笑顔で会話してるクセに、マウントを取り合う奴ら。
2話です。
だいぶ時間が空いちゃいました。
密室で僕は、『藤堂深幸』と向き合っていた。密室と言っても、ほとんど使用されていない教室に過ぎないが、今は僕と彼女がが密談をする為の密室となっていた。
「で、再度言わせていただきますが、僕は藤堂さんがオタクでカメ子であることをばらすつもりないので信じてくだい」
ここ数日の間、何度も僕は藤堂さんに訴え続けていた。
対して彼女は、
「信じられません」
という返事一辺倒なのだった。
だが、なぜか今日の藤堂さんは反応がなく黙っていた。
「どうしました?藤堂さん?聞こえてますか?」
僕は、反応を伺うが、藤堂さんからの返事はない上、彼女は独り言まで呟き出す。
「男子と密室で2人きり。その上、相手には私の秘密がバレてる。てっことは、脅されて乱暴なことをされるのね。薄い本のように、そう薄い本の数多のヒロイン達のように!」
こいつは、やばい。最後の方に至っては目を輝かせていて僕としては軽く怖い。
「あのぉ、藤堂さん?」
声をかける。頼むから現実に帰ってきてくれと、僕は祈るばかりだった。
すると、藤堂さんは僕に視線を向けて手を広げて言った。
「どうぞ!覚悟は出来ています。……が、優しくしていただけると嬉しいです」
な、な、何言ってんだよこの人。ガッツポーズまでしてるし。頬を赤らめて僕を待つ藤堂さんはかなり魅力的だったが、とにかくこの暴走を止めないと拙い。下手したら押し倒されかねない。
ゴンッ
「いたっ」
初めて、姉以外の女性に手を挙げてしまった。藤堂さんは、痛みと衝撃から我に返ったのか先程の扇情的顔の赤さとは打って変わって恥ずかしさいっぱいといった様子になった。
「しませんよ、そんなこと。で、仕切り直して話をしますがいいですか?」
「ええ」
彼女は、頷いた。
「取り乱してしまって申し訳ないです。やはり、おかしな話ですがこういうシチュエーションに多少なりとも興奮してしまいまして」
さらに、謝罪の言葉が続いた。僕は、彼女はオタクといいかその手の文化にかなり毒されているんじゃないかって思わずにはいられない。だが、まずは話だ。
「さっきも言いましたが、ここ数日の間、一切誰にも話してないのにまだ信じれませんか?」
藤堂さんは、僕が彼女の秘密を話さないと言っていることを未だに信じておらず、だからもしもの為に毎日僕のもとへ監視に来ている。
「その事実は把握していますが、それは私が様子を伺いに来るからという可能性がある以上信頼にまでは繋がらないわ」
この女、どこまで強情なら気が済むんだよ。正直頭が痛い。だが、僕は今の生活をどうにか改善する為には、藤堂さんの信頼を得て、僕の元に彼女が現れる現状を変えないといけない。
「逆にどうしたら、藤堂さんは信じててくれるんですか?」
「じゃあ、逆の逆に伺いますが、なぜ松川君は私が君を監視目的で会いに来るのを嫌がるのかしら?」
質問に質問で返しやがった。やばい、驚きのあまり顎が外れるかと思った。てか、質問もおかしい。そんなの監視されてる時点で嫌だし、悪目立ちしたくないから以外に理由などない。
「答えてくれたら私もちゃんと答えるから、答えもらえないかしら?」
答えは出ているが、言い方に悩む僕に対して藤堂さんは、そんなことを言い出した。普通、聞かれた方が先に答えろとか思うのをぐっと堪えて僕はやんわりと伝えることにした。彼女が、僕の元に来るのが迷惑であることを。
「えっとですね。藤堂さん自信がどれくらい認識しているかわかりませんが、あなたは学校内に置いてかなりの人気を博しているです」
「知ってるわよ、そんなこと」
サラッと答える藤堂さんに対して、僕は思わず崩れかけた。
「そ、そうですか。じゃあ、そんな人気者が1人の男子の元に毎日現れたらどうなるかも分からますよね」
「非難轟々、嫉妬の的って感じかしら?」
「正しくその通りです。おい、もしかして理解した上でやってたんですか、あれ」
やばい、ブチ切れちゃいそうだ。
「あ、あれ?松川君もしかして私のことで、いじめられたりましたか?そんなつもりはなかったのよ。監視が目的だったのは事実だけど、迷惑をかけたかった訳ではなかったし」
あれ、何故か藤堂さんが慌てだした。というか様子がなんかおかしかった。どうやら、起こる可能性は理解してるが、起こるっていたことには気づいてなかったらしい。それに、どうやら心配してくれてるっぽいのは伝わってきた。
なので、
「いえ、あからさまな苛めにはあってませんよ。ただ、悪目立ちしすぎて周りの視線がかなり辛いぐらいです」
と言った感じで、フォローを入れることにした。すると、彼女は少し落ち着きん払って喋り出した。
「そうですか。事情は、わかりました。大変迷惑をかけてしまいました」
その言葉を聞き、僕は心の内がでガッツポーズをした。これで、彼女も僕を解放する気になっただろうと思ったからだ。
「松川君は、悪目立ちして困っているのですよね。だったら、私から改善する為の案が1つありますが、どうしますか?」
ぶっちゃけ、会いにこなくなれば済む話だが、僕は、彼女がやけに勿体ぶるので、多少不安はよぎるがその案を聞くことにした。
「藤堂さん、それはどんな案なんですか?」
僕の目の前で、途端に藤堂さんの表情が明るくなった。
「はい!その案というのはですね……」
空気が張り詰めていく感じがした。今なら、喉を鳴らした音さえ聞こえそうな静かさだった。あたかもアニメにありそうなこの空気感を藤堂さんが全力で楽しんでさえいなければ、もう少し雰囲気も出ていたんだろうと僕はつい目の前の彼女を見て思った。
「……」
「……」
「はやく言ってくれませんか?」
「す、すみません。この空気感が楽しくてつい」
案の定かよ!僕は、思わずツッコミを入れそうになってしまうのをこらえた。次ボケられたら突っ込んでしまいそうだ。
「ゴホン。改めまして、私が提示する案というのですね。『松川君と、私が交際する』というものです」
「なんでさ!!」
ツッコんでしまった。それなりの声量で、勢い良く、盛大にツッコミを入れてしまった。
藤堂さんは、余りの出来事にびっくりして目をパチくりさせて立っている。
「あ、すみません。驚かすつもりはなかったのですが、あまりに突拍子もない提案だったんで、つい。よかったら、そんなアホな結論に至ったか聞いてもいいですか?」
僕の言葉を聞いて現実に戻ってきた藤堂さんは僕の問いに答えるように喋り出した。
「あっ。えーと、ですね。松川君の話から変に目立って周りの反応が嫌だという事でしたので、いっその事私と交際していることにして、私が毎日現れることを当たり前のことにしてしまえばいいかなって思いまして」
もう、ワケわかんねぇよ。僕は、目立ちたくないって言ってんのに、交際なんてしたらもっと大変なことになってしまうに決まってる。そんなこと容認できない。
だから、僕から出せる返答はこうだ!
「申し訳ないですが、交際をお受けすることはできません」
ちゃんと、断る。これが、僕に出来る対応だ。正直、こんな美少女と形だけでも交際したいと思わない訳では無いが、それ以上に学校生活における平和の方が学生において必須なのだ。ゆえに、僕は断る。
そう強い意志を持って僕は彼女の様子を伺った。
「そ、そうですか。断られてしまいました。私は、どうやら松川くんに相当嫌われているのですね」
今にも泣き出しそうな顔で立っていた。僕は、何故か罪悪感に苛まれて早くも意思が揺らぎかける。
「嫌いな訳ではないです」
僕は、思わず言ってしまった。
「では、どうしてだめなんですか?」
藤堂さんが僕に詰め寄る。
「目立ちたくないんです。藤堂さんと交際したら、今以上に目立ってしまいます。だから、だめなんです」
僕は、自供している気分だった。
すると、藤堂さんの表情多少落ち着きを取り戻し始めた。
「そうですか」
声からも落ち着いてきたのが伺えた。
そんな中、僕はひとつの話題を切り出す。
「あの、1つ聞いてもいいですか?」
「いかがしましたか?」
「いえ。ここまで話した中で1度として、藤堂さんが僕の元へ来ないという選択肢が出ないので気になりまして。もう僕の元に来なくても良いんじゃないですか?」
僕としては、これが一番の理想だ。だから、藤堂さん自身の意見が聞きたい。
「良くないです!せっかくのオタク趣味を分かち合える人を失うわけにはいきませんから」
返答は力強い否定だった。正直、あまりのショックで彼女の後の言葉は僕の耳には届いていなかった。何か言ってるなぐらいだった。
てか、どうしよう断られた。こっちの本音を話したのに、断れるのは相当困る。説得における素直な本音以上の武器を僕は知らない。
「本当に、絶対に無しなんですか?」
再度、確認。僕としては、軽々しく諦めることはできない。
「嫌なことは嫌です。それよりも、私の交際案はなしですか?絶対にありえないんですか?」
会話が平行線をたどり出してるな。だからって、僕としては彼女の要望に応えるわけにはいかないからな。そんなことを考えて僕は黙ってしまった。
そんな僕に彼女はさらに喋り出した。
「わかりました。この話はなかったことにしましょう」
「えっ」
想定外の彼女の言葉に、僕は驚いてしまった。
「だって、双方の要望を双方が拒み、妥協点がない以上仕方ないです。ですから、私も松川君も自分のしたいように行動をすることにしませんか」
と彼女は続けた。
そして、僕に抱きついて、
「だから、また明日も私は会いに行きます。それが嫌なら、逃げてくだい。私、絶対に捕まえますから」
と、耳元で囁いた彼女は僕から離れて、教室を後にした。
僕はといえば、1人抱きしめられた衝撃で惚けていた。
ていうか、柔らかかった。めっちゃいい匂いした。凄かった。
やばい。あまりの衝撃で頭が回んない。
その後も、僕は1人教室の中で立ち尽くしていた。
キーンコーン、カーンコーン
あっ、やばい。予鈴がなった。
僕も急ぎ教室に戻ることにする。
走った成果もあって授業開始までまだ余裕のあるうちに教室に戻ることができた。
途中行き交う人が僕のことを睨んでいた気がしたが気にしないでいたが、どうやら勘違いでもなかったようだ。
何故なら、教室に入ってからもその視線がなくなることはなく、席に着いた今もクラスメイトから睨まれているからだった。所々で、舌打ちも聞こえてきた。
挙句の果てには、授業中にプリントを渡してくれたクラスメイトに鬼の様な形相で、
「おめでとう」
めでたさなど皆無の声で言われた。
訳がわからなかったが、彼女が原因で起きていることだけはわかった。クラスはおろか学校の生徒にここまで影響をあっという間に与えられるのは彼女ぐらいのものだ。
だが、僕は何があったかは一切わからないまま残りの授業を受けるしかなかった。
授業が終わると、帰る準備をする僕の元にクラスメイトが集まり出した。不穏な空気が漂う。嫌な予感しかしない。正直、とっとと帰りたかった。が、周りがそれをさせてはくれなかった。
そんな中、一人の少女が口火を切った。
「松川君、藤堂さんと交際するってほんと?」
ん?僕は思わず首を傾げそうになった。何それどういうこと?僕は知らない、そんなこと。そもそも僕は、彼女からの申し込みを断ったのだから。なんて考えこむあまり、黙ってしまった僕に追撃が飛んできた。
「松川から告白したってマジか?」
え、なにそれ。
「それで、藤堂さんも一度は逃げたけど、決心がついたとかなんとかって」
決心って何?てか、告ってないし。
「嘘だと言ってくれよ」
言えるものなら言いたい。が、言ったって信じないだろ。どうせ、藤堂が情報源だろうから、いくら否定したところで誰も信じない。認めたくないことでも彼女の発言が連中にとって真実になる。
僕に詰め寄るクラスメイトからは、狂気を感じずにはいられなかった。
下手したら、僕は殺されるんじゃないかとさえ思えた。
そんな間も、周りの声は止まなかった。
「なぁ、なんとか言えよ!松川」
とうとう、痺れを切らした男子が、僕に勢いよく詰め寄ってきた。
そして、僕の胸ぐらを掴むまさにその瞬間だった。
「待ってください!私が変わりに説明しますから。彼を離していただけますか?」
タイミングを見計らったように藤堂さんが現れた。というか、きっと狙ったてよねどうせ。
ただ、藤堂さんの登場は僕にとっての救済であることには変わりない。
みんなの視線を一身に集めた藤堂さんは、クラスメイトをかき分けながら、僕の胸ぐらをつかみかけていた奴を押しのけて隣に立った。
そして、ざわつく周りに一瞥してから僕の腕を抱きしめて、
「皆さんご存知の通り、私たちは本日より交際することになりました」
「は!?」
彼女の宣言に僕が誰よりも驚いた。周りの話からそういうことなのはわかっていたが、いざ目の前で言われた時の衝撃はでかい。
また、噂程度に思っていたことが事実となったことに回りもショックを受けていた。
そんな僕と周囲をよそに彼女はさらに語りだした。
「本日のお昼に、松川君から告白されまして、一度は驚きのあまり逃げ出してしまったのですが、初めてちゃんと告白されてうれしかったので、その想いに応えたいと思いここに来ました」
そう言った彼女は、僕を上目遣いで見据えて、
「不束者ですが、これからもよろしくお願いしますね」
と言う彼女の姿は可愛く、僕自身グッとくるものがあった。ただ、そんなことを思う僕に対して彼女は、僕にだけ見えるように『えりりん』のブロマイドをちらつかせてきた。脅しである。可愛いとかそんな感想は、どっかへ吹っ飛んでった。どうやら、僕に拒否権はないようだ。
クソがっ。
ふざげんなとか、ばかかとか、なんでやとか叫びたかった。でも、そのブロマイドが有無を言わさず僕にこう言わすのだった。
「こちらこそよろしくお願いします」
チクショーっ!これで僕ら、学校公認のカップルとなった。
僕の顔、今引きつってないかな。
僕は、全てが彼女の思うがままになのが気に食わなかったので、目の前の彼女を抱き寄せた。そして、面食らったような顔をする彼女を見て僕は内心でガッツポーズをした。が、そんな僕の首元に顔を彼女がさらに寄せてきた。
恥ずかしさから、逃げようとする僕に彼女は、
「やってくれましたね。でも、もう逃がしませんから」
そういって、僕の頬にキスをして、
「では、外で待ってますので、早く帰る準備をしてくださいな。一緒に帰りたいので」
周りにも聞こえる声でそう言って彼女は教室を去っていった。
僕を含む教室にいたすべての人があっけにに取られていた。そんな静まり返った教室を僕は、今後のことで頭を抱えながら逃げるように後にした。
僕を待つ彼女のもとへ。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
物語が動く内容になったと思います。
楽しでいただけたら嬉しいです。
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