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異世界便利屋、トゥットファーレ!  作者: 牛酪
五章.花の国、氷華と冥府の七日間
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97.凍りゆく街

「どこだー!クソ七賢者はどこだよコノヤロウ!殴る!絶対に一矢報いる!!」

「食べ物の恨みは恐ろしいんだよ~悪い子は魔法で焼き払っちゃおうね~うへへへへへ」


お昼を食べるため人気のラーメン屋に並んでいた俺達。やっと食べられる……………!…………そんなタイミングでの七賢者の攻撃。まぁ勿論、放置する訳にはいかないから…………ラーメンは諦めざるを得なかった。クソ、期待してたのに!この恨みはらさでおくべきか!


「声が聞こえたのはこの辺だよな!?」

「多分そうだよしずくん!…………あっ、見て!外壁がカチコチだよ!」


クッキーの指さす方向を見ると…………氷に覆われた建物がそこにはあった。


「あいつは!?テトラは居ないのか!?」

「待ってね、今魔法でサーチかけるから…………あっ、割と近くに強大な魔法反応があるよ!」

「ナイス!って事は、まだ近くに居るんだよな!よーし、とっちめるぞ!」

「らじゃ~!百倍返しだぁ~!!」


クッキーが検知した魔法反応のある先へと走る。そこで見たものは…………


「うわ、なんじゃこりゃあ!?やばいよしずくん!」

「…………酷いな、こりゃ」


花の国とその敷地外を隔てる壁。その付近は、凄まじい冷気が辺りを覆っていた。…………つまり、氷漬けだ。


「でも多分この辺に…………!しずくん!上っ!!」

「上!?…………あっ!」


花の国の上空に見える人影。それは、間違いなく…………


「テトラ!」


七賢者、テトラだった。


「…………っ!見つかってしまいましたか」

「クッキー、魔法で狙撃って出来るか!?」

「出来るよー!捕縛魔法すっ飛ばして落ちてきてもらうかんねっ!『パラライズ』!」

「『テレポート』!」

「ありゃ!?消えた!?」


クッキーが杖の先から放った光がテトラに到達する前に、それをかき消すが如くテトラの身体からも光が。…………既に奴の姿はなく、何も無い虚空を魔法が通り過ぎて行った。


「くっそー、逃げられた!賠償金要求しようと思ってたのにー!」

「まぁそう易易と捕まる気はないって事か…………」

「とにかく皆に連絡だね。あいつ、もう帰っちゃったみたいだし」

「そうだな。それと…………」


俺が言う前に、クッキーの腹がきゅーっと音を立てる。それに触発されたのか、俺の腹もぐぎゅーと返す。


…………それと、やっぱりまずは。


「「ごはんたべたい」」


三大欲求を満たさないと。


◆◆◆


「到着ですー!…………って、何ですここ!?想像してた倍カチンコチンじゃないです!?」

「はいレイくん、注文のお昼ご飯。クッキーちゃんの分もあるよ」

「ありがたやルミたん!カミサマ~」


あの後すぐにボビンへと連絡をし、調査の為に来てくれる運びとなった。しかし、変則的な襲撃を仕掛けて来た以上見回りの強化は必須。でも、状況調査には人手が欲しい…………という事で、リヴィ六花ペアが街の見回り、ルミネライカペアがボビンと一緒に俺達と合流という形に。ついでにテイクアウトのご飯も買ってきてもらった。ここが一番重要かもしれない。いやほんとに。


「早速いただきます!うーん、うまー!最高だねしずくん!」

「ラーメンにありつけなかったのは残念だけど、このホットドッグもイケるな!美味い!」

「…………仲良いね二人とも」


ルミネがなんだか不機嫌な表情を浮かべているような…………?って、そうだ。集まった目的は攻撃の状況調査なんだから、食事にかまけてる場合じゃないよな。ごめん。


「…………で、調査だろ?ボビンから見た感じ、どんな感じなんだ?氷魔法の性質とか」


到着して以来、真剣な表情で氷を見ていたボビンに声をかける。


「うーん、そうだね…………詳しい事はまだ良く分からないけど、何となく嫌な感じがするんだ」

「嫌な感じですか?」

「うん。なんて言うんだろうか、この…………冷たくて生気が感じられないって言うのかな?具体的に言うと、死に近いような感触なんだ。魔力の性質が」

「死ですか…………生命力を奪うって事ですかね?」

「そういう感じ。元々花の精霊達は寒さに弱いから氷漬けにされたらひとたまりもないんだけど…………寒さに強いような生物でもこの中に長時間閉じ込められたら死んでしまうんじゃないだろうか」


生命力を奪う死の氷…………またとんでもないもの仕掛けてきたな…………。


「で、この氷溶かせそうなのかなぁ?ルミたんなんか火の拳使えなかったっけ?」

「あっ、うん。やってみるね…………『プロミネンスナックル』ッ!」


炎を纏った拳が氷へとストレートで突き刺さる。その衝撃に火花は散り煙が巻き起こった。これは、いけたか?


「…………うわ、全然ダメ。溶ける気配すらないよこれ」


しかし無情にも、煙が引いた後に見えたのは先程と寸分たがわぬ光景だった。


「となると、元凶を倒さないと溶けないタイプの魔術式だね。全く…………私達の国にとんでもないもの仕掛けてくれたよ。フローラ様がいればあいつもイチコロなのになぁ」


そうボビンがぼやく。そういえば、女神様は出かけているんだっけか?


「フローラ様、今どこにいるんでしょうね?」

「それがだねライカくん、フローラ様は今現在世界中の植物に女神の加護を与えて回る旅の最中で…………連絡しても暫くは帰って来れないんだよ。それを狙って多分テトラの奴も仕掛けてきてるんだ」


女神様不在の隙を突いたって事か…………厄介だな。


…………っていうか、あれ?


「そういえばフリルは?」


今更ながら、フリルが居ない事に気が付いた。リヴィ達の方に着いて行ってるのかな?


「あっ、そうか。しずくん朝いなかったから知らないのかぁ」

「…………あのねレイくん。フリルちゃん、風邪引いちゃったんだ」

「風邪?」

「今朝から体調不良で休んでて、症状的に風邪じゃないかって感じです。早く良くなって欲しいですよね…………」


そうか…………。花の国が襲われたショックとかもあるのかな?何にせよ、フリルの為にもテトラを倒さないとな…………。


「…………でも、ここで辛気臭い雰囲気出してても何も変わらないさ。フリルくんの為にも、ここは私達が頑張ろう!」

「「「「おー!」」」」


その後、各自街のパトロールをしたが…………その日、テトラが現れる事はなかった。

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