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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
75/186

75話

『――――しても、妙な話だよなぁ。いきなりコッチから連絡する前に『遺体を引き取りたい~』とかよぉ。確か、まだ検死だって済んでねえんだろ?』


 ……………………………………………………………………………………………………ん?


『ああ。現場で()()()()|死亡確認取れてたし()()()()()()()()()()|だって事で、ソッチの捜索に掛かり切りで手続きも碌に進んでなかったから、早くとも二、三日は掛かるって話だったんだが……』


 ………………………………………………は?


『ならなんでこうなる? その流れでどうしたらバラバラの仏さん迎えに来なきゃいけなくなるんだ? どう考えてもおかしいだろ?』


『オイ、その辺にしとけッ。誰かに聞かれたらどうすんだッ』


分か(わー)ってるよ、ったく。『こんな無茶が通るなんて、どう考えてもヤバい裏がある~』ってんだろ? つったって、こんな場所で俺らみたいなヒラの愚痴にまで態々聞き耳立ててたりなんかしねえだろ』


『いやいや、こんな場所だからこそ、サボり連中に紛れたスパイ(イヌ)にタレこまれてクビ~ってな。いや~、短い付き合いだったな~』


『ハハハ、したらお前ら二人も道連れにしてやっから楽しみにしとけよ』


 ……………………ふぅん。

 そうかそうか。

 いやはや、なるほどなるほど。

 そう来たか~。


 あんな会話をした後で僕が消えれば、ドコに向かって誰に会いに行くかを予想するなんて簡単だよね。

 でもって、あの性悪デブは僕への仕返しの為に、父さんと母さんの身柄を取り上げようとしてるってワケだ。


 ま、その仕返しが『ムカつく相手の持ち物を隠してやろう』っていじめっ子小学生レベルの発想なのは嗤えば良いのか、それとも『大の大人が……』って呆れれば良いのやらだけど。


 いや、もしかしたら僕を誘き寄せる為って線も無くは無いのかな?

 さっきの時点でロクに足止めもできなかったクセに、誘き寄せてからどうするつもりなのかは分かんないけど。


 う~ん、こんなコトなら別れ際にでも永遠にお口チャックしてて貰えば良かったか? あのデブ――って、いやいや、それダメだって。それじゃ犯罪だって……


『いい加減にしろッ。署長直々に『大至急』なんて言われてんだ。こんな所でグダグダ無駄話してる暇なんかねえぞッ』


『だから分か(わー)ってるっての! ったく、四六時中そんなだと禿げるぞ』


『まったくだ。少しは心にゆとりってヤツを持とうぜ』


『喧しいッ。サッサと行くぞッ』


 ――っと、ヤバ、もうそろそろ廊下に差し掛かって来そうだな。


 こんな狭くて遮蔽物の無い部屋じゃ、気配消して天井に張り付いても流石にバレるかもだし、あとを追うなら外で連中が使う車を特定した方が良さげし、ココは一つ早急に脱出すべきかな。


 まあ、まだ頭痛は酷いケド、あのデブにムカッ腹立った御蔭で変身し直したり魔力強化したりする程度の魔力は回復できたから、サッサと変身してお空に逃げつつ監視するとしようか。


 連中の話し声に耳を傾けて逐一距離を測りつつ、普段とは比べ物にならないほどノロノロな展開速度で変身体を纏うケド……

 う~ん、やっぱ結構消耗してるなあ。


 まあ、幸いにして四肢は勿論、翼やら尻尾やら全身の動作に問題は無いようだから、あとは脱出のタイミングだけど――


『――そんじゃあ、俺が車回してくるんで、準備おなしゃーっす』


『オウコラ待て逃げんな。お前もコッチ手伝え、ってかお前がやれ。車は俺がやる』


『やめろ、下らん事で争うな。此処はキー持ってる俺が車行くから、お前ら二人で準備に決まってんだろ』


『『決まってねーよッ、キー寄越せッ』』


 うん、変身体の構成に時間取られ過ぎた。

 もう、すぐ外の廊下に入っちゃってるよ、どうしよ?


 魔力が回復したって言ったって、まだいつも通りに空間魔法が使えるってコンディションではないし、かと言って強行突破したら無駄に騒ぎになるだけだし……

 ココはあくまでも隠密状態(スニーキング)を維持しつつ、なんとか脱出経路を確保せねば。


 取り敢えず、連中の視界へ入らないよう天井へ貼り付き――貼り付くって言っても、ヤモリみたく指先の形状的なのじゃなくて鉤爪を天井に突き刺す荒業だけど――、その状態で待機。


 これで、オッサン達が入室した直後に見つかって騒ぎに――って流れは回避できるハズ。


 でも、これだけだとどう考えても見つかるのは時間の問題なので、連中が入ってきた直後に扉が閉まり切るよりも早く頭上を通り抜けて部屋から離脱するカンジで行こうか。


 外へ出る時も、車を用意するってヤツに便乗して建物外に出れば問題無さそうだし、タイミングにさえ気を付ければ何とかなる、よね……?


 う~、『最初から最後まで隠れっ放しの隠密状態(スニーキング)』とか慣れてないからイマイチ不安だけど、もう腹を括るしかないか……

 魔界(アッチ)だと全部『ヒッソリ背後取って奇襲ダゼ、ヤーハー!!』で済ませてたからなぁ~、メンドくさ。


 ――ま、いいや。

 よしッ、さあ来い!


『――よぉっしゃッ!!』


『ったく、分か(わー)った分か(わー)った。コッチは俺らでやっとくから車は任せるぞ」


「チッ、くっそ、チョキを出せてればこんな事には……」


――――今!


 入ってきたデュアルオッサンズの視線を読み切って視認を回避し、天井にザクザクと鉤爪を突き刺しながら天井を伝って部屋を出る。

 そのまま、天井の穴を五個ずつ増やしながら一人出口へと向かいつつあるオッサンを追う。


 ……ってかコイツら、人様の父さんと母さん運ぼうって時に何やってんだ?

 死にてえの?


 いや、まあ、冷静に客観的に考えれば?

 誰だって血塗れの死体運んで来いって言われれば敬遠したくなるだろうし?

 事件関係者どころか人っ子一人いないと油断してる状況でソレを隠さないのは人間味のある事だとは思うケドさ?


 でも、もし万が一見られたらって場合を考えて欲しいなぁー。

 意図的じゃないにせよ、あのデブの嫌がらせに加担してるんだし、その時点でブチのめされても文句言えないってのにね。

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