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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
70/186

70話

 ――って、ん~ん?

 なんだ? なんか、今一瞬閃いたような気が……

 んん~、なんだっけ?

 う~ん…………ん、んん、あ! ああ!!

 仮定、仮定か!!


 そうだ、そうだよ。

 そう言えば、()()魔界(アッチ)()()戦の土壇場一回しかやった事ないんだから、この辺で幾らか試し撃ちして()()に備えないと!


 いや~、このタイミングでソコに思い至れるとは、やっぱしCHOKKANセンセイはダテじゃないゼ☆


 なんて、アホテンションな自画自賛は置いといて……

 でも実際、これからやろうとしてるコトを成功させるんだったら、ある程度の精度は確保しときたい――まあ、感覚的には失敗の可能性なんて毛ほども感じないんだけどね。


 とは言え、どれだけ自信があっても実際に成功するとは限らないんだから、練習できる機会があるならジャンジャカやっていこうじゃないか!


 ――ってコトで照準。

 狙うは、『研究施設を覆い隠している何か』が存在してると言う()()

 使うのは当然、この身に有り余って溢れ返ってる魔力。

 ではでは、いざ――発動!



 ――――ボッ!! バシュッ!!!!!!



 そんなカンジの小気味の良いオノマトペと共に、さっき出てきた施設があると思しき地点で黒い大火事が発生――と同時に消失すると、現れたのはやっぱりあの八階建ての建築物だった。

 それと同時に、サァ――っと夕立が降り始めたみたく、ビルが現れた地点から気配レベルの音が上空に居る僕の元まで立ち昇ってきた――ような気がする? なんとなく。


 うんまあ、上手くいったね。

 今回の干渉魔法は、今まで使ってた『何らかの物体を標的として、運動エネルギーを直接触れずに干渉させる』って言う念力染みた《物理干渉》じゃなくて、『()()()()()()事象や概念へ直接干渉する』って言う《主観干渉》を使いやした。


 魔法みたいな非物質的な対象なら、デブ鬼の熱幻影を消したみたく存在強度を直接削る《存在干渉》でも良かったんだけど、存在干渉は対象への認識が曖昧なほど発動にも干渉にも余分に魔力を使わされちゃうからね。


 それに、この後主観干渉(コッチ)を使う予定があるんだし、その時に『()()戦で使えたのはマグレでした~』なんてなったら目も当てられないし。


 いや~、最初に使った時は随分と困らされたよ。

 なにせあの()()、物理干渉で叩き潰そうとしても空間魔法で逃げ回って当てられないし、かと言って存在干渉だと一瞬で発動して終了しちゃう瞬間移動を無効化できない上に()()本体を直接狙ってもバカみたいに硬い存在強度で跳ね返されちゃうしでね。


 その点、主観干渉は座標も相対距離も関係無く『存在する』って思えさえすれば照準できるし、魔法発動に必要な魔力自体は他の干渉方法よりも多いけど、代わりに干渉へ必要となる出力は僕にとって無価値(ゴミ)であればあるほど少量で効かせ易くなるから――って、おお!?


 人が自画自賛でウンウン首振ってたら、いきなりビルと道路の辺りが蜃気楼みたいに揺らいでからまた見えなくなっちゃった。

 コレって、結界を破壊されても、結界の発動、維持に使う機構は無事だったってコトかな?


 そうだとすると、もしアレに攻め入ろうとする人たちが居れば辟易しただろうね。

 なにせ、見えない上に聴覚も頼りにならない結界を苦労して見付けて破れたとしても、ほんの数秒で張り直せちゃうってんじゃあ徒労もいいトコだ。


 けど、ソレは僕にとって願っても無い展開だね。


 だってそうでしょ?

 主観干渉の練習がしたかった所に、アッチの方からワザワザ御誂え向きに『いよぅし、バッチコーイ』と結界を再展開して待ち受けてくれてるんだから!


 なので、再びの照準――発動。ボッ!! バシュッ!!!!!!


 うん、グッド。次、照準――発動。ボッ!! バシュッ!!!!!!


 良し良し。じゃ、次、照準――発動。ボッ!! バシュッ!!!!!!


 オーケーオーケ―。次、照準――発動。ボッ!! バシュッ!!!!!!


 まだまだ、次行くぞ行っちゃうぞ、照準――



 ――――――――――――――――…………………………………………ハッ、遊び過ぎた!


 途中から回数なんて数えてなかったけど、いつの間にか結構な回数繰り返したのか、残存魔力が目に見えて減ってる。

 いや、ステータス表記とか無いから見てないけど。体感だけど。


 やっぱ、主観干渉は他よりも魔力消費が激しいな……

 いや、干渉に魔力しか使ってなかったのもあるだろうし、アホみたいに繰り返し続けた所為もあるだろうけど。


 なんかこう、この手の単純作業ってやり出すときりがないと言うか、妙な没入感と依存症があると言うか……

 まあ、もう練習は十分かな?


 それに、僕がイジメ過ぎた所為か、なんか施設を覆ってた結界的なものが薄れて所々建物本体が覗けちゃってる。

 ごめ~んね?


 ま~あ?

 父さん母さん兄さんが亡くなる原因を見て見ぬフリしてきた挙句、()()なんかに御執心なアタマオカシイ連中なんてどうなっても良いし?

 その()()保管庫がいないいないば~しちゃったって、どうせすぐ隠蔽工作だの情報統制だので隠されちゃうのがオチでしょ?

 現に、この現代社会に於いて僕が知る限り()()共の存在なんてサブカル上のフィクション存在でしか無いワケだし?


 なら、これくらいのお遊びに付き合わせても文句無いでしょ?

 いや、在っても聞く気無いし、なんならコッチが文句言ってやりたいくらいだけど。

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