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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
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97話

 さて、予鈴のおかげで周りの雑音も気持ち治まってきたし、あと数分だけだけど改めて文章に没頭してストレスで削られた精神力の回復を――あ? ドテドテ?



「――――黒宮! 黒宮辰巳は居るか!?」



 ノシノシドタドタと運動不足丸分かりな足音と共に現れた中年太り――確か学年主任だったっけ?――が、教室のドアを勢い良く開けたと思ったら開口一番で名指ししてきやがった。


 『なんで、放送で呼び出さずにワザワザ現れたん?』なんて疑問はさて置き、フツーに耳障り過ぎるので文庫本から視線を上げるだけに留めると、そのなんとなく見覚えがあるような無いようなオッサンが出席番号をなぞるように視線を巡らせる。

 でもって、すぐに出席番号四番な僕を見付けると、ズカズカとコッチに向かってきやがった。


「黒宮! お前、出席するなら前もって連絡しろ!」


 ……パーソナルスペースとか微塵も考えずにすぐ傍まで踏み込んできたと思ったら、偉そうに見下しながら唾を飛ばし、挙句は『生徒の登校には教師の許可が必要』だなんてワケの分からないコトまで抜かす始末。

 コレもう(ころ)して良くね? ダメですかそーですか。


 いやまあ、この汚物が飛ばしてきた飛沫は、僕や文庫本や机に付着する前に転移させて、頭上に見える荒れ野を潤わしてやったから実害はゼロだけどね。


「大体お前は――」


 にしても、醜くはみ出た贅肉に地肌が覗く頭頂部とか、そんな醜悪な外見晒して生きてて恥ずかしくならないのかな?


 別に普段から鍛えて筋肉付けろってワケじゃないんだから、適正量の食事と規則正しい生活を心がけてれば最低限の体型維持はできるだろうし、髪にしたってみっともなく残った分を伸ばして足掻くよりいっそ刈り上げた方が清潔に見えるってのに、なんでこの程度も実践できないような人間が教鞭を執ろうだなんて思い上がれるのか……

 世の中ってのは不思議で溢れてるなぁ。


 などと益体もないコトを考えつつ、その間も忘れずしっかり転移の発動は怠らずにいると、眼前のガミガミオッサンは漸く少しはオツムの血が下りたのか、


「――とにかく! 続きは職員室でだ! 村田先生! 後は頼みます」


 そうハゲ散ら――じゃなかった、吐き散らかしてドカドカと教室を出て行った。


 ったく、大声を出して無駄にデカい身体で圧迫すれば生徒にナメられずに済むと思ってるんだろうか?

 逆に自分の器の小ささを見せびらかしてるって事実に気付けないのかね?


 ま、どうでも良いか――なんて見送ってると、その汚ブタと入れ替わるようにこのクラスの担任教師――だったような気がする不健康で気弱そうなモヤシ婆が現れた。


 あ? 『ソコは美人所教師登場な胸アツ展開だろJK!?』?


 オイオイ、いきなりそんなUMAの話を持ち出すなよ。そんなのは『超絶可愛いブラコン妹』とか『超越美人でエロい姉』とか『壮絶美少女な家宅侵入幼馴染』と並ぶ虚数存在ですよ?


「はい、皆さん席に着いて下さい。黒宮君はいつまでも座ってないで職員室へ向かうように。森本先生が御待ちですよ」


 メンドくせえ上に鬱陶しかったので、このまま呼び出しフケて授業で教科書貰おうと思ってたら、頑として動こうとしない僕に狐みたいな細目が向けられた。


 ついでに、教壇の真ん前から水を向けられた所為で、教室中の人間の意識がコッチに向けられるハメになって気色悪い。

 まあ、直接向けられてる視線の数は全体の半数にも満たないけど。


 う~ん、別にこのまま残って魔力生成(イライラ)してても良いんだけど、あの汚物とサシでオハナシってのも中々ストレスフルで魔力的にはありか……

 教室での魔力生成(イライラ)チャンスは戻って来てからでも延々得られるだろうし。


 と言うワケで、軽く会釈だけして立ち上がると、手早くバックに筆箱と文庫を突っ込んでから教室を出る。

 勿論、バックは持ったまま。

 ま、コレも自己防衛の一環だね。


 でもって、先に行った禿ブタの姿なんて探したりせず、換気の為か開きっ放しの窓を全開にして窓枠を跳び越え、校舎三階分の中空へと身を躍らせる。


 下に誰も居ないのは臭いとかエコロとかで把握してたし、同じく一階廊下の窓も鍵が開いてたのも分かってた。

 でもって、下は土足ではあるけれど土の地面じゃなくて石タイル張りだから上履きが汚れる心配も無い。


 それに、今更この程度の高さでどうにかなるほどヤワな身体してないからね、コレだけ条件が揃ってればワザワザ腹立たしいハゲと合流しかねない階段(ルート)なんて使わないのです、ハイ。


 ってなワケで、特にカッコつけてスーパーヒーロ着地とか披露するコトも無くフツーに両足だけで着地し、そのまま振り返って半開きの窓を開け切って窓枠を跳び越える。


 勿論、廊下が無人なコトもハゲデブが未だ階段昇降中ってのも把握済み。

 中庭挿んだ対面に教室側が中庭に面してる第二校舎もあるけど、感知できる限り僕に気付いたヤツは皆無。

 うん、何も問題は無いね。


 さてさて、んじゃ一足先に職員室入って待たせて頂くとしましょうか。

 一体全体、あのハゲデブはどれだけ面白オカシイオハナシを囀って下さるんでしょうかね~え、っと☆

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