100.明かされる真実
「ふぁぁ…………あれ、ハナさんにレイさん?どうしたんでちか?」
これはどういう事だろうか。
「フ…………リル?」
「はい、フリルでちよ。どうしたんでちハナさん、泣きそうな顔して」
今日に至るまであれ程衰弱していた、フリルが。
「その…………身体は大丈夫、なの?」
「身体でちか?そういえばさっきまで滅茶苦茶だるかったでちが…………今はすっかり平気でち!元気もりもりでちよ」
とんでもなく元気になってるじゃねぇか…………!
いやそれ自体は喜ばしい事なんだけど、絶対おかしい!考えてみろ、ここは冥府だぞ!?ここに来た途端元気になるって一体どういう理屈…………!?いや、待てよ!?
頭が最悪の可能性を導き出す。信じたくないが、そうである可能性はかなり高い。コレッタなら、分かるはずだ…………!とりあえず、聞いてみなくては!
「コレッタ、まさかこれって…………!」
「…………多分お前のそのまさかで間違いない。しかも、おそらくお前の考えている以上に状況は最悪だ」
血の気が引く感覚が走る。ってことは、フリル…………!
「…………ねぇ、玲。フリルが助かって嬉しいのはそうなんだけど…………ここって一体どこなの?玲は何で、ここにいるの?」
「…………ここは冥府。要するに死者が来るところだ」
「…………は?はぁぁぁ!?じゃあ何、あたし死んだの!?え!?」
六花は驚いて自分の身体をぺたぺたと触り始める。…………俺みたいに透けることはないようだな…………
「あ、そっちの人間は大丈夫だ。なんだ、こことは異なる世界から来たりしなかったか?」
「え?そうだけど…………何で分かるの?」
「冥府神だからな」
「ええええぇ!?まさか貴女様、コレッタ様でち!?フローラ様のお知り合いであらせられる!?」
「…………あんまり騒ぎ立てるな精霊。話を戻すと、他の世界から移ってきた奴らはこの世界では正確には生命と定義できない。細かい事は端折るが、天界に魂の本体があるようなもんだと考えてくれ。つまり、あんたは冥府や冥界、果ては地獄に行っても大丈夫だろうさ」
「よ、良かった…………え?で、でも、それって…………」
…………ここに来て、六花も気付いたようだ。そう、つまりそれが指すことは…………
「そうだ。そこの精霊、ハッキリ言うとあんたは死んでる」
視線はフリルに突き刺さった。
「え…………じょ、冗談でちよね?まさかわたしが死んでるなんて訳…………」
「地上では病状が酷かったんだろ?ここに来たら治った…………もう言わなくても分かるな」
「嘘…………嘘でち、そんな…………」
「フリル…………!」
六花の目から涙が零れる。俺だって、すんでのところで止めてはいるもののいつ決壊するか分からない。とんでもなく良い奴なのに…………なのに、どうして…………!
「そして、話はこれで終わらない。むしろここからが本番だ。七賢者とやら、やたら狡猾な真似を…………カス。ゴミ。絶対に倒す」
「お…………終わらないってどういう事なの、コレッタ…………様?で、いいの?」
「むず痒いからコレッタでいい。まぁそれは置いといて、お前らは冥府と聞いて何を思い浮かべる?」
「え?それは…………ぺんぺん草も生えないような不毛の地、みたいな感じかしら」
「俺もそうだな。実際、ここはそんな感じだったし」
その言葉を聞いて、コレッタはため息をついた。
「だよな。…………ところで、あっちを見てみろ」
「あっち?…………は!?おい六花、お前も見えるか!?」
おかしい。あれは絶対におかしい!
「う、うん、見える!フリルも見えるよね!?」
「…………はっきり見えまち。あれは、間違いなく…………」
そこで、一息置いて。せーので同じ言葉を放った。
「「「花!!」」」
そう、花が咲いているんだ!死者の世界である冥府に、花が!
「…………そうだ。花は生命の象徴…………本来ならここにあるのはおかしい。天国に大悪魔がいるようなもんだ。それに、その近くをよーく見てみろ。何か気づかないか」
「よく見る?…………あぁっ!?」
そこに、あったのは……………!
氷だ!間違いない、テトラの!!
「七賢者…………でちか…………!?」
「そうだ。今、地上は氷で覆われているらしいな。その氷がこっちまで侵食してきたって事。…………そして、この氷…………調べてみたら、まぁとんでもなかった」
「一体、どんな…………!?」
「簡単に言うと、生命力を奪う氷だ」
「せっ!?」
それでフリルが衰弱していたのか!なるほど、合点がいった!
「この氷は少しずつだが確実に、じわじわと生命力を奪っていく。…………これ、花の国全土に撒かれてたみたいだな」
「つまり…………どういう事?」
「花の国の生命力が丸ごと奪われつつある。すると、どうなるかだ。生命力を奪われたこの精霊は冥府に来てしまった。後は分かるな」
「ちょっ、ちょっとそれ…………まさか、花の国全体が死ぬって事!?」
「その通りです」
…………凍てつくような声が、背後から辺りに響く。その正体は、振り向かなくても分かる。これは、この声は…………!「」
「テトラ…………!」
そこには、氷華の七賢者の姿があった。
今回でまさかの100話目!(番外編除く)
飽き性な自分がここまで続けられたのも、皆さんの応援のおかげです。まだまだ続きますので、これからもよろしくお願いします!




