1.詫び異世界転生
初投稿です。至らないところも多々あると思いますがよろしくお願いします。
「乙黒玲さん、ようこそ死後の世界へ。私の名前はライカ、天使です。突然のことで何が何だかわからないかもしれませんが、あなたは天に選ばれたのです」
目が覚めると、俺は真っ白な部屋の中にいた。そこで唐突に現れた美少女―いや、天使はいきなりそう告げた。柔らかく透き通った白い髪、白磁に輝くシミのひとつもない肌。キュッと引き締まっているがとある部位の主張が激しい完璧なスタイル。美しく広がる羽。名実ともに、まさに天使だった。
「死後の世界……?あの、俺って死んだんですか……?」
「ええ。不幸にもあなたはその生涯を事故により終えてしまいました。しかし、あなたの存在はまだ終わりではありません。先程、『あなたは天に選ばれたのです』と言いましたよね?」
これは、まさか。近頃話題の、異世界転生と言うやつじゃないか?
「それって……あの、まさか、異世界に転生出来るんですか?」
天使は頷いた。
「ええ、そのまさかです。あなたは異世界に転生する権利を得たのです」
マジか!何の変哲もないただのオタクな俺でも、あの憧れの異世界転生出来るのか!人生って、本当に何が起こるかわからないな!ひゃっほう!
「あの、盛り上がっているところ悪いのですが、転生の説明をさせてもらってもよろしいでしょうか」
「あぁ、ごめんなさい」
ヤバいな……テンションが上がってきてる。でも、この昂る気持ちを抑えるなんて無理。だって異世界転生だぜ?あの異世界転生。テンションも上がるってもんだ。でも、話はきちんと聞かなくちゃな。「人の話はしっかりと、それはもうしっかりと、世界が滅んでも話を聞くくらいの気持ちで聞きなさい」ってうちの母さんも言ってたし。それは流石にやりすぎだと思うけど。よーし話聞くぞ。ワクワク。
「じゃあ、説明をお願いします」
「それでは、異世界転生のための説明を――
「待ちなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
「ごふぁえふぅぅぅぅぅぅ!?」
……え?
……俺と話をしていた天使は、後ろから突然現れたもう一人の天使の容赦ない鉄拳により、言葉にならない悲鳴を上げて吹っ飛んだ。
……なぁにこれぇ。
「全く、貴女どういうつもり!?そこの方が置かれている状況を碌に説明もせずに異世界転生させようとするなんて!」
「うぅ〜……センパイ…だって状況説明面倒くさかったし、自分のミスがバレる前に異世界に送り込んじゃえば何とかなるかなぁと思いまして……」
「お馬鹿!」
「ひゃん!な、殴るのだけは止めてください!お願いですから~!」
……なんだろう。さっきまで超絶美人に見えていたあの天使…ライカだっけか?急にポンコツにしか見えなくなってきた。っていうか、俺の置かれた状況って、何?説明が面倒くさくて、バレたらまずいような状況。なんだろう、すごく嫌な予感がしてきた。
「あのー、すみません。何か話についていけないんですが」
「……ぁ、申し訳ありません。今説明致しますね。まず、私は天使のセスタと申します。よろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
この人――セスタさんも人間離れした美貌を持っている。そしてまともそうに見える。先程からあっちで殴られた所を擦りながら泣いているライカとは大違いだ。そんな人に話しかけられたら、緊張もするもんだ。
「……?どうかされましたか?」
「あぁ、大丈夫です。気にしないでください」
「そうですか、では説明をさせて頂きます」
…あの天使、どんなミスをやらかしたんだろうか。なんだろう、冷や汗が止まらない。
「単刀直入に申し上げますが…貴方は………………
………………あの馬鹿のミスでその人生を終えてしまいました」
………………は?
「…あの馬鹿がここであなたの世界を覗いて遊んでいるときにしたくしゃみによる魔法の暴発の直撃により――貴方は死んでしまいました」
………………。
………………おい。
なんだそりゃ。トラックに引かれてとか、過労死とか、何者かに殺されたとかそんなテンプレな死に方よりもっと酷い死に方じゃねーか。えぇ……。……人って、驚きを通り越すとむしろ呆れるんだな。身に染みたわ。なんか自分のことなのにまるで他人事のように思えてきた。
「……つまり、そういうことです。……まあ過ぎたことですし、ここは可愛い天使ライカちゃんに免じて許してくださいね♡」
とりあえず殴った。
「……といった事情でして、あなたが死んでしまったのは完全にこちら側のミスです。貴方の貴重な地球での生を奪う形になってしまい誠に申し訳ありません」
「いえ、大丈夫です……それより、異世界転生、できるんですよね?」
ぴぇぇぇと泣き始めたライカを放っておき、俺たちは話しを続ける。
「はい、できます。死んでしまった貴方への保証として、向こうの世界で好きなように暮らしていけるように、無尽蔵の魔力や強靭な身体をもって転生が出来ますよ」
それは、つまり。俺がチート持ちになれるということで。俺のテンションは更に加速していった。だってあれだろ!?チート持ちって異世界でハーレム築き上げちゃうようなあれだろ!?やばい、やばいよ。生きてて良かった!まあ死んでるけど!
「マジですか!じゃあ、直ぐにでもお願いします!」
「…わかりました。では、……えー、これより転生を、始めさせていただき…ますね…」
「はーい、じゃあ、私が執り行いまーす!」
おいちょっと待てや。
「いや、なんでお前が転生の担当なんだよ。お前ドジで俺を殺したじゃねぇか。そこはセスタさんがやるべきだろ」
天使なんて知ったこっちゃない、もはやタメ語で俺は静止する。
「あー、いや、その、あのですね……天使にはそれぞれ役割というものがありまして、今日天界に残っている転生が行える天使はライカしかいないんです」
えっ。
「じゃあ、他の天使が来るまで待てば――
「その、ここの空間はかなり不安定でして、力を持った我々天使は大丈夫なんですが、霊としてここに来ている方は長居すると消滅する危険性がありまして…」
うわぁ、万事休す。これはひどい。
「でも大丈夫ですよ、今まで転生に失敗したことはありませんので…」
「よーし、これ終わったら休憩できます、頑張っちゃいますよー!」
それ、フラグ。もう嫌な予感しかしない。でも、消滅する危険性があるんだよな……うぐぐ……もうこうなったら腹を括るしかないか…は。
「……あー、うん。転生、もうやっちゃっていいですよ……」
「はい!それでは、開始しますね!」
ライカがそう言うと、俺の身体が光に包まれていく。不思議と、力が漲っていく感覚がする。これが、力を得るという感覚なのか。
「主よ、我らの祈りにおいて顕現し、この者に力を与え……ふぇっ……へっくち!」
あっ。
「ちょっ、何やってるの貴女っ」
「あっ魔法の手順ミスりましたっ!?しかも今のでなんかやばい感じになってますー!?」
案の定やらかしたなアイツ!え!?俺どうなるの!?
「うわわわわどーしましょう!?このままだとまずいですー!?」
身体を包み込んでいた光はうねり始め、点滅し始める。身体に注入された力が暴れるような感覚。まるで内側から魂が出ていこうとするような…あ、これヤバイかも。
「ご、ごごご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
その言葉が聞こえると同時に、俺の意識は暗転した。
次回は1週間以内に投稿できる…はずです。遅れたらごめんなさい…
次回、いよいよ異世界での生活が始まります。ヒロインも登場しますよー。