83話
ってなワケで、取り敢えずの――照準。
まず狙うは、そうだな……
ココを監視してると思しき何か――衛星だとか魔法だとかと限定せず、ただ漠然と『監視してる何かしらの装置、仕組み』の存在を標的に設定。
でもって、使うのはやっぱりまだまだ有り余りんな魔力チャンで――はい、ズドン。
……、…………。
うん、感触は――あった。
確かにココを監視する何かは存在してたみたいだ。
無ければすっぽ抜けるからね、感触アリなら存在もアリってワケだ。
とは言え、その感触がなんだかビミョーなんだよね……
いやさ、いつものアレだよ、アレ。
干渉力過剰?
壊し過ぎ?
いやまあ、今回も使ったのは主観干渉だし、狙った標的も『どうせ特理だろ下らねえ』みたいな認識で、且つ一部でも人体だの魂だのを直接傷付けるようなら標的から外す設定だったから、まあ当然だとは思うんだけどね。
にしても――
「――黒い流れ星、ね。青空に映えるのは良いが、見た目不吉過ぎて願い叶えちゃくれ無さそうだな」
うん、我ながら結構な比率で『流石にソコまでしないよな~、飛躍し過ぎだよな~、でも一応な~、念の為な~』なんて腹積もりだったのに、ホントに在ったよ監視衛星。
マジか~……
あと、それよりも小さくて低空飛んでるのがチラホラと黒炎に包まれて、燃え尽きるように消え去って……アレはドローンかな?
え~っと、航空法とか道交法とか条例とか大丈夫?
でもって、さっきまでなんとな~くとしか感じられなかった気配的な何かも消えてる。
コレが千里眼的な所謂魔法的覗きなんだろうけど、この纏わりつくようなカンジが消えるのは中々清々しいね。
さて、コレでココを見てた連中の存在が確定したワケだけど……
うん、やっぱ、良く確認もせずに施設襲撃とか早計だったな~。
これで僕の能力が断片的にでも特理方に知られちゃったってのも確定しちゃったワケだし。
でも、逆に、だ。
この監視が途切れた今の間隙を突けば、最低限の妨害工作はできるし、ソレが成功すればある程度の時間は稼げるハズ。
と言うワケで、続けての――照準。
次に狙うのは、さっき衝動的に崩した施設跡の瓦礫の山――その現状。
元はビルみたいな高さだったのに、無駄に広くて深い地下空間を魔物スペースにしてた所為で、ソコに瓦礫の殆どが流れ込んだみたいだから標高は大したこと無さそう……
なんてコトはどうでも良いので、さっさと魔力を干渉力にセットして――ズドン。
瞬間、ボワッと盛大に黒炎が炎上し、瓦礫の山を包み込んだ――と思ったら、次の瞬間には一気に天を衝くように黒炎ごと伸び上がると、またしても一瞬で黒炎が晴れ、地上地下計三十三階にも及ぶ建物が僕に叩き潰される前の状態で現れましたとさ、チャンチャン♪
でもって、〆へ取り掛かる前に翼バッサーッのジャンプビューンッでココの連中の視界から消えてから、今の今までずっと供給し続けていた土下座強制干渉力への魔力供給をカット。
そうして、頭を押さえつける重圧から解放されて、立ち上がりはしないまでも膝立ちで身体を起こした連中を見下ろしてからの――照準。
狙うは……どっちにしようか?
主観干渉で脳ミソに直接音声情報として叩き込むか、それとも物理干渉で魔力からの運動エネルギー変換で空気を振るわせて音声を再現させるか……
う~ん、脳ミソ直接弄るのは失敗すると戻す手間が掛かってからのリトライになるし、ココは物理干渉で良いか。
んじゃ、早速魔力を使いまして――パチンッ。
『――あーあー、テステス。上手く聞こえてるかコレ? ああ、うん。大丈夫そうだな』
良っし、成功!
結構距離取ったから僕の超人聴覚でも結構遠いけど、ちゃんと声になってる。
ちゃんと僕自身の声帯の動作を参考にして音波作ってみたワケだけど、中々良いセン行ってるんじゃない?
まあ、抑揚が凄まじく乏しいから棒読みのゆっくり実況状態だし、普段の骨伝導で聞く声とまた聞こえ方違うから、なんとも微妙なカンジではあるけど……
でもまあ、干渉方法の中だと一番慣れてる物理干渉でコレなんだから、練習したとはいえまだまだ改善の余地ありっぽそうな主観干渉使うよりはマシかな。
とは言え、コレで連中は『散々痛めつけられた挙句、突然自由になったと思ったらドコからともなく声が聞こえてくる!?』ってな状況になったワケだ。
うん、こんなのまともなら脳内疑問符だらけになりそうだ……ってアレ?
遠目だけど、なんだか予想以上にビクついてない?
オイオイ、アンタらいい歳ぶっこいたオトナだろうがよ。
ま、どうでも良いから続けようか。
『さて、ついさっきも聞いたばっかなハズだから自己紹介は省くが、テメエらの身体とかソコのビルとか見りゃ分かるように、オレにとってテメエらなんて壊すのも戻すのも簡単なコトだ。ソイツは分かってくれただろ?』
遠くで平坦な声が太々しいカンジで響いてるけど、ソレを聞かされてる連中がしっかりと怯えてくれてるようで嬉しい限りだ……
まあ、こんな距離でも分かるくらい『吹雪の中でパン一』ってカンジに震えまくるとか、中学生相手に怯え過ぎな気もするけど。
『でもって、だ。今こうしてテメエらが聞いてる通り、オレの力は別にその場に居ない相手にだって届けられるシロモノだ。つまり、テメエらの命とか健康とかはぜ~んぶオレの手の中にあるってワケだが……喜べ、オレは寛大だ。理由も無く無暗矢鱈にこの力を振るうつもりは無い。良かったな』
なるべくにこやかに嗤ってやろうとして、でもやっぱり上手く抑揚が付けられなくて、『ま、どうせ聞いてるのは魔物研究の為に魔物の危険を隠蔽してたゴミだし』と開き直ると、何やら気でも失ったみたく倒れる輩がチラホラ。オイオイ。
『って言っても、その『力を振るう理由』ってヤツが分からねえと、テメエらも安心できねえだろうから教えておいてやろう。なに、単純だ。ただオレの――オレ達の生活に干渉されたくねえってハナシだ。テメエらだって、それぐらい想像できるだろ?』
なんて、僕の慈悲深さに感銘を受けたのか、ホッと胸を撫で下ろしてるようなヤツらが散見。
う~ん、コレは僕の真意がまだ伝わり切ってないみたいだ。
もうチョット詳しく説明してあげようか。
『ま、要するにオレが欲しいのは、『第三者に介入されない生活』って言う、そんな当たり前のものなワケだが、でもソレってホントに守られてるのか判断が難しいものだろ? 『管理社会』なんて言葉がある通り、アンタらお国の役人様の手に掛かれば、一中学生の生活をそれと分からないように損なうコトくらい簡単だろうからな。だから――』
と、ココでいったん区切って溜を作る。
別にそんな必要も無いだろうけど、今から言うコトが一番重要ですよ~って分かって貰う為のアピールだね。
まあ、もし通じてなかったとしても、それはそれで最終的に何の問題も無いから良いけど。
『――もし、オレが何かしらの不利益を被ったと感じた時点で、テメエらの仕業だと決め付けさせて頂きま~す☆』
あ、なんか今の上手くいったかも。
イントネーションが良いカンジにポップでハッピーになってた気がする。
まあ、連中にとっては死の宣告みたいなもんだろーけど♪




