11.食べ物の恨みは地獄よりも深い
「森を支配してる七賢者を、倒して欲しいの!!」
シフォンちゃんの口から飛び出してきたのは、そんな衝撃的発言だった。思わず、身体が真っ白になって燃え尽きちゃうほどの衝撃。七賢者?そんなの絶対強いじゃん無理ゲーじゃん!なんでこう、アホみたいな難易度の依頼来ちゃうかな!?今までもドラゴン狩ってきたとはいえ弱いドラゴンとストロンガーさんの後始末だったのにさ!何だ、七賢者って!
「あれ?おにーちゃん、どうしたの?」
「どこ行ったんだろ……あっいた、おーいレイく……うわぁフリーズしてる」
「無様ね」
「ぷくく……レイさんが死んでいる……これはネタ写真が取れそうですねー、『レイ死すと』ってタイトルで」
約1名に拳が飛んだ。
「ううっ……酷いですレイさん……上司にも打たれたこと……あっありました」
そうだね。あったね。だから殴った。差別的表現はダメだ。当小説は健全なお話を心がけているからね。
「えーっと、そんなに端っこの方で皆さん、どうかされましたか?」
「ふぅ……やっと開放された……」
「あっ!ドルチェおねぇちゃん!ロッシェおねぇちゃん!今ね、このおにーちゃんに依頼のこと、話したの!」
「そうなんだ、ありがとうシフォン。じゃあ、私から改めて説明しますね」
「……七賢者なんですよね?」
「「「七賢者?」」」
「あれ?この世界で有名な悪の権化とかじゃないの?名前の響き的に」
「天界から地上を観察してましたけど、そんなの聞いたことないです」
「わたし達も聞いたことないかな」
「マジか……で、その七賢者が何をしてるんだ?」
「あ、はい。あの……わたしがいつもの様に森に食材を集めに行ってる時に、七賢者を名乗る男が食材を独り占めにしていたんです。確か……マハネールとかいう名前だったはずです。とても強そうな幻獣を従えていて……わたしじゃ逃げるのが精一杯でした」
ちょっと待って。七賢者だけでもやばそうなのに、幻獣?え、幻獣!?無理ゲー化が更に加速してるんですけど!?もう全滅エンドが見えてるよ、ぬわーーっっ!!ってしちゃうよ!!
「このままじゃ、食材が入手出来なくてエルマーナが無くなってしまうんです……どうか、どうかお願いします!」
そう頼むドルチェの瞳は、不安げで、だけどもとても真剣で。こっちも不安しかないけど、そんな目を向けられたら……答えは一つしかない。それは、勿論……
「分かった。その依頼、受けるよ」
「……!本当……ですか……!?」
「あぁ。皆もいいよな?」
「ええ、受けない理由がないわ」
「七賢者だろうが何だろうが、鉄拳制裁だよ!」
「こんな美味しいお料理が食べられなくなるのは嫌です!私も、頑張ります!!」
「皆さん……!ありがとうございます!」
「じゃあ早速、森へ行くわよ」
「あ、ちょっと待ってください。実は、あの森……結構複雑な構造になってまして。案内がいないと厳しいんですけど……私とドルチェ、それにシフォンには戦闘能力がないので……誰か案内役がいないと……」
「……そうなんですか」
「あ、それだったら案内役に心当たりがあるわよ」
「リヴィちゃん、本当!?」
「ええ、本当よ」
「リヴィりん、その案内役って、誰なんです?」
「あぁ、それはね……
――みんな大好き、ゲーム好きのあのお方よ」
「掃除しなきゃだね。フェルはそっちお願い」
「……ん、りょーかい。がんばる」
「頼んだよー……さて、やりますか」
「ふんふんふーん♪最近の世の中は平和だからいいよねぇ♪でも、ちょっと刺激が欲しい気もするかなー。あー、なんか刺激ないかn」ドギャッ!!
「たのもー!!」
「刺激ー!?」
毎度おなじみとらっか、今回は魔王城に突撃を敢行!いや、止まれよ!!ディアブロさん轢いちゃったよ、大災害だよ!!
「はにゃら~……な、なんなの~……!?」
「ごめんなさい、アクセルを踏もうとして案の定アクセルを踏んでしまったわ」
「まさかの悪意100%!?……って、その声、リヴィ!?」
「そう、リヴィよ。便利屋御一行でやってきたわ」
「あー、なんかドア壊してすみません」
「それなら私が蘇生魔法で直すので大丈夫です!」
「え、直んのそれ?」
「まあ、トラックをネクロマンスで操る世界だし、仕方ないよね」
「相変わらず破天荒だね君たち……おりょ、新顔2人いるね」
「はい、ルミネといいます。よろしくお願いします」
「ライカです!よろしくお願いしまーす!」
「ディアブロだよ、よろしく……って、あんた、天使?」
「おっ?……そう言う貴女は悪魔ですかぁ?」
まずい!よく考えずに連れてきたけど、ここには悪魔がいるんだった!天使と悪魔のブッキング、こりゃ荒れるかもしれんぞ……大丈夫だといいんだけど……
「天使ってthe清楚って感じでいいよね!私もそういう服似合うようになりたいなぁ」
「そういう貴女も、その羽ステキです!悪魔の羽って、カッコイイですよね!」
「ライカだっけ?あたしたち、気が合いそうだね!よろしく!」
「はい!よろしくお願いします!ぶろりん!」
……どうやら、杞憂だったみたいだ。この世界のいい所って、頭おかしいのが多くてもギスギスした間柄の種族がいない所だと思う。っていうか、ブ○リー?緑髪じゃなくて赤髪だから、違うか。いやそういう理由か?
「ところで、魔王さんいらっしゃるかしら?」
「あ~……ごめん、魔王様は今路地裏ファイターVの大会に出てていないんだ」
路地裏ファイター……街道でファイトしないのか。それ、不良たちのアウトローな戦いじゃない?みんなソニックブーム打ちそう。
「用なら代わりにあたしが聞くよ?なんかあったから急いで車で突っ込んで来たんでしょ?」
「車じゃなくてトラック」
「あ、そっか。で、何があって急い」
「車じゃなくてトラック」
「……なんかあったから急いでトラックで突っ込んで来たんでしょ?」
リヴィさん、そここだわるポイントですかね?
「実は、かくかくしかじかで……」
「あー、なるほど~……あれかぁ~……」
「え?ディアブロさん、七賢者のこと知ってるんですか?」
「あたしもアイスの木からアイス取るために森に行ったら遭遇したのよ」
「なんだその木」
アイスの木……!?この世界ではアイスって木になるものなの?このー木なんの木アイスの木って歌えちゃうの!?
「あれ?知らない?普通のアイスより格別美味しいアイスが成る木、それがアイスの木。フェルがあそこのアイス大好きでさー、今日でちょうど無くなっちゃって困ってたんだよね~……」
「……よんだ?」
「あ、フェル。掃除終わった?」
「ばっちり。……あと、リヴィ、レイ、ひさしぶり」
「ええ、久しぶり」
「元気してたか?」
「……わがげんきはアイスとともにある、アイスさえあればわたしはむてき。のーアイス、のーわーるど」
すげぇな、どんだけアイス好きなんだ?ライフどころじゃなくてワールドじゃん。それってつまり、アイスのない世界なんて要らないって言ってるようなものじゃん。……アイスが無いって知ったらどうなるんだろ?
「……そういえば、そこのふたりははじめまして。わたし、フェル。おねーちゃんのいもーと。いごよろしく。」
「あっ、ルミネです。よろしくね、フェルちゃん」
「ライカといいます!よろしくですふぇるるん!」
「ところで、そーじがんばったからアイス、おっけ?」
あっ。
「あ~……あのね~……実は、無いの」
「え」
その言葉を理解した瞬間、フェルの目から光が消えた。こ、怖い……!いかにもこれから世界を滅ぼしますって顔がする!!
「あのね、アイスの木に取りに行こうとしたんだけど……七賢者とかいうやつが森の食べ物を根こそぎ持ってっちゃったの。だから、アイスは……」
「しちけんじゃころす」
「ひっ!?ふぇるるんから物凄い殺気がー!?」
「しちけんじゃぶちころす」
「目、目が!目が殺人者の目だよ!?」
「しちけんじゃひねりつぶす」
「……すごいわね……」
「しちけんじゃじごくにおとす」
「あちゃ~……やっぱ、こうなったか~……」
全く笑っていない感情の感じさせない瞳で、唇だけを動かして七賢者への憎悪をぶちまけるフェル。その姿に、もはや俺達は恐怖するしかない。ははは、膝、ガックガクです。
「え~っと……あ!そうだ!案内役欲しいんだよね!?だったら、フェル連れてきな!きっと七賢者を倒す戦力にもなってくれるよ!!」
「えっ……それは……」
案内役と戦力は非常に嬉しいんだけど、俺はこのアイスバーサーカーを制御できる気がしない。なんか戦闘のはずみでアイスの木傷つけたら、それこそ俺達の首が飛びそうだし……正直、ディアブロに来て欲しいんだけど……
「……しちけんじゃ、たおしにいくの?」
「えっ……いや……まあ」
「うん……そうだよ」
「……そう。なら、フェルもついてく。そして、しちけんじゃぜったいころす」
「……拒否権は」
「…………な ん か い っ た ?」
「あっ……いえ、何でもないです」
どうやら、七賢者絶対殺すマンは強制加入の模様。……これ、戦闘能力あっても、全員能力極端じゃん。……こんなのでちゃんと協力して勝てるのか!?もう、不安しかないんだけどー!?
「……じゃあいざゆかん、アイスをうばいしふらちもののたいじに!ころすころすころす!ぜったい、ころす!!」
……トゥットファーレ依頼file.3「倒す潰す殺す七賢者」 開始。




