64話
「なッ――!? お、おお待ち下さいッ!! き――あ、貴方には此処で処置を受けて頂かなければ――ギュムゥッ!?」
「……僕はこれから、アンタらがコソコソせっせと集めまくってくれやがった魔物共を全部処理しなきゃいけないんでね。邪魔しないでくれるかな」
なんか拘束だけじゃ足りなかったみたいなので、追加の干渉魔法で猿轡代わりに口も塞いでやる。
まったく、喧しいヒキガエルさんだゼ。
うん、まあ、いい加減このデブの声を聞くのも嫌になってきてたトコだったからね。
最後くらい静かに行きましょう。
ん?
『さっき天井崩して騒音撒き散らしてたしな』
『そもそも、地下から何枚も天井突き破ってきた分の騒音被害もあるだろーし』
『大体お前どうやって出て行く気なんだ? どうせまた脳筋チックに壁とか天井とか破る気なんだろうけど』?
…………し、静かにと言ったら静かにだッ。
それに――
『――班長、セット完了しましたッ』
『よし。カウントスリーで点火、後に突入し特監を拘束する』
――なんて、通信機越しっぽい妙な聞こえ方のオッサン声が、何故か隣の部屋の壁越しに聞こえてきてるしね。
ついでに、なんかのアニメかドラマでやってたみたく妙に甘い臭いがしてるような気がするし、そもそも点火とか言ってたから、多分隣の部屋の壁をプラスチック爆弾か何かで爆破してコッチの部屋に侵入しようとでもしてるんじゃないかな。
まあ要するに、そろそろ潮時って事だ。
さっさとお暇しよ。
と言うワケで、魔法が大丈夫ならこっちも大丈夫だろ、なノリで変・身☆
例の黒い魔力が一瞬で全身を覆い、晴れた時には全身鱗塗れの尻尾ズルンの爪角シャキーンの羽バッサーで、も一つおまけに頭ズズズッキーンッと変身完了!!
「――――っ、」
――っと、イカンイカン。
頭痛くなり過ぎて立ち眩みがきた。
ちくせう、やっぱ止めとけば良かったか……?
なんか今までで一番ズキズキきて、本格的に治まりそうもないし……
いや、でも、ココから帰るなら飛べた方がずっと楽だし速いし、この頭痛だって魔物共の手で雑にハラワタ引き摺り出されたりすんのに比べりゃ全然我慢できるし、やっぱこのままで行こ。
さて、となれば、取り敢えずこの部屋から出ないとだね。
これ以上居座る気ねーし。
なんで、さっきこの部屋に入った時みたくその場ジャンプ、ピョン!!
と同時に身体の上下を入れ替えまして天井に着地、シュタ!!
そんでもって、地下直通路に向かってキックスタート、ドーン!!!!!!
地上数階から地下数階への道を中々の速度で下降しているから風切り音がビュオーと耳鳴りかましてきやがるけれども、それも体感数秒で終了してさっきのSFチックなカプセルルームに到着、着地シュタン!!
さてさてそれじゃあ、ドコから掃除を進めていこうか――
「――ま、まずは単純にカプセルの中からやってけばいっか」
なんて、独り言を音源に部屋の様子をエコロケりつつ、魔力も放出してソナー感知も開始。
「――――っ…………」
頭痛を堪えながら頭の片隅で魔物共消去用の干渉魔法を準備しつつ、この部屋だけでなくこの階層やその上下なんかの感知が届く範囲をざらっと精査していく。
するとまあ、出るわ出るわ。
魔物共の魔力と思しき反応が、プカプカ浮いてるだけのとかモゾモゾしてんのとか元気に跳ねまわってるのとか含め、ザッと百、二百じゃきかない位。
しかもそれ、この階層だけでの話だからね?
上にも下にもまだまだ同じ位は犇めいてるっぽいからね?
魔粒子の無い人間界で、よくもまあこんだけの魔物サンプルが収集できるもんだと、驚きと関心を通り越して呆れちゃうね。
いや、もしかしたら人間界にも居るトコに居るのか……?
う~ん、帰ったら金見市周りだけでも本格的に調べてみた方が良いかも……
でもま、今は取り敢えず片付けるべき事から取り掛かりましょうか。
ってなワケで照準。
狙うは呑気にプカプカしてるカプセルの中身とエコロとソナーに感在りな魔物共。
今回使うエネルギーは――まあ、またスマートに魔力で。
なんか魔物共感知したら、頭にビキビキきて魔力が溢れ返ってきちゃってたからね。しょーがないね。
そんじゃ、魔法発ドーン☆
すると、フロアの各所から、
『『『――――ギャアアアアアアアアアァァァァァアアアアアアアァアアアアアアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』』』
――なんて、素晴らしく耳に心地良い魔物共の断末魔が。
いや~、あんまりにも心地良過ぎて頭痛まで薄らいできてるような気さえしちゃうぜ。
「――ハハッ♪」
おやおや?
なんだか、すぐ近く|から楽し気な声が漏れ聞こえた気がするゾ?
それに、なんだか頭痛が少しだけ和らいでるような?
う~ん、やっぱコレ、持病の偏頭痛だったりしないかな~?
魔界産の謎病とか魔物特有のファンタジーなシンドロームだったりすると辛いのですがそれは。
ま、別にどうでも良っか♪ モロモロ☆
それよりも、さっきの探知結果的に今みたく衝動的にブッパするんじゃなくて、最下層まで降りて行ってから各階層を一階一階虱潰しに上がってくローラー作戦が一番効率的且つ確実そうだ。
なにせ、量が量だからね。雑に一ヶ所からの探知だけを頼りに地下全体の感在りを潰したトコで、絶対討ち洩らしを出しちゃうだろうし。
そうなったら、僕の知らないトコで魔物がのうのうと息をし続ける事になるかもしれないからね。それは何としても避けなくっちゃ!




