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異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
二章.建築業者系アルケミスト、始めました
21/110

20.踏んだり蹴ったり、和蘭芹事件

今回から二章開幕です。タイトルを見れば分かると思いますが、メインはあの人です。それでは、どうぞ。

えー、現在十二月真っ只中。それに加えて、夜の十時。つまり、とても寒い。でも、世界樹の中はいつだって暖かい。これなら冬なんて全然大丈夫……


……な、はずだった。


「さ、寒いです……」

「冷えるわ……」

「うぅ~……さ、寒い……」

「寒……寒い……へっくし!」


そう。俺達は今外にいる。でも、ただ外にいるだけじゃない。()()()()()()()()()


「うぅ……まさか、()()()()()()()()()……」


……そうなんだよ、便利屋の拠点追い出されちまったんだよマジで……本当にどうしてこうなったんだよ……寒いよ……訳分からねぇよ……

……事の発端は、八時間前まで遡る。








――八時間前、午後二時――


「ねぇ、レイ」

「どうした?」

「ボールを相手のゴールにシュゥゥゥ!」

「本当にどうした!?」


超エキサイティン!?それはオリジナルな佃さんに喧嘩を……ってもうなかった佃さん!


「いや、暇すぎて……依頼、早く来ないものかしら」

「暇だからってお前……っていうか、それどこで知った」

「ストr」

「あーうんもういい、皆まで言うな」


どうやら某勇者さんはサブカルチャーにも精通しているご様子。流石勇者!俺達にできないことを平然とやってのける!そこに痺れ……たらおかしいね!憧れないね!すんでのところで留まれたわ!危ねぇ!


「はぁ……でも依頼ねぇ……大金手に入ったからいいんじゃないの?」

「何言ってるの、便利屋は常日頃から人の役に立つため活動をする職業よ、サボるなんて許されないわ」

「お前ハロウィンの時の事忘れてるだろ」

「……ハロウィンは祝日、いいわね?」

「良くねぇよ!」


あの時は地獄だった……仕事押し付けられて帰ってきたら朝まで拷も……じゃなかったパーティで……

……結局あの後俺とルミネ丸一日寝込んだんだよなぁ……もうハロウィンだけはやりたくないと切に思う……


「それにしてもルミネ達遅いわね」

「確かに、近くの百フロルショップに行くだけなのにやたら時間かかってるな」


気がついてる人も多いと思うが、現在便利屋には俺とリヴィだけしかいない。ルミネとライカは備品の買い出しに向かっているのだ。この世界にも、百円ショップってあるんだな……


……と、思っていたその時。


『でっでーれでれでっでーでででー♪』

「うおっ!?」

「あ、電話ね」

『オクラオクラオクラ~♪オクラ殺しのミキサーマーン♪』

「えーっと、えっと……有った、……はい、こちらトゥットファーレです」


何だその着信音!?オクラ殺しのミキサーマンって誰!?何!?この世界の文化どうなってんのか一回神様にでも問いただしてみたいんだけど!?


『リヴィちゃん!わ、悪いけどすぐ来てくれる!?』

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?痛いです痛いですぅぅ!!やめてくださーい!!』

「!?な、何があったの!?」


直ぐにリヴィか魔法端末をスピーカーモードに変える。すると、ライカの悲鳴が大音量で聞こえてきた。これって……怪物(モンスター)!?いやでも、あいつらは買い出しに行っただけのはずだけど……まさか街に攻めてきたとか!?


『アレが……冬の風物詩が出たんだよ!!』

「……っ……アレね……それは厄介なことになったわね……」


アレ?とりあえず、怪物(モンスター)じゃなさそうだけど……でも、アレって何ですかリヴィさん?


「あのー、アレって……何?」

「アレと言ったらアレよ、冬になるとやってくる、名物のアレ……」

「パセリよ!!」


…………は?


「今、何と?」

「パセリ」

「……パセリ?」

『うん、パセリだよレイくん』


ルミネまで肯定した……これは、ガチだね……マジですか……


『この時期になると、パセリは市場でもよく売れるようになるんだ、旬だしね。……それで、それを阻止するためパセリは合体して植物魔神パセリーヌに変身するんだよ』


植物魔神パセリーヌ……!?もうスケールが規格外すぎてついていけない……何なんだよこの世界!?ドアを蘇生魔法で修理するような世界だし植物が動き出すのは理解できるよ!?でも合体って!変身って!何ですか!?


『今は大丈夫そうだけどパセリーヌには必殺パセリーフブラスターがあるから早めに倒しとかないと大変なことになりそう!という訳で、応援頼みます!』

「分かったわ!行くわよ、レイ!」

「その前にパセリーフブラスターって何なのか聞いてもいい!?」

「植物エネルギーを充填して放つビームのことよ!人や建物には無害だけどセリ科の植物をパセリーヌ化させるの!はい!説明したから行くわよ!」


何それ怖い!パセリーヌがパセリーヌを産む永久機関!


『じゃあ、なるべく早くお願い!切るよ!』

「了解!レイ!トゥットファーレ、緊急出動よ!!」

「分かった!行くぞ!」


――――この時の俺達は、まだ知らなかった。

この後、帰る場所すらなくなってしまうということを。





「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?何で私だけこんなに追いかけられるんですかぁぁぁぁぁ!?葉っぱが!葉っぱが刺さって痛いですぅぅぅぅ!!」

「あそこよ、レイ!」

「分かりやすいな!」

「ライカちゃん頑張って!何とかこのまま持ちこたえて……って二人とも!来てくれたんだね!」

「当然じゃない、仲間だもの」

「まぁな。それより、アレが……」

「……うん、パセリーヌだよ」


俺達の目の前にいたのは……その名に恥じぬ、正真正銘のパセリ。パセリが集まって人のような形を形成している。現在、絶賛街を荒らしている最中の模様

……でも待てよ。それにしてはおかしい所がある。


「なぁ、なんでパセリーヌがあんなに暴れてるのに街の建物は倒壊どころか傷すら付いてないんだ?」

「それは……所詮パセリだもの。パセリが束になったところで、建物を破壊できると思う?」


思いません。パセリが建物を壊すとか、数万年の時を経て化石にならないと不可能だろうね。それでも怪しいけど。

っていうか、イマイチ緊張感のない相手だな……


「アイツを倒せば、今晩はパセリパーティだよ!!皆、頑張ろう!!」

「でも、どうやって倒すんだ?」

「燃やすのが一番手っ取り早いけど……ここは街中だし、火をつけるわけには……」

「毎年どうやって倒してるとかないのか!?」

「えーっと、去年私の地元にパセリーヌが来た時には燃やしても大丈夫な環境だったから燃やしちゃって……参考にならないんだ、リヴィちゃんはどう?」

「去年は……水を張った落とし穴に落としてその後火を付けて煮込んだわね」


パセリ煮込んだの……?それ、美味しいの……?って、そうじゃない!ルミネの経験は街中だから無理だし、リヴィの経験も今から用意するのは時間がかかりすぎる……一体、どうしたら……


「ふー、ふー、よくも……よくもこの可愛いライカちゃんの身体に傷を付けてくれましたねぇ……覚悟、出来てるんでしょうかねぇ……?」


とかなんとか思ってたら背後からドス黒い声が!ら、ライカ……今のお前、顔が可愛い(こわい)ライカさんになってるぞ……!?

追い回されて相当ご立腹の様子!こんなに怒った顔初めて見たんだけど!?こ、これは何か嫌な予感が……


「ら、ライカちゃん……?ま、まさか……!?」

「ライカ落ち着いて、ここは街中よ。ま、街中かかかかかか」


リヴィさんバグってますよ!でも、気持ちは分かる!そしてこいつが何をしようとしているかも分かる!だから全力で止めて……


「お、おいライカ、とりあえず一旦深呼吸でもして――――」

「黙れ」

「ごめんなさい」

「……弱い……弱いよ、レイくん……」


ルミネさん、その一言は心にくるのでやめてください……


「……死んで詫びるがいいです!このクソパセリ!みじん切りどころか木っ端微塵にしてくれます!『魔力変換:超爆発(エスプロジオーネ)』ッ!!」


やっぱりこうなったよなぁチクショォォォ!!

発生した爆風は、辺り一帯を飲み込み始める。俺達が爆発に巻き込まれて意識を失うまでは、一秒もかからなかった。



――二時間前、午後八時――


「うぅ……せっかく……せっかく安定した生活に近づいたと思ったのに……あんまりだよ……」

「……泣かないで、ルミネ。私達は貧乏でなければいけない運命なのよ、ふふ、うふふふふふふふ……うぷ」

「……私もやりすぎました、反省します……本当に、ごめんなさい……」

「……この世界に来てから、ろくなことがない……はぁ……」


……あの後、ライカの爆発によってパセリーヌは倒されたものの、辺りの建物は大きな被害を被った。当然、建物の持ち主は修理費用を要請する。それは勿論、賠償金というわけで……


「百万フロル……賠償金、百万フロルだよ皆……あははははははは」

「ルミネ……」


そう、百万。百万フロルだ。賠償金の一割だけでも支払ってくれとのことで百万フロルの支払いとなったのだが、百万フロルは俺達が貰った賞金であり、ほぼ全財産。つまり……

一文無し、ということだ。


「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」

「ライカのせいじゃないわ、自分を責めるのはやめて」

「……はぁ……レイくん、これからどうしよう……?」

「……とりあえず、便利屋に帰ってから考えよう……」


とかなんとか言ってるうちに、気づけば便利屋。とりあえずゆっくり休みたい、まずは中に入って……

……?待てよ、何だアレ?


「なぁ……あそこ、誰かいないか?」

「え……?本当だ、女の人が立ってる。依頼人さんかな?」

「だとしたら失敗を巻き返すチャンスじゃない、ライカ!早速話を聞くわよ!」

「はいです!汚名挽回ですぅ!」


そう言って、二人は女の人に近づいていく。って、見てる場合じゃない!俺達も行かなきゃ!

「すみませーん!依頼人さんですか!?ここは便利屋トゥットファーレ、何でもササッと解決しちゃいますよ!!さあさあ依頼なら中へ!」

「……貴様達は、この建物の保有者か?」

「……?ええ、そうだけど……って、ちょっ!?」

「や、槍ー!?」


女の人はリヴィの言葉を聞くやいなや、いきなり槍を突きつけやがった!?ど、どういうことなんだ!?


「ちょっ、ど、どうしたんですか!?」

「そ、そうですよ!いきなり槍を向けるなんて……」

「貴様達も仲間か?」

「そ、そうだけど……ひっ!?」


その言葉を聞くと、女の人はこちらにも槍を向ける。フードを目深に被っているせいで顔の様子がよく見えないが、その奥からたまに見える眼光は怒りに燃えている。な、なんで……!?


「あ、あの……あなた、誰ですか……!?」

「……私の名前はハルバ。……貴様達に告げなければならないことがあるのだが、良いな?」

「……大丈夫よ」


うん、大丈夫。たぶん大丈夫。すげぇ怖いけど。でも俺達は今までアホみたいな……いや夢みたいな出来事に関わってきて、生き残れたんだ。なら今回もきっと大丈夫……


「……この土地は私が所有しているのだが、勝手にこんなものを建てたことに関して何か言い訳はあるか?」


急に現実的な問題が降り掛かってきやがったー!?

パセリって「死の前兆」という花言葉らしいです。その通り盛大な死亡フラグが立ったレイくん達はどうするのでしょうか。次回に続きます。

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