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他称『魔王』の穏やかな日常  作者: 黒宮辰巳
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51話

 エフン……話を戻すけど、便宜上――も何も話し相手が居なかったんだから便宜なんて必要無かったけれど、取り敢えず適当に『骨』とか『骨っこ』って呼んでるこの武器は、魔界(アッチ)で千切られてから棍棒代わりにしてた僕の手足の骨数本分に、その辺で拾った叩き割ると鏡みたいな断面を見せる銀色のバカ硬い鉱石を混ぜ合わせて作ったシロモノだ。


 作り方は、そのシルバ(かた)鉱石に干渉魔法で思いっ切り圧を掛けて圧縮熱でドロドロ熱々の液体にしてから、今度は魔力を流し込んで限界まで頑丈に強化した骨棍棒達にそれを染み込ませて、そんでまた干渉魔法で纏めて均等に圧を掛けてなるべく頑丈になるよう密度高めサイズ小さめな一本の刀型に圧縮合成&整形――ってカンジでせう。

 ついでに、さっき言った剣の方はコレの骨無し版ってカンジね。


 要は、まだ魔力とか魔法を使いこなせてなかった頃に、魔法の練習がてら理科で学んだにわか雑学知識で工作したって言う、この手の不思議武器にあるまじきな~んのいわくも無いワクワク工作品ってワケですわ。


 でも、その性能は秀逸過ぎるくらいに優秀(自画自賛)だ。


 まず、凄まじく頑丈。

 ビルみたいなサイズの()()が振り下ろす大型トラックみたいな拳骨を受けたって一ミリも歪まないし、例え圧し折られたとしても魔力を流すだけで簡単に再生できる。

 いやね、物質生成魔法も使わずに含有してる金属まで一緒に再生できるとか、理論も理屈もワケ分からんけど。


 でもまあ、壊れにくいってのはホントに重要だよ。

 何せ、武器が壊れる状況なんて命がけの戦闘中しかないワケだし。


 さっき言った試し打ちの剣は、それこそ現実の刃物系武器類みたいに二、三匹斬っただけで鈍器になった挙句、四、五匹目でもう折れ柄だけになるってのもザラだったしね。

 アレなら、幾らでも替えが利く骨棍棒(僕製)で戦ってた方が遥かに安心だ……いや、相手がバカデカい蟹型の()()だったとか、僕がヘタクソだったのもあるだろうけど。


 ……ただ、今思い返してみると、所々肉とか皮膚とかが残ってた骨を振り回すって絵面は中々にショッキングだったとも思う。


 それから、武器の性能として忘れちゃいけない破壊力。

 混ぜた鉱石が影響したのか、この骨には魔力を通すと刃先に発生()()()運動エネルギーを増幅させる特性が備わってる。


 しかも、その特性ってヤツは骨本体に生じる反作用には適用されないらしい。


 自分でも『いやはや、なんとも御都合主義的よの~』なんて思うけど、でももしそうじゃなかったら、軽く振っただけで刀身とか手とかが爆散しちゃいそうだからね。仕方ないネ。


 え? 『結局刃先にしか効果が乗らないってんなら、キチンと刃筋立てて剣振れないテメーには扱い切れなくね?』って?


 ああ……うん、その辺はアレですよ、た~くさん練習したから……

 ほら、魔界(アッチ)って練習台になってくれる()()が沢山居るからさ。

 バッティングセンターとかゴルフの打ちっ放しみたいなもんだネ☆


 そして、更に御都合主義的な事に、この骨っこで作った運動エネルギーは干渉魔法に使える『自分で直接作ったエネルギー』ってヤツに含まれるから、中々に重宝してるんだよ。


 ……ただ、その特性による力の増幅量ってのが数倍とかじゃなくて数()倍なのが唯一のネックか。

 前に魔法無し魔力強化全開で振った時は、()()が空間魔法で避けた所為もあるけど、戦闘中に溶岩が噴き出してくるほど深いキロメートル単位のラグビーボール型の峡谷なんて作っちゃったりしたっけ……確か、キノコ雲もできてたような……


 いやね、そんな物騒な物でも魔界(アッチ)で振り回すんなら『山だろうが海だろうが連中の()だろうが、どうぞご勝手にカッ消し下さいましぇ~』で済むけれども、人間界(ココ)でやったら天変地異の不法投棄でしょ?


 一応、魔力関係が人間界での弱体化の影響を受けてるから、そこまで酷くはならないかもしれないし、もしかしたら人間界(コッチ)では骨の増幅効果自体にも下降補正掛かってるかもだけど……


 まあ、何もかも上手くいけばもうすぐ消える身だってのに、そんなバカげた置き土産なんてする気皆無なんで、骨っこは出現と同時に干渉魔法でコーティング。

 継続発動を設定した魔法の標的は、骨の刃先に発生する莫大で余分な運動エネルギーの()()で、干渉用のエネルギーには残るもう半分を当てて相殺させるカンジに。


 思い付きの即興だけどこれで恐らくきっと大丈夫だろう、なんて期待しながら軽く一振り。



 ――ブォンッ!!!!!!



 なんか……ものっそい物騒な風切り音がしたけど、下の山とか道路とかは無事だ。

 辺り一面の森ごと土砂が巻き上げられて、土煙の下から巨大クレーターが登場! ――なんて事にはなってないよ?

 ……数秒遅れで、下の森から木何本分かなんて数えたくない量の悲鳴染みた軋みが聞こえてきてるけど。


 あー、まあ、概ね成功だね。

 干渉魔法で鞘作るなんて始めてやったけど、エネルギーの相殺自体は気が遠くなるほどの回数こなしてきてたおかげか、この調子なら大丈夫そうだ。


 ……『そんなに怖いなら、使う時以外は魔力通さなきゃいいじゃん』『骨の特性とやらは魔力が無きゃ発動しねえんだろ?』?


 あ~、それはその、その通りなんですけれども……

 変身状態だと全身万遍なくオートで魔力が循環しちゃう仕様になってましてですね、だから骨っこも常時ハツラツなワケでありまして……

 そりゃ、僕だってこんな面倒せずに済むならそうしてた――って、これ以上は不毛か。


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