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異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
一章.便利屋トゥットファーレ、開店!
3/110

3.ネクロマンサーって、なんだっけ

毎日投稿のつもりで書いているけれど、筆の進まない牛酪です。それでは、第3話の始まりです。

「ねぇ、そこの幽霊さん。貴方、一体そこで何をしているの?」


俺に話しかけてきたのは、トラックに乗った少女だった。彼女は、ツーサイドアップに纏めた黒髪を風にたなびかせながらトラックから降りる。その肌は白く、ゴスロリ風のひらひらした服を着たかなりの美少女……美少女……だが、トラックが全てぶち壊しにしている感が激しい。異世界でトラックって何だよ!?普通、転生する前に出てくるものだろトラックって!


「えっと……君は……?」

「私?私はリヴィ、ネクロマンサーよ。貴方の名前は?」

「俺か?俺は乙黒玲って名前だ」

「そう。レイって言うのね」


どうやらこの少女はネクロマンサーだったらしい。……一体、何処の世界にトラックに乗ったネクロマンサーがいるというのか。此処の世界か。……っていうか、ネクロマンサー!?てことは、幽霊の俺について何か分かることがあるんじゃ!?


「この辺で幽霊なんて珍しいわね。一体どうしたの?困ってるなら、ネクロマンサーとして事情聞くわよ」

「お、マジか!すげぇ助かる!実はだな……」


俺はリヴィにこれまでの経緯と事情を話す。


「……ということは、レイはこことは違う世界、チキュウって所から来たの?」

「ああ。信じて貰えないかもしれないけど……」

「いえ、此処には別次元から何かを呼び出す魔法や機械もあるし、不思議な話ではないわ。信じるわよ」

「そんな魔法とかもあるのか……まさに異世界、って感じだな」

「……あの、レイに1つ相談があるの」

「ん?何だ?」

「実は私、実態付与っていう霊体に仮の肉体を与える魔法が使えるのよ」

「…………マジで!?」


ってことは、俺、幽霊から人間に戻れるの!?乙黒霊から乙黒玲に戻れるの!?マジで!?神!貴女は神ですリヴィ様!まさに、運命の出会い!セスタさんありがとう!転生場所をここにしてくれて!え、ライカ?知らんな。


「その代わり、1つだけお願いがあるわ」

「お安い御用!!」

「……まだ何も言っていないのだけれど」


身体が手に入るんだったら、どんな要求も安いもの。でも命は勘弁な。消えちゃうから。


「えー、その……私の、仲間になって欲しいの」

「仲間?」

「その……私は、冒険者になりたくてこの街に来たわ。でも、私はまだ死霊術が未熟だし、パーティを組みたかったの。でも、これまでずっと断られてきた……だから、一緒にパーティを組んで欲しい」


ネクロマンサー。それは、死霊を扱う冒涜的な職業。この世界でそうなのかは分からないが、それがリヴィに仲間が出来ない理由だったのかもしれない。でも、答えは1つ。


「ああ、俺もこの世界のこと全然知らないし、仲間が欲しかったんだ。よろしくな、リヴィ」

「……!ええ、よろしく」


この世界に来て少し。前途多難だったが、ようやく、仲間を手に入れた!これで、少しは安心だ。


「じゃあ、早速お願いします!」

「わかったわ。それじゃ、いくわよ」


リヴィが手に持っていた分厚い本を開く。そこから青白い光が放たれ、俺の身体を包み込む。それは、この世界に来る前特殊能力(チート)を貰うための儀式をして貰ったときの感覚に似ていた。


「はい、出来たわよ」


これまでふわふわしていた身体が、すっと重みを得るような感覚。そして、また風が吹く。今度は舞った葉っぱは俺の身体に当たり、ひらひらと落ちた。


「おぉ!すげぇ!霊体から普通に戻れた!」

「それはあくまで仮の肉体だから、レイ自身の本体は霊体のままよ。だから、その肉体から出たり入ったりできるわね。それから、さっき死霊術を掛けて気づいたんだけど、貴方、『憑依』の能力を持ってるみたい」

「『憑依』……!?」

「ええ。物や生物に取り憑いて動かすことができるわ。これを持ってるゴーストは少ないわよ。すごいじゃない」


憑依……憑依……!おぉ!まさか俺にそんな能力が!すげぇ!これはこの力でチート無双する流れだな!


「まあ、自分の力で制御できる相手しか乗り移れないけれど。見た感じまだ制御は難しそうね」


夢が早くも打ち砕かれる!流石異世界、サバイバル!手厳しい!


「憑依がつかえるなら……これ、あげるわ」

「うわっと!何だ、これ?」


リヴィから何かを投げ渡される。なんだか懐かしい手触りのするそれは……


「……ぬいぐるみ?」

「そうよ。可愛いでしょ」


……投げ渡されたのは、可愛らしいクマのぬいぐるみだった。……どういうことですか、リヴィさん。


「えーっと、これは……?」

「このクマさんは、私が死霊術の発動トリガー、つまり依代にしてた物よ。元々霊を取り憑かせたりしてたから、憑依の練習にもってこいの一品。使いこなせれば、モンスターだって倒せるわ」

「このクマ、そんなに凄いものなのか……。ってか、そんなの貰っていいのか?」

「いいわよ。予備があるもの」


リヴィはそう言うと、うさぎのぬいぐるみを取り出した。あれ?ネクロマンサーってこんな可愛らしい職業だっけ?


「……じゃあ、死霊術もかけたし、仲間も出来たし、早速……」


おっ?遂に、冒険者ギルド?俺も、冒険者になっちゃう感じ?よし!じゃあ早速……


「……食べられる草を探しましょう」


……ん?


「ごめん、もう1回」

「食べられる草を探しましょう」


……聞き間違いじゃないね、うん。冒険者ギルドじゃないんかい。どういうことだよ。


「えーと、何故に食べられる草を?」

「食べるものがないからに決まってるじゃない」

「お金は?」

「無いわよ」

「……無いの?」

「ええ、一銭も」

「……ちなみに、この街に来て何日目?」

「……1週間ね」

「……その間、どうやって過ごした?」

「ここで寝て、起きて、冒険者ギルド行って、断られて、もう1回行って、断られて、追い出されて、草を食べて、また冒険者ギルドに……」

「わかったもういい。それ以上聞くと悲しくなるから」


悲しすぎる……創作物のネクロマンサーが三面六臂の活躍をする中、三食雑草の節約をするネクロマンサーが、ここにいた。


「……ていうか、此処の世界ってモンスターとか狩ってお金とか稼げないのか?」

「………………ぁ」


おい。今、「………………ぁ」って言ったぞ、こいつ。ってことは、稼げるんだな、お金。……なんていうか、ライカ程じゃないけど、リヴィも大概ポンコツだな……俺の異世界生活、ポンコツしか周りにいない気がする。


「そうね。その手があったわね。忘れてたわ」

「そういう大事なことを忘れるなよ、こら。んで、お金稼げるんだよな?」

「ええ。モンスターの死体をギルドに持っていけば、お金貰えるわよ」

「よし。じゃあ、早速、倒しに行くか」


いよいよ、ファンタジーらしいイベントが始まる。なんだかワクワクしてきたぞ。よっしゃ!行きますか!


「じゃあ、トラックで街の外まで行くわよ」


そして、ファンタジーらしさは終わる。……うん、もうファンタジーらしさは諦めてるし、いいけどね。


「とらっかちゃん、行くわよ」

『……うん』

「うわっ!?トラックが喋った!?」

「ええ、だって死霊術で動いてるトラックだもの」

「……は?トラックに死霊術?」

「……レイの世界ではトラックに死霊術、かけないの?」


多分、創作物でも普通はかけない。もしそういう作品があったら、すまん。


「レイの世界では違うみたいだけれど、この世界では、壊れてしまった無機物にも死霊術を適用出来るのよ。で、この子はとらっかちゃん」

『はい!ボク、とらっかです。レイさんですよね?よろしくです』

「よ、よろしく」

『はい!よろしくです!』


やばい、この子可愛い。今まで出会ってきたのが切れ者ばかりのこの世界の数少ない良心って感じがする。しかもボクっ娘って。萌えるわ……性別はわからんけどな。


「じゃあ、街の外まで行くわよ」

『はい!出発です!』


こうして俺たちは、街の外に出る。生きるため、お金を稼ぐために。……ネクロマンサーの運転するトラックに乗りながら。


……本当に、ネクロマンサーってなんだっけ。







新キャラはボクっ娘トラックのとらっかちゃんでした。え?前回も最後に出てる?

……前々回のあとがきに新キャラ登場と書いたことをすっかり忘れていた私のせいです、すみません。そして、次回も1週間以内の更新になりそうです。


次回、戦闘&新キャラ登場です。今度は、ちゃんと新キャラ出ますよ!

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