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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
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79話

 こっからの行動目標は――まず第一に父さんと母さんの安全確保かな。

 コレについては、達成しさえすれば()()()()()()()()()()()ってレベルで徹底しようか。


 次点は――――うん、別にねーや。

 今の僕に父さんと母さんの安否以外に大事なコトなんてあるワケ無いしね。


 んじゃ、早速取り掛かるとしよう。


 そんなワケで、空間魔法発動。

 今回も施設内の移動と同じく練習も兼ねての瞬間移動、場所は例の施設の上空一キロ地点。

 転移と同時にバサリと広げた両翼で空中に制止しつつ、また八階建ての建物なんてな~んも見えない緑の斜面と太ましい道路を見下ろしまして深呼吸、スゥ――――



「――ゴォッギャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」



 なんて、声にたっぷりと魔力を乗せての()()と共に主観干渉を一発。

 今回狙ったのは、発動中のナイナイ結界とソレを発生させている何かしらの仕組み――まあ、万一人間から魔力供給してたら一緒に消しかねないので、魔力供給元だけは除いとこうか。


 ……この世界の人間が持ってる魔力量やら建物一つ覆うほどの規模からして無いとは思うケド、もし万一仕組みそのものに人間が組み込まれてたら――まあ、運が悪かったと諦めてね☆

 う~ん、主観干渉の『なんだかよく分からないモノでも、分からないままどうにかできる』ってのは中々にぶっ壊れ性能だけど、あんまり軽々しく使わない方が良さげかも……


 そんでもって干渉に使ったのは、今まで通り有り余り過ぎて発散されたがってた魔力。

 で、結果は一目瞭然。

 建物全体をだけでなく敷地に通じる道路すら隠してた隠蔽結界は、一瞬で真っ黒に燃え上がってから消失。

 その奥に潜んでたオカルト研究所を晒しました。


 なら次は――



「――ゴォオオッギャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」



 今まで散々溜め込ませてくれやがったストレスを吐き出すように大絶叫しながら魔力ソナーを出血大放出。


 コレで、施設内に居る人間の数と位置を全て逃さず把握して――うん、どうやら僕みたいに研究対象扱いされてる人は居なさそうだ――から、またまた空間魔法発動。

 さっき、父さんと母さんを寝室に運んだのと同じ落とし穴方式の門を探知した施設内の全員に仕掛けて、研究所前の幹線道路に通じた広い駐車場のなるべく建物から離れた出入口付近や全く車通りの無い敷地に通じる道路の辺りへと纏めて転移させる。


 でもって最後は――



「――ゴォォォオオオオオオオオ、ギャァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」



 無人の研究所に向けて一直線に降下。

 拡げた翼から魔力を放出しまくって一キロの助走距離をフルに使って加速。

 『ボッボボボッボッ!!』なんて効果音と共に発生するベイパーコーンを置き去りにして、例のHに丸が書かれたヘリポートが目前に迫った所でクルッと前転。

 たっぷりと乗った運動エネルギーを踵に込め、更には変身体のバカ筋力と魔力による身体強化も合わせ――一気に振り抜く!!



 瞬間――八階建ての巨大研究所は、轟音の大瀑布を撒き散らしながら、まるで突如現れたアリ地獄に呑み込まれるようにして粉砕、崩落した。



 干渉魔法を使う要領で全身に乗っていた運動エネルギーを余さず建物に叩き付け尽して消費し切った僕は、そのまま屋上の高さで翼を広げて停止。

 砂煙に埋もれようとしていく腹立たしい施設の最期を見遣った。


 元々、地下階があった御蔭で『上から押し潰せば周りの被害は最小限で叩き潰せるだろうな~』とは思っていたけれど、干渉魔法無しでこんなに上手く行くなんて……やっといて難だけどビックリですわ。


 まあ、コレで僕がどれだけ腹を立てていて、どれだけのコトができるのかは分かって貰えたと思う。ココまでやってまだ懲りないってんなら、もうホントに()()()()()()()()()()しかないけど……どうだろ?


 はてさて、オカルト研究員共の態度や如何に――っと視線を向けてみれば、なんだか白衣も兵隊もオッサンもデブもガリもオバサンもお姉さんも分け隔て無く呆然としてる?


 ムムム?

 見たトコ、僕みたいな()被害者は元より、スマホ向けてるような余裕しゃくしゃく対岸の火事野郎も居なさそうだし、これならもう少し()()すればちょっかい出されずに済むかな?


 じゃ早速、と浮遊用の魔力放出を止めて羽搏かずにグライダーの要領でスィーっと下降。

 連中が突っ立ってる辺りまで移動したら、翼を畳んで揚力を消してそのまま自由落下――ヒュー、ストン。


 手と膝を着いてカッコよくスーパーヒーロー着地決めても良かったんだけど、一応は敵対してる連中の前で隙晒す気にはなれなかったので、そのままフツーに着地。

 この程度の高さなら屈伸して勢いを殺す必要も無いしね。


 さてさて、んじゃ早速――



「――頭が高えんだよ、伏せ」



 物理干渉を発動して僕に集まった注目の視線を地面に固定させ、喧しく騒ぎ立てそうなお口にも同じく物理干渉を発動させてお喋り音波が伝わらないよう空気の振動を相殺させる。

 ついでに体勢は土下座ね、土下座。やっぱ、悪いコトしたんだから、ちゃんと反省してもらわないとネ。

 うん、コッチ見んな☆


 さ・て・と、そんじゃあ、目の前で土下座決めてくれてる責任者デブとOHANASHIと洒落込もうか。

 その為にワザワザグラインド決めてデブの前に位置取りしたんだし。


「よお、また会ったなメタボ、()()のコト覚えてるか? ま、コッチはテメエがドコのダレさんなのかなんて知らねえし、聞いてもねえが」


 まずは対人コミュニケーションの基本中の基本なAISATSUから。

 うんうん、やっぱり()()ならざる文明人としては、多少なりともこーゆー手続き的な無駄会話が必要だよね。


 とは言え、今もずっと口塞ぎ続けてる通り、こんな人様の家族に手え出すような()()擬き共の返事なんて聞く気も無いので、一方的に進めさせて頂きますが。


「さて、そんじゃあまあ、テメエら全員これからはオレの実験に付き合ってもらうワケだが、とは言えだ。オレはテメエらと違って、コッチの事情も経緯も説明せずただ強制参加――なんて無法なマネをするほどモラルに欠けちゃいねえ。ザックリだが、まずは説明タイムな」


 そう前置きしつつも、()()は開始する。

 時間は有限だし、父さんと母さんが待ってるからね。

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