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〇〇のクセに、✕✕な奴ら。  作者: 若丸一叶
3/3

他人の評価を気にするクセに、周りに気づかない奴ら。

久しぶりです。

忘れてました、嘘です。

とりあえず読んでください。

僕は今、『藤堂深幸』と2人で歩いていた。同じ制服を着た、見ず知らずの連中から睨まれながら。


仕方ない、そりゃ仕方ないさ。睨まれもするだろうよ。

まだ、噂の段階だった『藤堂深幸、交際疑惑』を藤堂さんが僕と腕を組んで下校している現状を持って、噂から真実に変えているんだから。

そりゃ睨みもするよな。分かってた。こうなること分かってたんだよ。


「はぁーあ」


思わず盛大に溜息をついてしまう。


すると、僕の目の前に一握りのこぶしが現れた。


「わっ!なにす


「あんた辛気くさいのよ…!」


僕の言葉を遮り、拳を出したまま彼女が喋りだした。


「やめてくれない欝陶しい

 溜め息ついたら幸せが逃げるのよ」


きつめのセリフのわりにニヤついた表情の彼女と、聞き覚えのあるセリフに僕は察してしまった。


これ、僕試されてる。アニメや漫画のセリフのやり取りの再現を僕に求めてるんだ。

頭痛を感じずにはいられない。正直、めんどくさい。ただ、今日から始まった僕たちの関係性を円滑に進めるために、これはきっとクリアすべきなんだろうな。僕は意を決して喋りだした。正直これが正解かもわからないけど。


「あー悪り悪り。

ちょっとぼーっとしてたわ

でも意外だな

藤堂がそんな迷信を

クールな現実主義(リアリスト)じゃなかったっけ?」


必死に思い出しながら続きのセリフ。

これで合ってるかな?不安がかなりの勢いで募ってく。何で黙るんだよ。やばい、緊張する。


そんな僕に彼女は呟いた。


「そうね…どうかしてるわ」


彼女は、さっきと打って変わってしおらしくなる。

ヨシッ!続いたってことは正解ってことだよな。うん。彼女の方は芝居にテンションが乗ってきてるのが目に見えて分かった。


さあ、今度は僕の番だ。


「その手の中

溜め息?

逃げた幸せっつーの捕まえてくれたんだ?」


シーンを思い出しながら、普段と違う口調の言いにくさに内心戸惑いながら僕は喋った。


「…そうなるわね

トイレに流してくるわ」


自身の拳に視線を送り彼女がそう言った。


「ええ――」


僕は、苦笑いをしながら返す。


「嘘よ

返す

いい?

大事にしなさい?」


そう言って苦笑しながら彼女が拳を僕に押し付ける。

え、、やばい。なんかドキッとした。素に戻りそうになるのを耐える。せっかくここまでやったことをダメにはしたくない。


「・・・・お前が言うなよ・・・・

お前が預かっててくれ

お前が持ってるって 忘れないでくれよ?」


僕は自身の感情を抑えて、セリフを続けた。出もしない哀愁を意識しながら中年オヤジのセリフを。


対して、彼女は物悲しげな顔で自身の拳を再度見つめた。

そして、その物悲しげ表情のまま僕に向かって、


「加齢臭しないかしら」と、


藤堂は、平坦な声で言った。てか、言いやがった。

オリジナルにおける会話のオチに当たるセリフだが、さすがに悲しくなる。

わかってるけど、さすがにひどい。もう辛いに近かった。


「さすがに、そんな歳じゃないです」


僕は、わざと素に戻り最後のセリフに僕自身の言葉で返した。まあ、あれだけセリフを返したんだから十分彼女の要望には応えたはずだ。


彼女は満足げに僕のことを見ながら、


「松川君、ありがとございます。私、こういうやりとりしてみたかったので、好きな作品の好きなシーンのセリフ再現。松川君が、知っててくれて助かりました」


と感謝を述べてきた。


とその時になって僕は重大なことに気が付いた。それは、僕と彼女との距離と周りの視線だった。

僕と彼女はノリノリで会話はしていたが、無意識の配慮からそれなりに声を落として会話を押していたのだ。結果、僕と彼女はかなりの至近距離にいた。

そしていまは下校中、当然、学校の生徒はいるわけで、僕らは注目の的だったのだ。

なかには、クラスメイトもいたが、それ以上にクラス外の僕らの関係のことを知らない人に見られているのがまずかった。いずればれるにしても今日はもう少し平和でいたい。


急に逃げたくなった僕は、更に喋ろうとしていた藤堂さんの腕をつかみ、走り出した。


「ちょ、ちょっと松川君。急にどうしたの?」


彼女は当然訊ねてきたが、僕は焦っていたのでまともに返事はできなかった。


「あとで話すんで、今はついてきてください」


と言うので精一杯だ。


そして僕らは、近くの公園に逃げ込むように入っていく。


「はあ、はあ。藤堂さん、ごめん急に走り出したりして。あまりに近くに藤堂さんが居て周りにも人がいたもんだから」


息を整えながら僕は、彼女に謝罪する。


「はあ、そんなことわかってましたけど?」


なっ、こいつ分かってやってたのかよ。何、分かっててあの距離であんなにノリノリで、あんなことやってたのかよ。恥ずかしいとか思わないの?


僕の頭の中はあまりの衝撃的事実を前にショートしかけて、軽く気が遠のきかけた。


「・・・・・・松川君?ねえ、松川君?」


気づいた時には、彼女は僕の目の前にいた。それは、正面に立っていたとかじゃなくて、文字通りの目の前。さっきに輪をかけて至近距離に彼女は立ち、僕の顔を覗き込んでいたのだった。


「あの、近いです」


あまりの近さに、僕は逆に冷静さをと戻すことができた。



「そうですね」


そう言って彼女は、離れる。


「今までの流れなら、あまりの近さに慌てふためいてくれるものと思ったのですが意外と冷めた反応ですね」


わざとかよ。そんな思いを僕はぐっと飲みこんだ。


「あんな近距離だと逆に冷静になっちゃいますよ。前段階でテンパってた分」


「そうですか」


どこか悔しそうな返事だった。


「まあ、そんなことはどうでもいいんです」


と言って彼女は、切り替えるように話しだした。


「それにしても、先ほどはよくあれだけのセリフを返せましたね。かなりの無茶ぶりだったのに」


おい、無茶ぶりだってわかってたのかよ。


「そりゃあ、いぬぼくは好きでしたからね。8巻でしたっけ?野ばら×連勝の会話ですよね、あれ。それに、セリフの再現みたいなことは姉も好きでしたので、無茶な振りにはそれなりに慣れていただけですよ」


僕は、いろいろと思うことはあったが素直に応えた。


「それは、僥倖ですね。先程も言いましたが私、憧れてたんですよ、こんな風に人とセリフの掛け合いをするの。アニヲタを、隠してきたので、こういう話をできる相手もいませんでしたから」


そういう嬉しそうに、東堂は語りながら僕を見た。


「感謝します、松川君」


彼女の感謝の言葉ともに向けられた笑顔に僕は思わずドキッとした。


「そ、そうですか。それは良かったですね」


顔を逸らしながら、僕は素っ気ない返事をしてしまう。


「で、このあとはどうしたいんですか?」


顔を逸らしたまま、僕は尋ねた。


「なんの理由もなく、僕と下校したいってわけじゃないんでしょ」


そう。理由があっての行動のはずだ。さっきの掛け合いがしたかっただけかもしれないが、一応尋ねるにこしたことは無い。


が、返答は想定とは異なるものだった。


「へ!? いや、普通にそのつもりでしたけど」


僕の問いこそ想定外と言いたげな表情で答えてきた。


「はぁ?じゃあ、ただ一緒に帰りたかったっていうのか?」


僕の頭の中は、正直混迷の一途をたどるばかりだ。彼女のことが分からない。


「ええ。そのつもりだったのですが。松川君は、そんなに私とどこかに行きたいんですか?」


そんなわけない、帰れるなら帰りたい。


「なら、帰る、帰ります。帰りましょう」


僕はすかさず言った。


「そうですか。じゃあ、まだ帰らないということで」


藤堂は、とにかく楽しそうだった。


「何で?」


僕は思わず声を荒げかけてしまう。


だって理由がわからない。帰る気だったんなら帰ればいいじゃないか。確実にわかることは、こいつが僕で遊んでやがるってことだ。


「なんで、と言われましても。私とはしては、松川くんと別れたあとに行く予定の買い物に、付き合ってもらうのも一興かなって」


と、僕に対して彼女は言った、とても楽しげ表情で。


「その決定に対して、僕には拒否権はあるのでしょうか?」


僕は、一応訊ねてみる。僅かながらの、抵抗である。


「構いませんよ。その代わりに、明日からあなたの学生生活がどうなるかわかりませんが?」


そう言いつつ、僕に写真をチラつかせてくる。


「ストレートに脅すじゃないですか?ビックリだなぁ」


つい、煽ってしまった。


「いや、まあ。手段ならいくらでもありはしますが、1番これが分かりやすくないですか?」


しれっと、言いやがったよ。手段ならいくらでもあるだぁ、ふざけんじゃねぇよ。怖くて何一つ聞けやしねぇよ。


そんな思いから固まる俺に対して藤堂は、


「では、行くということで。早速コンビニ向かいましょう」


「へ?」


思わず変な声が出た。


「コンビニ? え、なんで。買い食いが目的とか言いませんよね?」


「えぇ、違います。コンビニはあくまで過程、どこでもいいのですが、1番都合がいいので」


わけもわからず、僕は首を傾げた。


「さあ、向かいますよ。全ては、着いてからのお楽しみですから」


困惑したままの僕をしり目に、彼女は歩き出す。

どうやら、僕は拭い切れない不安を抱えたまま着いていしかないようだ。


正直、着いていきたくないなぁ



2話までしか何お決めてなかったので、大変でした。

次回デートします。

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