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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
73/186

73話

 ……感触が重い。

 予想はしてたけど、やっぱりこうなっちゃったか。


 思い付いて、実際に使った時から思ってたけど、主観干渉は誇張抜きで万能だよ。

 それこそ、本当の意味での『魔法』だと呼べるほどに。


 なにせ、並列して存在する別々の世界を自在に繋げて、剰えミクロな宇宙さえ創り出せるほどの絶対的な空間魔法を使える()()に対してでさえ通用してしまう回避不能の必殺技なんだから。

 そりゃあ、父さんと母さんを害する忌々しい傷だって消し飛ばせるさ。


 ただ、その『主観』って部分が問題にもなってくる。


 端的に言えば、()()()()()大切なもの、壊したく無いもの、掛け替えの無いものに対して使おうとすると、干渉に必要な力――干渉力がその心情に比例してガンガン増えて、干渉自体の難易度も爆増しちゃうんだよね。


 元々、この干渉方法は父さんと母さんを死に至らしめた挙句、兄さんまでをも手に掛けた憎き()()を絶対にブチ殺す為に編み出した攻撃用の干渉だから、こう言う場面にはどうしたって向いてない。


 例えるなら、剣で矢や弾丸を防ごうとするようなものかな?

 サブカル的にはありきたりなシチュだけど、実際にやるとなると不可能に近い達人技。


 そんなのフツーに考えて頑丈な盾を用意すればいいってハナシだよね……

 まあ、その盾が用意できなかったから忙しなく剣振り回すハメになってんだけど。


 ってなワケで、直接父さんや母さんへ干渉するんじゃなく、『傷が在る』って()()を狙うカンジで、標的設定になるべく父さんと母さんが被らないようにしてみたんだけど、それでも今ある魔力の三割は持ってかれちゃったね。


 この分だと、()()()()()()()()()()()()には、魔力を全力全開にして挑まないとかな……


 あ~、いや、それは今回みたく干渉力に魔力を選んだらのハナシか。

 折角工作したんだし、ココは出番でしょ。


 そんなワケで、抱き締めていた父さんと母さんの傷一つ無いけど冷たいままの身体を空袋の上にそっと横たえてから、立ち上がって父さんと母さんをキッチリ視界へ納められるように少し距離を取る。


 次いで、翳した左の掌に現れた(なかご)剥き出しの柄を握って一気に抜き放ちつつ、骨の刀身を覆うように干渉魔法を発動。

 艶の無い濁った白い刀身を万遍無く黒炎で包み込んで暴発を防ぎ、フーッといつの間にか溜め込んでいた余分な空気を吐き出す。


 ……今から僕がやろうとしている事は、他人から見れば間違いなのかもしれない。


 倫理とか道徳とかを持ち出して感覚的な文句を言う人も居るだろうし、『本当ならあり得ない事を無理矢理押し通そうとしてるんだから、その反動でとんでもない事態になるかも~』なんて、現実的な危険を説かれるかもしれない。


 まあ確かに、死者の復活なんて色んな宗教家がモノ申したくなるだろうし?

 その反動でトンデモ体験なんてコトになるかもって心配は僕にだってあるケド……


 うん、ぶっちゃけ『だから何?』ってハナシだよね~。


 だって、フツーに考えて何の関係も無いどっかの誰かがブー垂れる御高説なんて父さんと母さんの命の前じゃ水素原子以下の軽さだし、反動のトンデモ現象だって()()ブッ殺せる力があれば真正面から粉々にできるだろうしね☆


 なので、止めるべき理由もやるべき理由も並べる必要なんか無い。

 サッサと行動に移せばいいんだ。

 元々警察署内(ココ)じゃ長居できないんだし。


 そんなワケで――照準。


 狙うは、父さんと母さんに纏わりついてる死の()()()()()()

 出力には、御存知骨君のブッ飛び特殊機能から放たれる『質量×速度の二乗を更に累乗しちゃうゼ☆』な運動エネルギーを使用。


 勿論、ありったけの魔力を全力で全身に籠めまくってるから、身体能力も瞬間的に限界突破状態だ。

 下手すると、この一振りだけで本気で立ってられなくなるかもってくらいに、後先考えてないよ。


 さあ、短い柄にギリギリ両手を収めて――――いざッ、発動ッ!!!!!!


 瞬間――骨を振り抜いた僕の両手には、莫大な運動エネルギーを放出した反作用としては凡そ考えられない、まるで水中に居るかのような重く鈍い感触が返ってきた。


 そして、熾るハズの黒炎はドコにも現れなかった。


「――――っ、ぐ……ぁ」


 一瞬で全魔力を消費し尽すほどの極限な魔力強化に、全身の筋肉と骨が軋み上げてる。

 チョット立ってられねーわ。

 変身も解けちゃって、骨に巡ってイカレ強化を発揮しちゃうだけの魔力も残ってないし。


 なんて、手術着姿で情けなくゼエゼエハアハアしながら膝を着いて、改めて父さんと母さんを見遣るけど、いつまで経ってもやっぱりサッパリ一切まったくこれっぽっちも変化無し。


 …………なんで?

 なんで何も起きない?

 父さんと母さんが生き返るどころか、干渉成功の証(黒炎)すら現れないとか、幾ら何でもオカシイでしょ。


 概念なんて非物質を狙ったから?

 いや、それがダメなら、そもそも魔法に干渉できんのが矛盾だろってハナシになるし、そもそも狙いが外れてたら干渉力もすっぽ抜けちゃうから感触そのものが感じられないハズだし……


 考えられるとすれば――干渉力が全然足りて無かった所為で干渉自体ができてなかった、とか……?


 一応、今の一撃はそれこそあの()()だって一撃必殺で消し飛ばせる出力だったと思うんだけど……

 いやまあ、父さんと母さんの死をあんなゴミクズと比べられるワケ無いんだから、そういう意味では当然の結果(失敗)ではあるのか。

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