞窟を潰そうかしら……あっ中に二人がいた。こんな短時間で忘れるなんて、寧ろ神の域じゃないかしら。
「帰ってくるまで何します?」
「そうねぇ……」
「ボンバーウーマン(物理)なら出来ますけど」
「やりましょうか」
リモコンとファイヤーウーマンを見つけたら勝ち同然ね……!
「……それにしても、二人は何してるんでしょうねぇ」
「うーん……二人で洞窟潜ったからもしかしたらそういう可能性も……」
「……?…………!!ま、まさか洞窟の中でくんずほぐれつ!?」
「だったら面白いわねー」
「ですねー!」
「うふふふふ」
「あはははは」
……実の所、どうなのかしら。二人は本当に何してるのかしらね……?
「戦ってるんだよ誤解すんなッ!!」
「どうしたのレイくん誰に向かって言ってるのそれっ!?」
「すまん何やら邪なオーラを感じてつい!っていうかそれより……!」
「逃げないとー!!」
あー、どうも。レイです。死ぬかもしれません。今までありがとうございました。
……じゃねぇ!生きろ!希望を捨てたら完全におしまいだ!
洞窟に潜ってからはや二分。カップラーメンが出来るよりも早く俺達の目の前に現れたのは……えーっと……えーと……キメラか、これ?
キメラは確か……頭がライオン、胴が羊、尾が蛇だったよな。んで、もう一回整理しよう。俺達を追いかけて来てるのは……
頭と上半身が人間の女性、下半身がエビ、足がカニ、尻尾が馬、そして孔雀の羽。
……うん、正直すげぇキモい!っていうか理解不能!
そしてそんなきめぇラ……じゃないキメラさんが此方を捕捉、全力で追いかけてきている次第です。もう一度言おう、これ死ぬかもじゃね!?精神的にも!
「あんなのに殺されるとか嫌だよ私!?」
「だから逃げるんだよ!ほら早く!」
最悪この速度なら撒ける!このまま……
「いけるとでも思った?」
「っ!?」
「回り込まれた!?」
「でも後ろにもいるよ!?な、何で!?」
「それは残像よ」
残像だをリアルにやられるとは思わなかった……ってそうじゃないねまずいねヤバいね。
「ここは誰も通さない、貴方達はここで終わり……死んでもらうわよ」
……なんて言うか、すげぇ威圧感のあるセリフ言ってるのに姿のせいでそんなに緊張感を感じない。戦闘にあるまじき展開……。
「ふふふ……かかってきなさい?」
「くっ……戦闘開始だよ、レイくん!」
「おう!」
そう言って俺は久しぶりに……本当に久しぶりに戦闘用の憑依するクマのぬいぐるみを取り出す。これ出すのいつぶり?えーっと、最後に出てきたのが七話だから……五ヶ月間出てきてないぞ、これ。俺が憑依使えるってこともう忘れてるんじゃないみんな?
「じゃあまずは……えいっ♥」
「うわっ!?」
「な、何っ!?」
突然、モンスターから淡い光が放たれる。クソっ、直撃……
…………あれ?
…………何ともない。
ただ光っただけだったのか?だったら早く、攻撃を……
「ふふふ……♥」
「レイくん、大丈夫!?早く攻撃しちゃおう!」
「…………あれ?」
「…………?レイくん、どしたの?早く攻撃……」
……なんだろう、この感じ。
あのモンスター……いや、女性を見て湧き出てくる、この感情は。
改めて見てみると、整った顔立ち、抜群のスタイル、美しい足……。その目を見るだけで、蕩けそうになる。
……なんで俺は、あんなに魅力的な女性に手をあげようとしたんだろう?
「……れ、レイくん?どうしたの、なんかおかしいよ……?」
「…………うふっ♥」
女性は、こちらにウインクと投げキッスをした。その暴力的なまでの美しさと魅力が、俺の心を溶かしていく。あぁ、もう何も考えられない……あの人さえいてくれれば、俺は……。
「……………………」
「ちょっレイくん!?何でそっちに憑依もせずに進んでいくの!?ウェイトだよ!ステイステイ!」
「うふふ……どうやらあの子は私の元に来たいらしいわよ?あ、私はデコラ。よろしくねレイくん♥」
「はい……デコラ様……」
デコラ。名前まで美しい。もうどうなっても構わない、デコラ様と一緒に……
「……あっ、そういう事か!卑怯な手を使ってくれたねデコラ!」
「気づいたところでもう遅いわ。だって、彼はもう私の虜だもの」
「だったら……ぶちのめして、術を解除するまでだよ!」
「っ!?は、速い!?しまった、回避が間に合いそうにない!」
「私の大切な仲間の感情を弄んだ罪、その命をもって償え!『フェルコン・パンチ』ッ!!」
「きゃぁぁぁぁ!?……な、なんて力なの……!?」
「…………力、65565ですから」
「規格外……ね…………ぐふっ」
デコラ……さ……ま……?
なんてことだ、デコラ様が……デコラ様が……!俺はこれから一体どうやって生きていけば……!
「…………あれ?」
何で俺、あのモンスターのことを女性扱いしたり様付けで呼んだりしてたんだ?少し前までキモイだのなんだの言ってたのに……。
「大丈夫レイくん……?治った?」
「た、多分?……なぁ、俺ってどうなってたんだ?」
「多分魅了されてた。あ、魅了ってのは異性を自分の虜にして支配したりする魔法ね」
「……マジか」
「マジでした」
それであの変な甲殻類キメラが魅力的に見えてたのか……。…………っていうか俺めちゃくちゃ恥ずかしいこと考えてなかった?思い返してみると言い回しがポエミーすぎる!これはイタい、我ながらイタい!どうしようこれ心に相当なダメージが……なんて恐ろしい魔法なんだ魅了って……。
「……大丈夫?」
「大丈夫だ、ただ記憶は鮮明に残ってるもんで……そっとしておいてくれ」
「……おつかれ」
今後、魅了魔法を使うやつにだけは注意しようと誓った瞬間だった……。
……帰ってこない。
待てども待てども、帰ってこないわね。もう十分も経つって言うのに……
「しかし暇ですねー」
「暇ねー」
「ボンバーウーマン、ポチモン対戦、神々の遊戯……色々やったけど、待ち時間長いですね」
「そうね」
ちなみに、神々の遊戯っていうのは今巷で大流行中のじゃんけんのことよ。なんでも神はじゃんけんで世界の全てを決める……っていう芸人のネタから来てるらしいわ。芸人って面白いわね。
「本当に暇です……何か刺激のあること起きないですかね?」
「それが簡単に起これば苦労しない……ん?」
「みゅ?どうしたんですリヴィりん?」
「何だかあそこの洞窟の壁、ちょっと凹んでない?」
「どれどれ……あっ、本当ですね、なんかあそこだけ凹んでます」
「……暇つぶしにちょっと調べてみようかしら」
そう言って、窪みを押してみる。すると……
「こ、これはっ!?」
「……ちょっと読んでみるわ」
現れたのは、一枚の紙。そこには……
……驚いたわ、まさかこの洞窟にそんな秘密があるなんて……!
「こ、これまずいんじゃないです?このままじゃレイさんとルーちゃんが…………!」
「そうね。崩壊の恐れがあるから戦闘は出来ないけど、早く伝えに行かなくちゃ……」
「そこまでです」
「「!?」」
突如聞こえた声。刹那、世界が反転する。叩きつけられる感覚、遠のく意識。まさか……奇襲……!?
「…………だ、誰です…………?」
「……姿を……見せ……なさい…………」
敵の姿を視認しようとするも、それすらも叶わない。身体が重い、動かすことすら出来ない……。
「……れ、レイさん……ルーちゃん……」
「……マジックアイテムを取ってきては駄目よ、二人……とも……」
薄れ行く意識。あの二人に届けたい、届けなければならない言葉は、届くことなく意識と共に虚空に掻き消えた。
「……これからもっと面白くなるんだから、邪魔しちゃ駄目ですよ?あははははっ!」




