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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
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74話

 となると、やっぱり問題は標的設定(僕の認識)の方か、若しくは干渉方法そのものかね。


 う~ん、標的設定か……

 目的としては『父さんと母さんの復活』さえ達成できれば十分なんだから、いっそ過去に干渉して――ってソレはもう試して失敗してるし……

 かと言って、他の何に干渉すれば父さんと母さんを生き返らせられるんだ……?


 干渉方法にしたって、念力紛いの物理干渉なんか使ったって、物理的に心臓やら肺やらを無理矢理動かせるだけで、既に死後十時間以上経過してる身体がそれで自発呼吸するワケが無い。

 そんなのフツーで一般的な男子中学生にも分かりますよって。


 標的の存在強度を削る存在干渉も、父さんと母さんの遺体から()()()()って逆算すれば死に対して発動できるかもだけど、魔法や()()みたく分かり易い形で物理的に存在してるワケじゃないから、さっきの主観干渉と同じかそれ以下の効力しか発揮できないと思うし……


 気休めとしては、干渉魔法自体はちゃんと発動していて、それも全く手応えが無かった――つまり『死への干渉ができなかった』ってワケじゃないのは収穫かな。


 これなら魔法と魔力を鍛えていけば、いずれは父さんと母さんの蘇生も叶うでしょ。

 少なくとも、方向性は間違ってないんだから。


 まあ、今更浮かんできた懸念があるとすれば、『死』って概念を消せばホントに死者を蘇らせられるのかってのも問題かな?


 ホラ、『生と死はコインの裏表みたいな片方だけでは成立しない概念だから、死の概念が消えれば生命そのものが存在できなくなる~』的な展開も無きにしも非ずなような……?


 でもまあ、その辺は主観干渉時にどんな認識で発動するかでクリアできそうな問題ではあるから、別に今のところ問題は無いかな?


 概念への干渉が可能って言うなら、それこそ『僕が干渉魔法を発動した事実』にも干渉できそうだし?

 そんで事実(ソレ)を消しちゃえば幾らでもやり直しが利きそうだ。


「……っ、――――は、ハハ、そうだ、そうだよ……たかが一度失敗しただけ。それも方法に間違いがあったんじゃなくて、僕の力不足が原因でだ……なら、何も問題は無い。今までと同じだ……できるようになるまで繰り返す。結果を出せるようになるまで正しく積み重ねて行けば、いつかは辿り着ける……兄さんを追い駆けてた、今までと同じ。何も変わらな――――っ、ズ、ぎグッ……!?」


 うぐッ!?

 な、なんだ!?

 あ、頭が割れ、る……

 ひ、酷過ぎて気持ち悪くなってきた……


 何故か、突然激しさを増した頭痛に耐えられなくなって、無様に床へ手を着く。

 ……う、っく、ぷ……な、なんなんだよ、いきなり……


 勝手に荒くなる呼吸とガンガンガンと金槌で乱打されてるみたいな幻聴が耳に響く中、なんとか頭痛(ソレ)を抑えようと意識的に呼吸を変える。

 浅く速く乱れてたのを、深く長く。


 スゥ――――ハァ……スゥ――――ハァ…………

 まったく、なんだっていきなり……ん?


 聴覚、嗅覚、魔力に感在り。

 コレは……コッチに向かってきてるな。


 あ~、チョット待ってくんない?

 せめて息が整うまで――って、この調子だとコッチに来ちゃうな……

 いや、必ずしもこの部屋に用があるってワケじゃないか。


 なんか、ソナーで浮かび上がってきたシルエットと足音から察するに多分オッサン三人だろうし、ドイツもコイツもタバコとコーヒーの臭いが染みついてやがるから、恐らくはさっき入ってきた裏口で一服するってカンジかな?


 まあ、それでも近くを通る事には変わり無いし、万一見つかったら面倒だ。

 最悪、父さんと母さんとまた離れ離れにされるかもしれない。


 それにそもそも、父さんと母さんの身柄を確保できた以上はこんな場所に用なんて無いんだから、ココは空間魔法でも使ってサッサと退散――、っく……まだ無理そうか。


 頭痛が酷過ぎて魔法の制御に支障が出そうだし、ついさっきほぼ空になった魔力の回復もまだ済んでない上に、出しっぱなしで握りっぱなしの骨にも魔力が通ったり途切れたりな有様で魔力操作が覚束ない。


 これじゃあ、流石に慣れてない空間魔法なんか使えないかな。

 門を作ろうにも発動はともかく維持に必要な魔力が足りないし、転移だと『いしのなかにいる(事故りそう)』だし。


 せめて、もう少し頭痛が治まるか魔力が回復するかまで待たないと……


『――――、……』


『――ええ、で……から……』


『そりゃあ――、なら今度……』


 うげ、もう会話が聞きとれそうな距離になっちゃってる。

 そろそろ息潜めて――って、その前に父さんと母さんをこのまま放置ってのはダメだよね……


 ってコトで、『怪我したって事実が無くなったんだったら、出血してたって事実も無くなるよね』な理論でピッカピカに綺麗になってる黒いビニール袋に父さんと母さんの遺体を戻し、それを丁寧に冷蔵庫の中に戻していく。


 幾ら外傷やら内臓やら骨やらが健康体に戻ったって生き返ったワケじゃないんだから、このまま常温の外気に触れさせ続けてたら、また腐り始めちゃうからね……

 一応、『損壊』の認識内に腐敗も含まれてたみたいで、その辺もバッチリ元通りだったりするケド。


 ま、これであとは気付かれないように静かにしてれば大丈夫かな?


 さて、んじゃどっかに隠れるとして……

 うん、身を隠せそうなのが冷蔵庫の空き部屋くらいしかない。

 どうしようか?

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