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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
60/186

60話

「――で? 父さんがどうしたって?」


 ああ、こうして催促すんの何度目だろ?

 メンドくせえな~。

 コレで答えなかったら、もういい加減代わり探そうかな……


 次はどんな人がいいかな~?

 何とかさんとか?

 顔見知りだし、イロイロ知ってそうだし、今やったソナーの探知範囲に居たから捕まえに行くのも簡単だし。


「――そ、そんな莫迦な、あり得ない…………お、鬼――消え……ハ、ハハハ、アッハハハハハハハハハハハハアッハはギブゥッ!?」


「オイ、いきなりなんだ? フザケてんのか? いい加減にしろよ?」


 いきなり笑いだしたデブがあまりにもキモかったので、壁際でへたり込んでるおかげで丁度良い高さに在った顔面を足で――いや、やっぱ触りたくないんで干渉魔法。


 標的はデブの横っ面、エネルギーには今左足が床に掛けてる圧力の大半――つまりは体重半分分くらいの運動エネルギーをセット。

 それで顔面のみ固定な壁貼り付けの刑にしてやった。


 これで少しは目が覚めると良いんだけど……

 まあ、これでダメなら今度こそ切り捨てで。


「さあ、答えろ。コレが最後のチャンスだ」


「―――ぶ、ヒ、イヒヒヒヒヒヒ!! 知りたいか!? そんなに知りたいのか!? 良いだろう、教えてやる!! 貴様の父親は死んだ!! 死んだのだよ!! あひゃひゃひゃひゃ!!!!!!」


 ……そっか。

 頭のおかしな笑い方二種についてはチョットツッコみたい気がしないでもないけど、まあ、概ね予想通りの答えだ。


 なにせ、全ての元凶である()()がこうしてココで息してんだから、まあ当然の結果だわな。


 元々、あのキューブタワーについて疑問に思ってはいたんだ。

()()()灰色のキューブには入れない。なら、他のキューブから入った状態で灰色キューブに対応する時間軸にまで留まったらどうなるのか?』ってさ。


 まあどうせ、キューブの外に弾き出されるか地続きのカラフルキューブ(未来)に飛ばされるかの二択だと思ってたし、現状を鑑みるに後者が正解だったワケだけれども。


「――ひゃひゃひゃひゃひゃ!! いや、しかもそれだけではないぞ!! キサマの母親も同じ場所同じ時間に発見されている!! 今頃は二人仲良く死体安置所だろうよ!! ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!!」


 …………うん、まあ、知ってたし?

 全然平気だし?

 衝動的に死にたくなんてなってないし?

 っつーか、ブッ壊れテンションウゼーんだけど?

 いや、ベラベラ喋ってくれるのは大歓迎だけれども。


 でも、そっか。

 母さんもって事は、やっぱりあの事故は無くならなかったってワケか。

 折角、山一つ均したってのになあ……


「そ、そして、御所望のに、『に・い・さ・ん』は行方不明だ!! それについては貴様の方が詳しかろう!! 大方、貴様と同じく地獄に堕ちたのだろうからな!!」


 ………………え~っと、うん、知ってる。

 兄さんもオレと一緒に魔界に飛ばされちまったからな。

 そりゃあ、デブの言う通り人間界(コッチ)で見つかるワケねえだろうさ。


 ってか、どうでもいいけど、コイツら魔界の事、地獄って呼んで――ん……?

 アレ……?


「……なあ、なんでオレらが飛ばされたの知ってんだ? テメエどころか、他の誰にも話した記憶がねえんだが?」


 そう、さっき見た回想云万字はあくまでオレが見た夢であって、誰かに語って聞かせた不幸自慢なんかじゃ絶対ない。


 となれば、コイツがオレの過去――いや、そう言う割にまだ一日も経ってないだろうけど――を知ってるのは辻褄が合わない。

 合わないのに知ってるなら何かしらの理由が有るハズだ。


 ……ただ、CHOKKAN先生の囁きによると中々に不穏な気配がするんだけど?

 なんだ、何かを見落としてる……?

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